68 / 82
68
しおりを挟む「…へー、ルドはんと…」
ルドの名前を出した瞬間、何故か、イマルの雰囲気が一瞬ピリッとした気がした。
「えっと、それで、イマルとサクヤにお願いがあるのですが…」
「なんや?」
次に言葉を続けると、イマルはいつもの表情に戻っていて、リーシャはホッと胸を撫で下ろした。
「彼も私と同じく、1人で生活した事の無い人なんです。だから、きちんと生活出来るかが心配で……なので、私と一緒に、様子を見に行ってくれませか?」
ここに来るまでの道中、リーシャは考えた。
初めは、2人に迷惑はかけられないと、自分達だけで頑張ろうと考えていたが、どう考えても、泥沼にハマっていく姿しか想像が出来ない。
自分の事で精一杯な私が、人様に家事を教えれるはずが無い。それが最終的に出た結論だった。
「あ!でも、勿論、迷惑なのでしたら、断って頂いても大丈夫ですので……!」
「えーよ」
「僕も、イマル兄ちゃんとお姉ちゃんがいるなら大丈夫だよ」
「良かった…」
あっさりと了承の返事が返ってきて、安心する。
「俺は元から、後でちょっと様子見に行こかと思てたしな」
言われてみれば、私が村に引っ越して来た時も、いの一番に様子を見に来てくれて、助けてくれました。あれ?もしかして、私が何もしなくても、初めからイマルが助けに行っていたって事ですね。
余計な事しました……。城の関係者とは出来るだけ関わらないように……は、無理ですよね。村に引っ越して来てしまった以上、狭い村。協力し合って生きて行くのは、当然です。
(それに、ルドはーーー)
ノルゼスの時のような、城に連れ戻そうとしてるような感じが、何となくですが、しない。
本当に城を捨て、この村に引っ越してきたように感じる。
「ま、折角昔の仲間に会えたんやから、ノルゼスはんの時と同じように仲良うなれたらえーな」
「……そう。ですね」
ノルゼスと、あんな風に、綺麗にお別れが出来る事になるとは思っていなかった。私の事を理解して貰う事なんて出来ない。諦めていた。
「……私が、ノルゼスとああやって分かり合えたのは、イマルのおかげです」
イマルがいなければ、きっと、あのまま仲違いしたまま、お別れした。
「本当にイマルは素敵な人です!」
「ーーああ、そう」
一直線に褒められる事に多少慣れたとしても、照れるのは照れる。下手に否定しても更に褒め倒されるのは分かっていたので、イマルは頬を少し赤らめながら、素直に頷いた。
「イマル兄ちゃんって、何でお姉ちゃんと付き合って無いの?」
「ゴホッ!ゲホッ!」
サクヤ手作りの魚料理を堪能し終え、怪我人が出たと一旦離脱したリーシャを除き、2人で仲良く皿洗いをしてる中、サクヤはイマルに向かい尋ねた。
「何なんや急に!」
「だってお姉ちゃん、どう見たってイマル兄ちゃんの事好きだし……イマル兄ちゃんだって、お姉ちゃんの事好きでしょ?」
「!すーー好きや無い!」
「ほら、一瞬間があった」
ジトーと睨んでくるサクヤの視線に、イマルは顔を背けた。
「別にいいけど……イマル兄ちゃんがそんな余裕の態度とってる間に、お姉ちゃんが他の男に取られても知らないからね」
「他の男て…」
「現在進行形でいるよ。ルドって人!ノルゼスさんもだし!」
「ノルゼスはんはちょっと違うくないか?何か、恋愛感情って言うよりかは、仕える主に対する忠誠心みたいなもんを感じたで」
生真面目な彼はリーシャに対して盲目的な親愛を持ってはいるが、邪な目で見た事は無い。
「ノルゼスさんの時と違って、ルドさんはこの村に引っ越して来たから、お姉ちゃんがいなくなる事はなさそうだから、まだいいけどーー」
皿洗いを終え、サクヤは手をタオルで拭いた。
「僕はイマル兄ちゃんも好きだから、何処の馬の骨に取られるよりかは、イマル兄ちゃんを応援してるね!」
「…ああ、そう…」
これ以上何を言っても話が長引くだけだと分かったので、イマルは素直に頷いた。
新しくレナルドの家となったのは、サクヤの家がある場所からが1番近かった。魔法使いである事を考慮されたのか、リーシャの家よりか大きく、庭も広い。
リーシャも初めから回復魔法を使えると示していれば、今より多少だが立派な家に住めたかもしれないが、リーシャ自身は今の家を気に入っているので問題無い。
「ルド、居ますか?」
約束を取り付けていたリーシャが、扉をノックする。が、中から返答は無い。
「留守でしょうか?」
「お姉ちゃんが来るって約束してたのに?お姉ちゃんとの約束を何よりも優先しそうな感じだったけど」
ちなみに、レナルドの家の場所はイマルが前持って調べていてくれたので、予定より早く辿り着いた。本当は、村長の所へ寄って、村で提供した家の場所を聞いてから向かうつもりだった。
「あ、でも、そう言えば、ルドはよく寝坊していた気がします」
そのせいで冒険が何度も止まったり、怒ったノルゼスが、レナルドを置いていきましょう!と、その場に放置した事もあった。
56
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!
