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「嘘をつくな!やっとの事で聖女の居場所を城の者から聞き出したのだ!ここにいない筈が無い!」
 王子が暴走するのを恐れてか、王様は王子に、聖女のいる場所を伝えるなと箝口令は敷かれていたらしい。
「そんな事言わてもですね…」
「これ以上隠し立てする気なら、容赦しない!」

 一国の王子が辺境の村ヘーゼルに来る事自体が驚きの事なのだが、それよりも何よりも、王子の勢いが凄すぎて、歓迎の言葉を言う暇も無いまま、詰め寄られる。

「王子様!とりあえず落ち着いて下さい!」
 周りにいた騎士達が、慌てて王子を止めた。
「離せ!私に気安く触れるな!」
 バッと、掴まれていた手を、王子は振り払った。

「聖女がここにいるのは間違いないんだ!嗚呼、可哀想な私の聖女…!きっと、この村に閉じ込められてるんだね!私が今すぐ助けてあげるよ!」
「聖女様は幸せそうに暮らしておいででしたと、ノルゼス隊長も言っていましたが…」
 悲しくも騎士の言葉は王子には届いていないようで、王子は再び、村長に詰め寄った。
「さぁ、早く聖女を出すんだ。今ならば、寛大な私は何の罰も与えないだろう」
「そう言われましても……」
「貴様…!この私がここまで譲歩してやっているのに、まだ隠し立てするのか!」
 王子は、腰に付けてあった剣を引き抜いた。
「ひっ!」


「ーーー雷魔法らいげき」

「王子様!お下がり下さい!」
「へ?うわぁあ!」
 バチバチバチと激しい雷の線が、住民達を掻き分け、王子へ向かうのを、騎士数名が王子の体を引き寄せ、避けた。

「くそっ!当たらなかったか…!」
「なっ!お前!レナルドか!この私に向かって何をする!この愚か者が!」
 四季の森ガーデンから急いで帰って来たレナルドは、即、見つけた王子に向かい、雷の魔法を放った。
「ルドはん、手加減は?!」
「うるせぇ!しねぇっつってんだろ!」
 直撃すればただでは済まなさそうな魔法を平気で人に放つレナルドに、一緒に帰って来たイマルもサクヤも焦った。

「待って、この人って、王子様なの…?!」
 大きな声はサクヤにもイマルにも届いていて、サクヤは、こんな所にこの国の王子がいる事が信じられないと、口を手で覆いながら、驚いた。
「その王子様と知り合いって、ルドはん……まさか、城の魔法使いなんか?!」

 周りを見渡すも、視線や、飛び交う会話の中に、聖女の単語も聞こえてきて、もう既に色々と王子がやらかしているのが分かり、レナルドは歯ぎしりしながら王子を睨み付けた。

「この糞馬鹿王子がー!!」
「誰に向かってその様な口をーー」
「ざけんな!あのノルゼスですら、最後まで嘘を突き通したっつーのに!!聖女が交わした王との約束を忘れたのか?!この糞馬鹿王子!」

 レナルドは怒りのまま、魔力をその場に溢れさせた。
「ルドはん?!」
「殺す…!こいつはここで殺す!」
「駄目だよ!ちょっと待ってルドさん!」

 魔力を溢れさせ、物騒な事を言い出すレナルドを、隣にいるイマルとサクヤは必死に止めた。

「待!待て!この私に怪我1つ負わせてみろ!この国の損失だぞ!」
「国益に決まってんだろボケっ!」

 魔王を倒した討伐パーティの1人である大魔法使いレナルドを止められるはずも無く、レナルドは先程よりも激しい、雷の魔法を、王子に放った。


「ーーー守護魔法プロテクト」


 柔らかい暖かなピンクの光の花びらが現れると、王子や周りの騎士達を囲い、雷の魔法から守った。魔法使いであるレナルドの魔法にも関わらず、王子や騎士達には傷1つ無く、ピンピンしている。
「これはーー聖女の力!やはり聖女は、この私を愛してるんだな!」

「……何故だ!何故こんな屑馬鹿王子を守るんだっ!?」
 相変わらずトンチンカンな事を言っている王子を守る聖女に、レナルドは尋ねた。



 ああ。
 私はもうーーリーシャでは、いられなくなるのでしょうね。


「ーーー人を殺すのは駄目ですよ、ルド」

 元・聖女であるはずのリーシャは、ゆっくりと、広場に足を踏み入れた。
「聖女様!助けて頂いてありがとうございます!」
「本当に申し訳ございません!」
 王子の周りにいた騎士達は、こぞって、リーシャに頭を下げ、お礼を述べた。

「聖女…!」
「リーシャが?!」
 ざわざわと、周りの村人から、ざわめきが聞こえる。

「お姉ちゃんが……聖女様?!」
「……」

 怖くて、イマルやサクヤの顔が見れない。驚いていますね。怒って……います……よね?当然ですよね。私は、自分が元・聖女である事を隠していたんですから…。

「聖女!会いたかった!」
 リーシャの元に駆け寄り、そのまま、リーシャに抱きつこうする王子。

「ぐわっ!」
 だが、それをリーシャの守護の魔法が跳ね返した。
「な、何故?!ここは、感動の再開の場面だ!悲劇の別れをしていた恋人同士がやっと出逢えたのだから、ここは熱い抱擁を交わし、そのまま接吻までーー!」
「止めて下さい。私と貴方が恋人同士?そんな関係では無いはずですよ。何故、私が王子様とそのような事をしなくてはならないのですか?」
 今まで王子が見た事が無い冷たい視線を向ける。
「せ、聖女?どうしたのだ?今までは、ずっと優しかったでは無いか!」

「……ただ話を合わせていただけですよ。余計ないざこざを避けたかったので」


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