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12話 波乱のお茶会②

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「な、何で私が慰謝料を払わなきゃいけないのよ!?しかも、今更!?今まで何もしてこなかったじゃない!」

 あらあら、焦ってますねー。
 私が貴女に対して今まで何もしなかったのは、不貞の事実を私自身が隠蔽していたからに過ぎません。でも、もう隠す必要が無くなったんだから、遠慮無く仕返ししてもいいって事でしょ?

「おかしな事を言うんですね。不貞を働いたら、相手に慰謝料を払う!当然のことですよ?もしかしてご存知無かったんですか?常識を一から勉強し直しましょうね」

「なっ!?」

「貴様!クイナに向かって何を――!」

「アシュレイ殿下もですよ?慰謝料、請求します。きっちり支払って下さいね。アシュレイ殿下の私費でお願いします」

 絶対に王家のお金からは出しませんよ。自分のケツは自分で拭け。

「何で俺様の金から出さなきゃなんねーんだよ!俺は王太子だぞ!?国の金は将来、全て俺様の物になるんだから、今使ったって何の問題もねーだろーが!」

 ほんっっっっっとうに馬鹿な人ですね!こんな貴族のご婦人・ご令嬢がいる前で、そんな非常識なこと言います?国民が納めた税を、私利私欲に使いまーす!なんて宣言する馬鹿がいます!?やるにしても普通は黙ってするんですよ?
 あ、やばい……本当に頭痛がしてきた……これはもう急いで王太子の剥奪を皆様に発表する場を設ける必要がありますね。即、陛下と相談しよう。

「大体、お前に慰謝料払う義務なんてねーんだよ!俺様とクイナは純粋に愛し合っているんだ!お前の方が邪魔者!こっちが慰謝料請求する立場なんだよ!」

「そ、そうですわ!私達は何も悪いことはしていません!ただ、運命の出会いが遅かっただけなんです!リンカ様よりも前にアシュレイ殿下と出会っていたら……こんな事にはならなかったのに……誰も、傷付かなかったのに!愛し合った二人に罪はありません!」

 黙れマジで。本気で二人共消え失せろ。周りの反応見て少しは自分達が冷めた目で見られているのを感じ取れよ!

「……そんな安っぽい恋模様を見せられても、こっちは白けるだけなんで止めて下さい」

「何だと!?」

「慰謝料は必ず請求します。ああ、でもアシュレイ殿下は兎も角、クイナ嬢はお支払い出来ますか?失礼ですが、ロスナイ子爵家はそこまで裕福ではないようですし」

「――っ!」

 家柄のことを言われるのは悔しいですか?私も普段はこんな事――必要に応じて言いますね。でも、家柄関係無く、尊敬に値する相手には言いませんよ。クイナ嬢には、尊敬のその字も無いということです。

「まさか子爵令嬢ともあろうものが、王太子妃の夫を寝取るなんて真似をするとは思っていませんでした。貴女の父……ロスナイ子爵は、娘をこのように育てた責任をどうとるおつもりなのでしょうね?」

「お、お父様は関係無いでしょう!?」

「やだ、何言ってるんですか?関係あるに決まっているじゃありませんか。今は離婚しているとは言え、貴女は、この国の王太子妃の夫、そしてガルドルシア公爵令嬢の夫を寝取ったのですよ?――ただで済むと、本当にお思いですか?」

 貴女達の不貞関係を公にするつもりは無かったから、慰謝料請求や、貴女の両親……ロスナイ子爵家を巻き込むことは止めてあげようとしていたのに、貴女達は今ここで、不貞関係にあることを自ら暴露した。
 それなら私は、たかが子爵家くらい問答無用で潰せるんですよ。

「ロスナイ子爵には、王太子と不貞を働くような不出来な娘を育てた罰に、世襲の爵位継承権を剥奪させようと思っているんです」

「爵位の剥奪だなんて……!そこまでする!?そんな大袈裟にする必要無いじゃない!」

 貴女、アシュレイ殿下との子供を宿していますよね?貴族ならグレゴリー国の歴史、愚王が他所で作った子供が原因のいざこざを知っているでしょうに、貴女は同じ事をしているんですよ?知ってます?時代も時代なら、斬首刑なんですよ。平和な時代に産まれて良かったですねー。
 子供の件は黙っているから、まだ、許してあげているつもりなんですよ?もし喋れば――今度こそ、例え陛下やルイ殿下が反対しても、厳格に処罰します。
 私だって本当は、ここまでするつもりは無かった。
 子供が産まれた後、貴女だけを国外追放してお終いにするつもりでした。本当ですよ?少しは国外追放後も優遇出来るよう手配するつもりだったのに……無駄な仕事が一つ減りましたね、あー良かった。
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