みん
恋愛
双子の姉として生まれたエヴィ。双子の妹のリンディは稀な光の魔力を持って生まれた為、体が病弱だった。両親からは愛されているとは思うものの、両親の関心はいつも妹に向いていた。
妹は、病弱だから─と思う日々が、5歳のとある日から日常が変わっていく事になる。
今迄関わる事のなかった異母姉。
「私が、お姉様を幸せにするわ!」
その思いで、エヴィが斜め上?な我儘令嬢として奮闘しているうちに、思惑とは違う流れに─そんなお話です。
最初の方はシリアスで、恋愛は後程になります。
❋主人公以外の他視点の話もあります。
❋独自の設定や、相変わらずのゆるふわ設定なので、ゆるーく読んでいただけると嬉しいです。ゆるーく読んで下さい(笑)。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

「君を愛することはない」? では逆に全力で愛しますとも! お望み通り好きにやらせて頂きますね?
望月 或
恋愛
私こと、ユーシア・ランブノーは、ランブノー男爵家が代々産まれ持つ回復魔法を持たずに産まれてきた為、長い間家族から虐げられて生きてきた。
ある日、姉のララーナに縁談の申込みが届く。それは、一年間に四人もの縁談相手に逃げられたウルグレイン伯爵からだった。
案の定姉は嫌がり、矛先が私へと向く。私が姉の代わりに伯爵の五人目の縁談相手となったのだ。
やっとこの地獄の家からオサラバ出来る!
ルンルン気分でウルグレイン家に向かい、伯爵と初めましての顔合わせをした時、彼は不機嫌そうにこう言った。
「君を愛することはない。君には一切関わらない」
私はそれにとびきりの笑顔を乗せて頷く。
「では逆に、私は全力で伯爵様を愛しますとも! 愛人や恋人が何人いても構いません!」
美形な伯爵の顔がマヌケ面になり絶句されたけど気にしない。
さぁ、始めましょうか!
※他サイト様にも掲載しています。

逃げた先で見つけた幸せはずっと一緒に。
しゃーりん
恋愛
侯爵家の跡継ぎにも関わらず幼いころから虐げられてきたローレンス。
父の望む相手と結婚したものの妻は義弟の恋人で、妻に子供ができればローレンスは用済みになると知り、家出をする。
旅先で出会ったメロディーナ。嫁ぎ先に向かっているという彼女と一晩を過ごした。
陰からメロディーナを見守ろうと、彼女の嫁ぎ先の近くに住むことにする。
やがて夫を亡くした彼女が嫁ぎ先から追い出された。近くに住んでいたことを気持ち悪く思われることを恐れて記憶喪失と偽って彼女と結婚する。
平民として幸せに暮らしていたが貴族の知り合いに見つかり、妻だった義弟の恋人が子供を産んでいたと知る。
その子供は誰の子か。ローレンスの子でなければ乗っ取りなのではないかと言われたが、ローレンスは乗っ取りを承知で家出したため戻る気はない。
しかし、乗っ取りが暴かれて侯爵家に戻るように言われるお話です。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる