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しおりを挟む連れ戻しに来た……?どうして?私は、聖女として魔王を倒したし、役割は果たした。
誰も見送りに来ず、1人、城から去った。
(私は絶対に城には戻らない!!)
あんな窮屈で自由の無い生活は、もうしたく無い!!!
「答えて下さい、ノルゼスーー」
「ーーき」
「き?」
「いやぁーー!!奇遇ですねぇ?!リーシャ様!!まさかこんな所でお会いするなんて!!」
「ーーーえ?」
ノルゼスの言葉に、思わず、間の抜けた声が出た。
「実は自分も、自由に冒険に出たいと思うようになりまして!以前いたパーティは抜けて、今は気ままに旅をしているんですよ!」
「そ、そうなのですか?」
「はい!」
(パーティ……城の騎士を辞めたという事ですよね)
きっと、この場にイマル、サクヤがいるから、元聖女である事を隠す為、配慮して、違う表現をしてくれているのだと理解する。
「お姉ちゃんの……昔の仲間だった人なの?」
2人の会話を聞いていたサクヤが、奥から声をかけた。
「え、ええ。紹介しますーー剣士の、ノルゼスです」
以前は城の騎士なのだが、城を辞めたという事は、今はただの剣士になったのだと判断し、紹介する。
「こちらは、私が今、この村でお世話になっている、イマルにサクヤです」
「は、初めまして」
「……どーも」
初対面だからか、憧れの冒険者だからか、サクヤは緊張気味に、挨拶をし、イマルは、どこか警戒したままだった。
「初めまして、ノルゼスだ。聖ーーリーシャ様がお世話になっいているようで、感謝する」
「リーシャ様…!お姉ちゃんって、やっぱりどこかの街の大富豪とかなの?」
後でノルゼスには、様付けも止めるように言わないと……。
それに今、聖女様って言いかけましたよね?絶対に止めて下さいね?私は今、聖女ではありませんから!
「イマル、サクヤ。折角家に来て下さった所申し訳無いのですが、また日を改めてもらう事は出来ますか?」
このままノルゼスを野放しにしたら、至る所で余計な事を言いそうで怖いです。
気をつけてはいるようですが、念入りに忠告する必要があります。
「あ、うん。折角、昔の仲間と会えたんだもんね」
本当は2人と一緒にいたい気持ちが山々なんです!でも、他の場所でも様付けされては、たまったものじゃありません。
残念な気持ちを抑え、リーシャは2人を見送り、ノルゼスを中に招き入れた。
途端、ザッと膝をつき、敬礼するノルゼス。
「お久しぶりでございます。聖女様」
「……ノルゼス……私はもう、聖女ではありません」
1ヶ月も前に、聖女の地位は捨てた。
「しかし、私の中で聖女様である事に変わりはありません!」
「……止めて下さい」
リーシャは呆れながら、こんこんと、自分が聖女である立場を捨て、ただの村娘になった事を説明した。
「それで、ノルゼスはいつまでこの村にいるのですか?」
「まだ詳しくは決めておりませんが、暫くは滞在しようと思っています」
説明を終え、様付けを止めるよう念を押し、リーシャはお茶をノルゼスに出した。
お茶を入れる事を物凄く止められたけど、ここは城じゃないのだから、メイドがお茶を運んで来る訳も無いし、私の家で私がお茶を出すのは当然。
「リーシャにお茶を入れて頂けるなんて、光栄の極みです」
「……あの、もしよろしければ、敬語も使わないで頂けませんか?」
私はもう癖で、皆に敬語を使っているけれど、ノルゼスは私にだけ敬語を使っている。
それはそれで、私の前職が疑われる。
「敬語ーー分かりました。リーシャの望みとあらばーー使うのを止めよう。これで良いか?」
飲み込みが早いようで助かる。
「ありがとうございます」
リーシャはお礼を言うと、お茶を飲みながら、ノルゼスを見た。
ノルゼスは、まだ20歳ながら、城でも1番の剣の使い手で、魔王討伐の際のメンバーに選ばれた、優秀な騎士だった。
私が言えた義理ではないけれど、よく、城を辞めるなんて決断をしたものだ。
「ごめんなさい、ノルゼス。私、貴方が私を連れ戻しに来たんだと
勘違いしてしまって……」
最初、冷たい態度をとってしまったかもしれない。と、リーシャは反省した。
「いやぁ、あはは。気になさらないで下さい」
それに対し、ノルゼスは斜め上を見ながら、不自然に笑った。
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