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13話 波乱のお茶会③

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「お父様……お母様……!やだ!アシュレイ殿下、助けて下さい!」

 おっと、そこで馬鹿な王子様に助けを求めちゃいますか?――何も出来ない、愚かな王子様に。

「リンカ!お前は調子に乗り過ぎた!この国の王太子である俺様と、その妻になる未来の王太子妃に向かって、無礼過ぎる物言いだ!よって、お前の宰相としての任を、今ここで解く!残念だったな!女が偉そうに調子に乗ってるからだ!」

 ……ぶっ潰すぞマジで?

「アシュレイ殿下にそんな権限があるとでも?寝言は寝て言え」

「あるに決まってるだろーが!俺様は王太子だぞ!?国王陛下の次に偉いんだ!」

 その陛下も、私には頭が上がらないという現実をそろそろ受け入れて欲しいんですけどね。

「では、次の会議にはアシュレイ殿下も是非お越しください。貴方と私……どちらの発言権が強いか、そこでハッキリさせましょう」

「五月蝿い!そんなもの待つ必要など無い!お前が俺様の言う事に従えば、それで済むんだ!」

「やれやれ……馬鹿の相手は大変ですね」

「お前っ!」

「あら、声に出てしまっていましたか?それは失礼。つい本音が口から零れて落ちてしまいました」

 本当にいい加減にして欲しいのよね……第一王妃を気遣って重い罰を与えられずにいるけど、本当なら去勢手術後、これ以上余計な騒動を起さないよう、地下牢に幽閉しておきたいくらいなのに。
 クイナ嬢と一緒ならOKとか無いかしら?

「おい!さっさとこの女を地下牢に連れて行け!もう王城から叩き出すだけじゃ気がすまん!お前を一生、地下牢に閉じ込めてやる!」

 うーわー。考えたことが馬鹿と一緒とか、何だかショックー。

「私を地下牢?面白いことを言いますね。いいですよ?いきます?――私を閉じ込めてみます?」

「ああ!?そんな余裕ぶってられるのも今のうちだ!おい、早くこの女を連れて行け!」

 馬鹿みたいにその場にいた従者達に指示を出すが、誰も、彼の命令に従う者はいない。
 この国を支えていると言っても過言では無いガルドルシア公爵令嬢を、地下牢に閉じ込める――それがどれだけ恐ろしいことになるのかを、アシュレイ殿下とクイナ嬢以外は理解している。
 ガルドルシア公爵家の支援無く、優秀な頭脳である宰相がいなくなったグレゴリー国がどうなるか……娘をぞんざいに扱った王家を、お父様とお母様がお許しになるとも思えない。きっとガルドルシア公爵家は王家に反旗を翻すでしょう。想像しただけで楽しみですね。

「何をしている!?役に立たない奴等だな!俺様が国王になったら、お前達全員クビにしてやるからな!」

 誰も微動さにしないのに苛立った馬鹿王子……アシュレイ殿下は、遂に、自ら私に手を伸ばした。


 ……こんな失態を犯しておいてなお、私を地下牢に閉じ込めたらどうなるか――――その身に教えてあげる。



「――リンカ!」

「……」

 ああ……ルイ殿下か。

「兄様!一体何を考えているんですか!?こんなお茶会の場で……兄様は王家の信頼を地に落としたいんですか!?」

「そ、そんなワケないだろう!俺はただ、王族に生意気な口を利く女に罰を与えてやろうと思って……!」

「リンカに罰……!?ふざけるのも大概にして下さい!兄様は王家の恥です!」

 …………ルイ殿下が来て下さったおかげで、少し、頭が冷えました。
 命拾いしましたね、アシュレイ殿下――もし、ルイ殿下が止めなかったら――色々な罪を捏造して、貴方に罪を被せて……稀代の罪人として、国民の前で見せしめのように惨殺しようかな。なんて、そこまで考えてしまいましたよ。危ない危ない……すぐに過激なことを考えてしまうのは私の悪い癖です。

「皆様、お騒がせして申し訳ありませんでした。今日のお茶会はこれにてお開きにさせて頂きます。母のお茶会に参加して頂き、ありがとうございました」

 場を収拾させようと、ルイ殿下がいち早くお茶会の閉会を伝え、招待客を帰した。
 アシュレイ殿下の命令には誰も従わなかったのに、ルイ殿下の命令には、臣下達はいち早く反応し、素早く動いた。それだけで、二人の違いが分かりそうなものですけどね。

「リンカ、大丈夫!?」

「大丈夫です。アシュレイ殿下が命拾いしました」

「……また、過激なことを考えてたんだね」

 アシュレイ殿下は私の脳内で一度死にしました。地下牢にもし閉じ込められていたら、具体的にどんな罪を被せようかと思案していたと思います。

「……兄様」

「な、何だ!」

「兄様はとんでもないことをした自覚がおありですか?まさか、不貞を暴露しただけじゃなく、リンカを地下牢に連れて行こうとするなんて……最近の兄様の行動で、陛下がどれだけお心を痛めているか分からないんですか!?」

 心労で倒れそうだと常々言っておられますもんね。最近はお薬を併用されることも多くなっていて、私も心配しています。馬鹿な愚息を持つと大変ですね。

「五月蝿い!お前こそ、たかが第二王子の分際で俺様に指図するな!母親の身分も低いくせに!」

 ……サラ王妃に対する侮辱罪で火あぶりにでも出来ないかしら?サラ王妃が招待客のお見送りでこの場を離れていて良かった。心優しいサラ王妃にこんな馬鹿の発言を聞かせてられないものね。
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