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 広場に最後、残ったリーシャとイマルは、手を振りながら、サクヤとゲンを見送った。

「では、私もこれで失礼しますね」
 サクヤ達の姿が見えなくなった後、リーシャは隣にいたイマルにも、挨拶し、家に戻ろうとする。
「送るで」
「え?」
 イマルの言葉に、足が止まり、驚いて彼の顔を見た。
「?そんなに驚く事か?もー何回も家まで送ってるやん」

 確かに。これまで何度も、家まで送って貰った事はある。あるけれどーーー

「最近は……その、避けられていると、思っていたので」
 お誘いは断られるし、集まりにも声をかけて貰えなくて、道端で会っても、何だかんだ、直ぐに立ち去ってしまう。

「それは……ほんま、ごめん」
「!いえ!きっと、私が、態度に出過ぎていた事が問題なんですよね?」
「態度?」
「イマルが好きって、態度に出てしまい過ぎるのが良く無いのですよね?執拗い女は嫌われますもんね!」

 もう、付き合えないのは仕方無いにしても、嫌われたくは有りません!仲良くしてくれれば、それで満足です!

 反省しているが、最早既に、先程の発言で、イマルが好き!と断言しているようなもの。だが、リーシャは全く気付いていない。

「……相変わらずグイグイ来んな」
「へ?ま、また駄目ですか?」
「もーええよ。俺はリーシャはんを嫌いになったりせーへんから、そこまで気にせんといてーーって、酷い事言ったんは俺か。ごめんな」
 イマルはそのまま、リーシャの家の方に向かって歩き出した。

 (送ってくれるんですね…!嬉しい!)
 避けられていたから、顔も中々見れなくて、話も出来なかったから、傍にいれるだけで嬉しい。

「あの、何度も謝っていますが、イマルには初めからお世話になりっぱなしだったのに、聖女である事を隠していて、本当にごめんなさい…」
 最後まで隠し通す気だったのに、次から次へと、私が聖女だと知る人達が来て、最終的に王子が大々的に皆さんにバラすという暴挙に出た。

「えーよ。てか、スッキリしたわ。リーシャはんがただ者じゃ無いのは気付いてたし」
「嘘ですよね?どこら辺で?」
「いや、ノルゼスはん来た時点で、もう色々不思議やったで。あんな強い戦士が、リーシャはんを過保護過ぎるくらい守って、昔の仲間やーゆーのに、話した事無くて、リーシャはんの涙に死にそーなくらい落ち込んで」

 全く上手く隠し切れて無かったんですね…。薄々気付いていましたけど、私はもしかして、あまり嘘が得意では無いのでしょうか?皆さんにバレバレなのでは?
 聖女時代の感情・表情管理はどうしたと、自分に問いただしたい。

「家事とか何も出来へんかったんも、あー、聖女やったからかーって納得やわ。聖女が何も出来へんなんてイメージ無かったけど」
「……イマルも、私が元・聖女でも、お友達でいてくれますか?」

 大分迷惑をかけてしまっていますけど、これからも、未だに家事スキルとかまだまだなので迷惑かけますし、執拗い女は嫌われると言われながらも、しつこくイマルの事好きでしたし……今も好きで、これからももっと好きになると思いますし……あ、でも、これからは嫌いになったりしない。ってさっき言ってくれましたけど。あれ?なら、好きでいるのは大丈夫って事でしょうか?

「……」
「だ、駄目ですか?」

 返事が返って来ないのが不安になる。

「……ああ、もう!いーに決まってるやろ!嫌いにならへん!サクヤはんも言っとったけど、リーシャはんはリーシャはんやろ!」
「!良かった…!ありがとうございます!」


 世界を救った今、この平和な世界に、聖女は必要有りません。


 だから私はーーー聖女をやめて、普通の村娘として、ここで、最後まで暮らして行くーーー
 私は私らしく。


「イマル、これからもよろしくお願いしますね」
「ーーええよ」


 私は、ただの村娘になったのですからーーー。






 完


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