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しおりを挟む「……悪い、別に怖がらせるつもりは無かった」
リーシャに窘められ、レナルドは即座にサクヤに謝罪した。
「ルド…兄ちゃんも、お姉ちゃんの昔の仲間なの?」
「まぁな」
リーシャが元・聖女である事を隠しているのは理解しているのか、そちらの会話をしないでいてくれているのは、助かる。
「ところで……四季の森ガーデンの魔物の数が減っていたのですが、もしかして、ルドの仕業ですか?」
熊の魔物は本来、四季の森ガーデンの奥地に生息する魔物だが、村近くに現れた。それは、まるで何者かから、逃げているようにも見えたーーー。
「ああ。喧嘩売って来たから、取り敢えず見える範囲の魔物は全員始末した」
(見える範囲って……一体、どこまで始末したんですか)
「ひ、1人で?森の中の魔物の数が減る位倒したの?!」
ほら見てください。サクヤが驚いているじゃないですか。そりゃあ、大魔法使いレナルドからすれば、ここに生息している魔物なんて簡単に倒せるでしょうけど、限度が有ります。
まだ、熊の魔物だけなら、凶暴な魔物で、迷惑していから良かったものの、狩りの対象になってる魔物も、目に見える範囲始末しちゃってるんですよね?肉の調達どうする気ですか…。
村では、肉の調達はほぼ、狩りで賄っているため、危険な魔物といえど、絶滅されるのが困る魔物もいる。
「ルドはん。魔物を倒してくれたんは有難いんやけど、村で暮らしたいんやったら、ちょっと倒したらあかん魔物とか覚えていこか」
イマルもリーシャと同じ事に気付き、レナルドに対して、なるべく分かりやすく、説明した。
「ーーーめんどくせぇな」
「ルド」
説明を受けた後、開口一番、不機嫌に答えるレナルドを、リーシャが名前を呼び、窘めた。
「くそっ…!家畜とか飼育してねぇのかよ」
「昔はしとったらしいけどな。魔物に襲われたりするから、無くなったって話や。聖女さんが魔王を倒すまでは、村にもよー魔物が来たりして大変やったからな」
今でこそ平和になり、村に魔物が押し掛けてくる事は無くなったが、まだ世界が平和になって1年と経っておらず、1度手放した畜産を復活させるとなると、それなりの労力と時間、お金もかかる。
「まー、森を焼き付くさんかっただけ良かったわ」
先程の魔法の威力を見ても、強大で、やろうと思えば、1つの森を焼け野原にする事も容易そうだと思った。
「1度、ノルゼスの野郎にめちゃめちゃ怒られたからな」
(((やろうとした事はあったのか…)))
心の中で3人は全員、同じ事を思った。
「取り敢えず、村で暮らすにしろ何にせよ、村長に挨拶せなあかんし、そこで魔物の事も報告しよか」
肉の調達が滞る事になれば、村に迷惑をかけてしまう。
「…ごめんなさい…」
リーシャは、謝罪の言葉を口にした。
「リーシャはんが謝る必要無いやん」
「でもーー」
レナルドは、私を追ってきたと言った。
私がこの村に来なければ、こんな事にはならなかったと思うと、とても、申し訳なく思ってしまう。
「お姉ちゃんのせいじゃないよ!」
「せやせや。魔物も数が減っただけで絶滅はしてないやろし、すぐ元に戻るやろ」
サクヤもイマルも、リーシャが気にしないよう、声をかけた。
辺境の村ヘーゼル、村長宅ーーー。
「ふむふむ。成程ね」
一連の説明を受けた村長は、イマル、サクヤ、リーシャ。そして渦中のレナルドを前に、頷きながら、お茶を1口、口に含んだ。
「魔物を退治してくれたのは有難いし、悪気は無かったようだし、別にいいよん」
あっけらかんと承諾する。
「ただ、次からは気を付けてね」
「……分かった」
渋々そうだが、レナルドも村長の言葉に応じた。
「いやぁ、それにしても、規格外の強さだねぇ。普通、魔物倒し過ぎだから注意してねー!なんて、中々無いよねー!」
たった1人で1個体を絶滅に追い込むなんて、普通は出来ない。
「ノルゼス君と言い、ルド君といい、冒険者って凄いんだな!」
違います。この2人を普通の冒険者と位置付けないで下さい。この2人は、魔王討伐の際に選ばれた騎士と魔法使いなんですーー!!
リーシャは、次訪れるかもしれない冒険者を思い、心の中で叫んだ。
「ふん。あの程度の魔物、雑魚過ぎて造作もない」
貴方もこれ以上余計な事を言わないで頂けませんか?ただでさえ、めちゃくちゃ目立ってますからね。
「ーーーまぁでも、肉が暫く調達出来ないなら、君達には責任持って、魚の調達をして来て貰おうかな」
「は?」
村長の台詞に、イマルがいち早く反応し、村長を睨み付けた。
「ちょい待ち!何で俺がーー!!」
「おや。イマルは新しく村に来てくれた青年1人に、魚取りを任せるつもりかい?ひっどい男だなー」
「阿呆ぬかせ!都合の良い事言って、どーせ魚が食べたいだけやろ!」
「あ、あの!私がルドと一緒に行きますから……」
今回の件も、イマルはほぼ無理矢理行かせられたも同義。それなのに、また付き合わせてしまうのは申し訳無い。
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