22 / 60
21話 判定
しおりを挟む「ユウナお姉様、ユウナお姉様も聖女だったなんて、私、知りませんでした。これからは、私達二人、姉妹で力を合わせましょう!」
どの口がそんなふざけたことを言うんだか……
「私が最初に力を打ち明けた時にそう言ってくれていたら、まだ納得出来たのに」
自分だけでなく、姉も聖女だと、そう皆に打ち明けてくれたら、私は姉妹で聖女を名乗っても良かった。だけどエミルは、私が皆に酷い扱いをされていたのをその目で見ていたのに、助けるどころか、私が孤独になるように加担した。
そんな非情な妹といまさら、仲良く協力し合えると思う?
「ユ、ユウナお姉様、私は、本当にユウナお姉様が大好きなんですよ?」
「……」
そうでしょうね。それは、分かっている。
エミルが私を好きだという感情を疑ったことは無い。エミルは私が好き。多分、ここにいる誰よりも、私から奪ったルキ様よりも、エミルは私が好き。
「だから、もう一度、家族のために、私のために生きて下さい、ユウナお姉様。大好きです、ユウナお姉様」
何度も何度も聞かされた好きって言葉は、私にとってはまるで、呪いの言葉みたい。
好きって言えば、何でも許されると思ってるの? 好きって言えば、また家族に戻れると思ってるの? 好きって言えば、私がまた、エミルの影として生きると思ってるの? 馬鹿にしないでよね。
「嫌に決まってるでしょ。なんで私が、エミルのために生きないといけないの?」
「……え?」
「そもそも、貴女達とは家族の縁を切りました。家族に戻る気も毛頭ありません。私は、私のために生きます」
「どう……して、ユウナお姉様。今まではずっと……私のために……」
「ずっと我慢してたの。でも、我慢の限界が来たの」
愛情は枯渇した。もう微塵も残ってない。
「コトコリスの聖女が偽物だと証明するために、エミルが祈った場所だけ、力を与えないでおきました」
「っ!」
「エミルにほんのひとかけらでも聖女の力があるなら、貴女が祈った場所を緑あふれる大地に生まれ変わらせることが出来るよね?」
わざわざ大々的にパフォーマンスしたんだから。
「そ、それ……は……わ、私の力は、ゆっくりと元気を与えるものだから……」
「では、あの場所が蘇るまではエミルは偽物のままですね」
永遠に蘇ることのない大地。
可哀想だから、エミルが完全に偽物の聖女だとファイナブル帝国で周知された後、力を与えることにします。
「もう一度言います、エミルは聖女じゃありません、偽物です」
「! そんな……酷いよ、ユウナお姉様……!」
これで、コトコリスの聖女が偽物であると証明出来た。
今後、お父様が聖女の力を笠に着て、傲慢な態度を取ったり、膨大な報酬を得ることは出来にくくなるでしょう。
本当は私がエミルに与えた力も何とかしたかったんだけど……
他者に力を与える魔法を持つ私がエミルに与えたのは、回復魔法の強化。これにより、エミルは奇跡とも呼ばれる回復魔法を使えるようになった。
与えた力を奪い返したり出来ないかなっと思ったけど、それは無理みたい。
「エミル夫人、この大地が回復するまでの間、貴女が聖女を名乗ることを禁じます。これは皇室からの正式な通達だと思って下さい」
皇室からの通達となれば、もし破れば、相応の罰を与えられることになる。レイン様はエミル、そして後ろにいるお父様、お母様に対しても、忠告のように告げた。
「う、嘘だ、そんな! エミルが偽物の聖女で、本物の聖女がユウナだと!? そんなもの、信じられるか!」
「そうよ! あんな出来損ないで可愛げのない娘の方が聖女なワケないわ! きっとユウナは何かイカサマをしたのよ!」
酷い親。
ここまで証明してもまだ私が聖女だと認めないなんて、なんて諦めの悪い。
私を家族の一員と認めず、自分達の娘は聖女であるエミルだけだと思っていたんでしょうから、諦めが悪くなるのも当然か。
「コトコリス男爵、男爵夫人、学習能力が無いんですか?」
「ひっ!」
「ユウナを傷付けるような発言をするのは許さない。また、牢にぶち込まれるか?」
(レイン様……)
本気で、私のために怒ってくれるんですね……
こんな元家族に何を言われても平気なつもりだけど、こうやって私を守ってくれるのは、やっぱり、嬉しい。
「も、申し訳ございません! 牢だけは! 牢だけはお許し下さい!」
「お許し下さい!」
