上 下
41 / 82

41

しおりを挟む

***


「何や疲れたわ…」

  サクヤ宅にて、イマルはぐったりとテーブルに突っ伏した。

  あれから肉屋にて、マルシェとイマルの小競り合いが少し続いたが、最終的には落ち着き、元気出し。と、マルシェからオマケのコロッケを頂き、帰路についた。


「ご、ごめんなさい……私、イマルは悪く無いと言おうとして…」

  結果、余計にマルシェがヒートアップしてしまった。

「ええ。最初にカマかけられて引っ掛かったんは俺やし……リーシャはんは悪く無い。悪いんはお節介根性丸出しのおばちゃんや」


  何やら遺恨を残した感じになっているが、何だかんだ2人は仲良しなので、大丈夫だろう。
  それよりも……私、そんなに落ち込んでいるように見えるのでしょうか?弱さを見抜かれた事が今まで1度だって無かったので、立て続けに見抜かれると、驚きが倍増します。


「何の話?」
「いい。何も無い。聞いたらあかん。聞いたら後悔すんで」

  よっぽど聞かれたく無いのか、変な脅しをいれるイマル。

「逆に気になるけど…」
  効果は逆効果だった。


「おーイマルにリーシャ!来てたのか!お、今日はご馳走様だな!」
  この家の主であるゲンが、帰宅し、テーブルに置かれた料理を見て、歓喜の声を上げた。

「じいちゃん、先に手を洗って来ないと駄目だよ」
  ゲンの背中を押し、洗面所に消える2人。
  上手く話題が終わり、イマルは帰宅したゲンに感謝した。


「イマル、あの…」
「ん?なんや?」
  2人が洗面所に消えた後、リーシャは真剣な表情を浮かべ、イマルに近寄ると、言葉を発した。



「一緒にいれるだけで満足…は、好きって言った事になりませんーーよね?」

「ーーは?」


  好き好き執拗いと嫌われる。のイマルの発言から、嫌われないように一生懸命気を付けているリーシャは、マルシェに勢い任せで言ってしまった言葉がセーフかどうかを、本人に直接尋ねた。






***



  その頃、村長宅、冒険者受け入れ部屋。


「聖女様…」
  ノルゼスは、薄暗い明かりのついた部屋で1人、リーシャの事を思い伏せていた。


  優美な城とは違う、ボロボロの家屋。
  豪華絢爛な食事とは違う、質素な食事に、それすら、満足に食べられない環境。
  エスコートした時に見えた手は、日々の生活で出来たと思われる手荒れ。
  何より、聖女様に相応しい地位や教育を受けた者達で無く、ただの村人達が、馴れ馴れしくも聖女様の傍にいる事。




「やはり、聖女様にこの地は相応しく無いーー!」


  必ず!聖女様をこの地より救い出し、王都へお連れする!!



  リーシャ本人の気持ちをフル無視し、ノルゼスは強く決意したーーー。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

正室になるつもりが側室になりそうです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:3,074

煉獄の蝶~月夜の秘め事~【短編集】

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:31

氷の令嬢は花を愛でる

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:14

私でなく妹を妻にするから婚約破棄だそうですが、妹はまだ三歳ですよ?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:248pt お気に入り:2,229

【R18】英雄となった騎士は置き去りの令嬢に愛を乞う

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,593pt お気に入り:277

婚約破棄してくださって結構です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,563pt お気に入り:271

処理中です...