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「はは。ノープロブレム!サクヤの実力は、最早私の若い時以上さ!」
「胸高々に言う事ちゃうけどな!」
  元々、サクヤの魔力は高かった。
  高いが故、今まで魔力の制御が出来ず、上手くコントロール出来なかったのだが、1度コツを掴み、自信を得てからの習得スピードはとてつもなく早い。
「いやぁ。今までは幾ら私でも、イマル単身で川まで行かせる事は非道だと反対され躊躇していたんだがーー」
「反対されたって事は、提案はした事あるんやな?!」
「パーティが結成された今!躊躇する必要は無い!行ってこい!!」
「行かん!ゆーてるねん!」
  断っても断ってもめげずにグイグイ背中を押す村長。


「魚…って、美味しい?お姉ちゃん」
  リーシャとサクヤを置き去りに親子喧嘩を始める2人の隣で、サクヤはリーシャに目を向け、尋ねた。
「そうですね。とても美味しい…と、思います」
  ここに来るまでの間、空腹を感じた事の無いリーシャは、食事を美味しいと余り感じ無かったので、魚を食べた周りの反応を思いだし、憶測で答えた。
「どうやって料理するんだろ…」
  料理に興味のあるサクヤは、まだ出会っていない魚の調理の仕方を思って、呟いた。
  そのサクヤの表情は、どう見ても、魚に興味があるようにしか見えない。
「……行きましょう!サクヤ!」
「「へ?」」
  リーシャの言葉に、聞いていたサクヤも、聞こえたイマルも、間抜けな声が出た。
「お魚、取りに行きましょう」
「いや、いいよ!興味あるだけで、そんな危険な場所に、イマル兄ちゃんやお姉ちゃんを連れて行けなーー」
「流石はリーシャにサクヤ!君達は素晴らしい!そうだ!サクヤだけじゃない!村の子供達、皆の希望だ!」
  このチャンスを逃すまいと、村長が畳み掛ける。
「イマル!お前は村の子供達に!サクヤに魚を食べさせてやりたいとは思わないのか?!」
「いや、食べさせたいなぁとは思うけど、命の危険を犯してまで行きたあらへん、ゆーてんねん!」
「お前達なら大丈夫だ!素敵なパーティじゃないか!」
「どこがやねん!こんな凸凹パーティおるか?!」
  強いと言っても、ただの村男イマルに、8歳の魔法使いに、生活能力皆無の僧侶(元・聖女)。
「イマル。いざとなったら私がお守りしますよ」
「リーシャはんに守られるようになったら終わりやわ…」
  行く気満々になってしまったリーシャを前に、イマルがガックシと肩を落としたーーー。




  時は戻り、現在、四季の森ガーデンの奥の川近く。


「ごめんね。元はと言えば、僕が魚に興味を示したから、お姉ちゃんが気を使ってくれて……」
「そんな……私が、サクヤにもお魚を食べて欲しいと思ったからで……!」
「ええ、ええ。分かってんねん。ほんまの元凶はあのクソ親父って事は」
  互いが互いを庇い合う中、イマルは確信をついた。
「でも、村長も村の子供達を思っての事ですから」
  魚を食べた事の無い子供達に、魚を食べさせて上げたいという願いは、村の子供達を思っての事。
「絶対それだけやない。綺麗な言葉を使ったら、リーシャはんとサクヤはんが動いてくれると思ったからで、もしかしたら、ただ強欲村長が食べたいだけかも知れへん」
  イマルの口調から察するに、父親に対する信頼は0に近い。
「まぁまぁ……でも、村長、優秀なんでしょ?じいちゃんが言ってたよ。色々、新しいルールとか作ったり、村を繁栄されようと頑張ってみたりって」
「こんな辺境な村、どうやって繁栄させるねん…」
  ピクッ!話し込んでいると、川に設置していた釣竿に魚が掛かり、反応した。
「わっ!来たよ兄ちゃん!」
「凄い!魚が針にかかってますよ!」
「落ち着いて引き上げ」
  イマルも初めてのはずなのだが、落ち着いて誘導し、網を使って、引き上がった魚を掬った。
  その後も、用意した釣竿や網を使い、3人は魚を順調に釣り上げた。



「こんだけ釣ったらもーええやろ」
  魚で一杯になったバケツを見て、イマルは釣竿を川から引き上げた。
「結構楽しかったね」
「…まー、危険が無いんやったら、そこそこやな」
  初めは乗り気でなかったイマルも、釣れるまでのぼーとした時間や、釣れた時の喜びや作業が思いの外楽しかったらしく、素直では無いが、サクヤの言葉に同意した。
「……ごめんなさい……私、1匹も釣れませんでした」
  その後ろで、2人と対照的に、1匹も魚を釣る事が出来ず、申し訳なさそうに落ち込むリーシャ。
「リーシャはん、ほんまに色々不器用やねんな」
「返す言葉もございません…」
  初心者なのは3人とも変わらないはずなのに、リーシャは釣竿を川に投げ入れる所から苦戦し、結局、最後まで1匹もリーシャの針に魚がかかる事は無かった。
「だ、大丈夫だよお姉ちゃん!僕達3人でパーティなんだから!」
  釣りが楽し過ぎて、リーシャの世話をする事を忘れていた為、サクヤは少し負い目を感じていた。


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