こうして皇室の立会人もいる公の場で、たとえお父様やお母様が私を信じなくても、私が本物の聖女で、エミルが偽物の聖女だと証明された今、もうコトコリスの聖女の力を笠に、レイン様及び皇室を脅すことが出来ない二人は、頭を擦り付けて謝罪するしかない。
出来損ないと家から追い出した娘の方が本物の聖女だったなんて、残念でしたね。
エミルなんて大嫌い、お父様もお母様も、勿論大嫌いよ。
「コトコリス男爵、私は以前にもお話したはずですよ。次に会うことがあれば、立場を弁えて、敬語で話せと」
「!」
苦虫を嚙み潰したような顔で私を見ても駄目。
「二度目の忠告も無視しましたね。さて、どうしましょう。未だに私に謝罪する様子もないようですし、もう牢に入って頂いた方が良いでしょうか」
陛下やレイン様には頭を下げても、お父様は決して私には謝らなかった。
3,279
お気に入りに追加
5,048
あなたにおすすめの小説
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
どうか、お幸せになって下さいね。伯爵令嬢はみんなが裏で動いているのに最後まで気づかない。
しげむろ ゆうき
恋愛
キリオス伯爵家の娘であるハンナは一年前に母を病死で亡くした。そんな悲しみにくれるなか、ある日、父のエドモンドが愛人ドナと隠し子フィナを勝手に連れて来てしまったのだ。
二人はすぐに屋敷を我が物顔で歩き出す。そんな二人にハンナは日々困らされていたが、味方である使用人達のおかげで上手くやっていけていた。
しかし、ある日ハンナは学園の帰りに事故に遭い……。
婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。
全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。
しかも、王妃も父親も助けてはくれない。
だから、私は……。
本当の聖女は私です〜偽物聖女の結婚式のどさくさに紛れて逃げようと思います〜
桜町琴音
恋愛
「見て、マーガレット様とアーサー王太子様よ」
歓声が上がる。
今日はこの国の聖女と王太子の結婚式だ。
私はどさくさに紛れてこの国から去る。
本当の聖女が私だということは誰も知らない。
元々、父と妹が始めたことだった。
私の祖母が聖女だった。その能力を一番受け継いだ私が時期聖女候補だった。
家のもの以外は知らなかった。
しかし、父が「身長もデカく、気の強そうな顔のお前より小さく、可憐なマーガレットの方が聖女に向いている。お前はマーガレットの後ろに隠れ、聖力を使う時その能力を使え。分かったな。」
「そういうことなの。よろしくね。私の為にしっかり働いてね。お姉様。」
私は教会の柱の影に隠れ、マーガレットがタンタンと床を踏んだら、私は聖力を使うという生活をしていた。
そして、マーガレットは戦で傷を負った皇太子の傷を癒やした。
マーガレットに惚れ込んだ王太子は求婚をし結ばれた。
現在、結婚パレードの最中だ。
この後、二人はお城で式を挙げる。
逃げるなら今だ。
※間違えて皇太子って書いていましたが王太子です。
すみません
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
【完結】私の婚約者は妹のおさがりです
葉桜鹿乃
恋愛
「もう要らないわ、お姉様にあげる」
サリバン辺境伯領の領主代行として領地に籠もりがちな私リリーに対し、王都の社交界で華々しく活動……悪く言えば男をとっかえひっかえ……していた妹ローズが、そう言って寄越したのは、それまで送ってきていたドレスでも宝飾品でもなく、私の初恋の方でした。
ローズのせいで広まっていたサリバン辺境伯家の悪評を止めるために、彼は敢えてローズに近付き一切身体を許さず私を待っていてくれていた。
そして彼の初恋も私で、私はクールな彼にいつのまにか溺愛されて……?
妹のおさがりばかりを貰っていた私は、初めて本でも家庭教師でも実権でもないものを、両親にねだる。
「お父様、お母様、私この方と婚約したいです」
リリーの大事なものを守る為に奮闘する侯爵家次男レイノルズと、領地を大事に思うリリー。そしてリリーと自分を比べ、態と奔放に振る舞い続けた妹ローズがハッピーエンドを目指す物語。
小説家になろう様でも別名義にて連載しています。
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる