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しおりを挟む「今日も良いお天気ですね」
リーシャは、カーテンを開け、窓を開けて、外の空気を吸った。
レナルドがこの村に来て1ヶ月が経ったが、今の所、特に大きな問題は起きていなかった。
相変わらずレナルドの態度は悪いが、この村の人達は本当に優しくて出来た人達なので、あーゆー反抗期な時期もあるよなー。と、万年反抗期を受け入れてくれた。
カリンだけは安定で1度酒場でバトったが、リーシャに拒絶されたくないレナルドも、魔法をぶっぱなす事はせず、口喧嘩に留めた。
1ヶ月前、ルドの家で、イマルを好きじゃない!と、ルドに嘘をついてしまった事が気がかりで、後日、きちんと、『私はイマルが好きです』と訂正して来た。
『……分かっていたけど……何で嘘を?』
執拗い女は嫌われるからです。と伝えても良かったのですが、誰に言われた?!とか言い出しそうな気がしたので、『秘密です』とだけ答えた。
それにしても、私はそんなに、イマルが好きなのがバレバレなのでしょうか?好きとは言っていないはずなのですが…。
気付けば、村の人達全員に知られている。この前は村長にも、『うちの馬鹿息子といつ結婚するのー?』なんて聞かれてしまった。
「はっ!もしかして……態度で好きって伝わるのも嫌で、最近避けられているのでしょうか?」
1ヶ月前のルドの家で会った以降、会えば普通に話してくれますが、直ぐに帰ろうとされるし、家には一切来てくれなくなりましたし、魚釣りも山菜集めも連れて行ってくれなくなりました。
「有り得ます…!そう言えば、ぐいぐい来るな!とか、言われていました」
嫌われたく無くて頑張っていたつもりなのに、全く好きを隠してきれて無くて、トドメに、ルドにも直ぐにバレるくらいな好きの態度をとって、執拗い!って思われてしまったのかもしれません…。
「うぅ…嫌われてしまった…のでしょうか…」
リーシャは涙を目に溜めながら、悲しそうに呟いた。
*****
「いや、今回ばかりは本当にイマル兄ちゃんが悪いと思うよ。それに、ちょっと情けないよ」
四季の森ガーデンにて、サクヤとイマルは互いに並んで、釣り糸を垂らしていた。
「俺は別にーー」
「お姉ちゃんに好きって執拗い女は嫌われるって言ったんでしょ?なら、イマル兄ちゃんが好きなお姉ちゃんは、好きじゃないって言うよ。ただでさえお姉ちゃん純粋なんだから」
慣れた手付きで、釣竿を上げ、魚を釣ると、魚をバケツに入れた。
「大体、告白を断っておきながら、好きじゃないって言われて拗ねるなんて、ほんと僕情けなくてーー」
「サクヤはん?!俺、別に、リーシャはんの事気にしてるなんて言うてへんけど?!」
「気にして無くてお姉ちゃんの事避けてるんなら、もっと悪いよ」
「別に避けてなんかーー」
「お兄ちゃん」
「ーー」
以前までなら、魚釣りや狩り、山菜集めには、リーシャが参加していたのに、今は参加していない。特に釣りに関しては、本来レナルドの魔物撲滅の影響で頼まれたもので、そこにはリーシャも含まれていた。
「僕、お姉ちゃんとも行きたかったのに…」
サクヤは寂しそうにそう言うと、再度、釣り糸を川に放り投げた。
「……次は、誘うわ」
「ほんと?良かったぁ!」
ぱあっと笑顔になると、サクヤは上機嫌でそのまま釣りを楽しんだ。
「はぁ。ほんま、俺何してんのやろ」
イマルは1人、頭を抱えながら、溜め息を吐いた。
「ーー何してんだお前等」
「!ルドはん?何でこんなとこ来てんの?」
後ろから声が聞こえ、振り向くと、そこには真っ暗なローブに身を包んだレナルドの姿があった。
「俺が聞いてんだよ!」
一々怒鳴るレナルドにすっかり萎縮してしまってるサクヤは、レナルドを見た瞬間、イマルの背中に隠れた。
「んなん、見たら分かるやろ」
2人の手には、釣竿。隣には魚の入ったバケツ。これが釣り以外の何に見えるのか、あれば説明して欲しい。
「だから聞いてんだよ!魔物を殺し過ぎて魚取って来いって言われたのは俺だろ?!お前等が律儀にあの強欲村長の言う事聞く必要ねーだろーが!」
村に来て1ヶ月。村長を強欲と呼んだ事に、イマルは深く共感した。イマル父は、使える者は誰でも使う。
優秀な魔法使いである彼も、それはそれはリーシャを上手に使われ、言いくるめられ、用事をさせられているのだろう。
「せやかて、毎回1人で魚釣ってもしんどいやろ?えーやん。使えるもんはつこーとき」
ヒラヒラと手を振りながら、何も無いように言う。
実際、あの場で1度了承したし、サクヤも、そして実はイマルも、釣り自体は嫌いでは無く、寧ろ楽しんでしてる。
「テメェの助けなんてーー!」
「随分嫌われてますなー俺、何かしたんか?」
「それは、お前がリーシャをーーちっっ!!」
言いかけて、途中でレナルドは舌打ちし、言葉を止めた。そのまま、イマル、サクヤと少し離れた場所で、魔法で釣竿を出した。
不機嫌な表情を隠さず、釣り糸を垂らす。
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