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しおりを挟むリーシャは、聖女だった頃、自分が体調を崩した時の事を、思い返したーーー。
私が体調を崩せば、王様達から、私の体調管理を担当していた者達への叱咤が始まり、国中からよりすぐりの医師達が招集され、常に傍で見張られ、食欲が無いのに、沢山の食事が用意され、食べなければ、料理人のクビが飛ぶ(職を失う)から、ある程度は無理して食べて、24時間、30分ごとに生存確認及び、体温測定、血圧測定、眼球、鼻腔、咽喉確認ーー
「お姉ちゃん、何思い出してるのか分からないけど、何となく、お姉ちゃんのは普通とは違うかな。って思ったよ」
サクヤは的確に、リーシャのが普通とは違うと見抜いた。
「そうですか?良かった……私、看病されるのが嫌で、体調が悪くなっても、ひたすら隠していたので」
弱い所を見せてはいけない聖女が体調を崩すと、責任をとって何人もの人間が罰せられるし、監視体制は強化されるし、無理に食事を取らないといけないし、30分事に起こされるし、苦痛でしか無かった。
「お姉ちゃんってほんと……どうゆう生活送って来たんだろうね」
所々出る過去の話から、普通で無い事は伝わるし、過保護代表のノルゼスの件もある。
気にはなるが、リーシャの過去の話は辛そうな物ばかりなので、サクヤはそれ以上聞かず、リーシャに普通の看病の仕方を説明した。
リーシャの家から、広場を挟んで正反対。
「ここがイマルのお家ですか…」
リーシャの家よりも大きく、立派に見える。木造の二階建ての建物の周りには庭もあり、青々と茂った畑も耕されていて、綺麗に整っていた。
トントン。
「こんにちは。イマル、いらっしゃいますか?」
扉をノックし、声をかける。が、暫く待っても、返答は無かった。
「留守でしょうか」
彼は積極的に外出している事が多いイメージなので、家にいなくても仕方無い。寧ろ、外出しているのなら、それは元気の証。
(元気なら良かったです)
ホッと胸を撫で下ろすと、リーシャは来た道を戻ろうと、足を進めた。
「ーーリーシャはん?」
「!イマル!」
2階の窓から声が聞こえ、見上げると、イマルの姿が見えた。
「何でリーシャはんがここに……てか、何かあったんか?珍しいやん」
「はい。来てみました」
いつも来て貰ってばかりで、こちらから出向くのは初めて。イマルの自宅を見たのも初めてなので、何となく、嬉しい。
「来てみましたって……ちょい待っとき」
そう言うと、イマルは部屋に戻り、見えなくなった。
言葉通り暫く待っていると、ガチャっと扉が開かれ、中から、イマルが現れた。
「どないしはったん?何の用?」
「イマルの顔が見たくなって」
体調が気になって様子を見に来たのもですけど、顔が見たかったのも本音。
嘘では無く真実なので、ハッキリと笑顔で答えた。
「相変わらずグイグイ来んな…」
「へ?あ!これはもしかして、言ったら嫌われるワードの1つでしたか?!」
執拗い女は嫌われる!そう言われてから、本人に面と向かって好きと言う事は避けていますが、似たニュアンスもOUTなのでしょうか?顔が見たくなった。は、OUTですか?
好きと言った事になりますか?
「あ、でも、サクヤのことも、マルシェも、ゲンさんも、えっと、皆さん、顔は見たくなりますし…!皆さんと同じでして…決して!イマルだけという訳では無くてですね…!」
嫌われたくなくて、必死で弁解する。
「……そんなに必死に否定せんでも……」
「イマル?」
「ーーああ!もうええ!で、何か用なん?」
最初の言葉は、小さ過ぎて良く聞こえませんでしたが、とりあえずは、嫌われなさそう…?な、様子なので、セーフですね。良かった。
リーシャはホッと胸を撫で下ろすと、じー。と、イマルの表情を見つめた。
「何も用無いんやったら、申し訳無いけど、今日は帰ってくれへんか?俺は今日のんびりするって決めてーー」
「イマル、体調崩してますか?」
「ーーー何でそう思うん?」
リーシャの問いに、イマルは数分の沈黙を置いて、尋ね返した。
「いつもより呼吸が乱れていますし、頬に少し赤みが見えます。声も普段よりもおかしいですし、眼球の動きもーー」
「待て待て待て!なんや怖なるから!」
質問の答えを的確に答えているのに、何故か制止されてしまう事に、リーシャは頭を捻った。
「怖いですか?何故ですか?」
いつもイマルの事を良く観察しているリーシャにとっては、このくらい普通なのだが、一般的には違うらしい。
「そこは、いつもと様子が違うから。の一言で済まそか」
どうしてかはまだ良く分かりませんが、省略して良いみたいなので、次からはそうする事にしましょう。
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