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しおりを挟む本当にこの人は何を言っているんでしょう?
私が、貴方を好き?1度だってそんな事を言った覚えは無いし、この村に来た今となっては、ろくに会話をして来なかった人に分類されます。
城にいた時は、話す人達を制限されていたから、貴方としか話せなかっただけです。
「聖女…!きっと、こんなみすぼらしい村にいた性で、少しおかしくなってしまったんだね」
「……」
ノルゼスと言い貴方と言い、どうして私を怒らせる事を言うのですか?どうして、私を傷付けるんですか?
「さぁ!私と一緒に城に帰ろう!」
拒まれるなんて微塵も思っていないように差し出させる手。
「お断りします」
「なっ!」
断られるのは当然なのだが、王子はプライドが傷付いたのか、顔を真っ赤にさせ、声を荒らげた。
「この私の誘いを断るなど!いいのか?!私はこの国の王子!王位第一継承者たぞ!?私を怒らせれば、この村などーー!!」
「お前……本当に阿呆で馬鹿で救いようのねぇ屑なんだな」
レナルドは、リーシャの近くまで来ると、傍に控えた。
「何だと?!」
「あの屑な王ですら、リーシャを無理矢理連れ戻す。なんて選択をしなかった。それは、国の面子とか、俺のように聖女を慕う奴等の反感を恐れてもあるが、1番の理由が分からねーほど、お前の頭はヤバいのか?」
聖女を慕う者達の反感だけでも、充分恐ろしいのだが、先程致命傷にもなり得る程の魔法を放たれても、王子にはその危険性も分からないらしい。
「何を言っている?!この国で2番目の権力者である私に恐れるものなどー!!」
「リーシャが今も王都に守護の魔法をかけてるのを知らねぇ訳ねーよな?誰のお陰で、ぬくぬくと城で過ごせてると思ってんだ」
「ーーーは?」
そう。私は、王都全体に守護の魔法をかけている。
私の聖女としての力は、絶対的守護の力。
この力で、私は魔王討伐に選ばれた者達と共に、魔王を倒した。
道中、メイドや料理人、執事が一緒についてきたのも、私の力のお陰。私の力に守られていれば、安全安心。
「魔王だって、向こうの攻撃一切効かねぇからフルボッコ状態だったしよ」
私は攻撃は一切出来ませんからね。誰かに倒して貰う必要があります。その為に選ばれた攻撃専門の仲間です。
ただ、自分にもずっと守護の魔法を使うのは、自分の体の治癒機能の低下を恐れて、城にいる時等は使っていなかったのですが、1度、それでかすり傷を負った時に、僧侶を傍につけられるようになりました。
私がいなくなれば、安全が脅かされる。
だからこそ、過保護に、花よ蝶よと大切に育てられました。
「魔王がいなくなって平和になったっつっても、魔物はいる。そんな魔物が絶対に入り込まない安全な場所ーーそれが王都で、その場所を提供してるからこそ、お前等は王都の民から支持を受けてるんじゃねーか!」
だからこそ、無理矢理リーシャを連れ戻せない。
怒りを買い、守護の魔法を解かれれば、国民の信頼は一気に地に落ちる。
「いや、それは、せ、聖女が私と結婚すれば!それで万々歳でーー」
「話聞いてねぇのかてめぇは!!」
事もあろうに、その聖女に対して、脅しをかけたのだ。救いようの無い馬鹿だと言われても仕方無い。
王子のポンコツ具合は、王も勿論承知していて、息子を聖女の元に行かせればロクな事にならないと、息子に聖女の元に行くなと命じ、周りの者にも、聖女の居場所を伝えるなと箝口令を敷いていた。
結局は全て無駄になる程、王子がポンコツだった。
だからこそ、自分の息子に王位を継がせたい王は、聖女との婚姻で、息子の地位の安泰を望んだ。
「私は帰りません。お引き取りを」
「そんなっ!聖女!私と君は愛し合っているのに、何故だ?!」
一切話が通じない。私、さっき、貴方と恋人同士になった覚えは無いって言いましたよね?帰りませんって言いましたよね?
「私以外に、君に相応しい人等いない!私こそが、君に相応しい!それとも、私以上に素敵な相手が、こんなみすぼらしい村にいたか?!」
「い、いっぱいいますけど…」
貴方と比べれば、イマルは勿論、サクヤも、ゲンさんもジェラードも村長も皆素敵な人です。
「何だと?!それは、恋する男が複数出来たとゆうことか?!」
「何を言ってるんですか?違います!私はちゃんと、1人ーー」
そこまで言いかけて、ピタッと、言葉が止まった。
(私は、ちゃんと1人だけーーイマルが好きです)
でも、今ここにはイマルがいる。執拗い女は嫌われる!イマルが好きとは言えない!それでなくとも、最近避けられている上に、元聖女だとバレてしまった。
「っ、貴方の、性でーー!」
「聖女?!」
「ーリーシャ!」
リーシャの目からは、耐え切れずに涙がポロポロと溢れて、流れた。
聖女として、強くあるべきと生きてきたリーシャの涙を見るのは、王子も、レナルドも初めてだった。
この村が好きになった。
「み、皆さんが……名前で呼んでくれなくなったら……」
聖女では無く、名前で呼んで貰える事が、嬉しかった。
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