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しおりを挟む「えっと…ジェラードに怒られる姿を見るのは、私も辛いので、とりあえず落ち着きませんか?」
酷い言葉を投げ付けられるのは、城での生活の陰湿なイジメを受けていたリーシャは慣れているので構わないが、カリンが怒られる姿を見るのは忍びない。
「私が怒られる訳無いでしょ!」
「だ、大丈夫ですか?本当に記憶を、無くしておられるのですか?」
「どーゆー意味よ?!」
前回叱られた出来事を全く覚えていない発言に、心配になる。
「て、何あんた……引きこもりじゃない」
カリンは、次にサクヤが目に入ったのか、サクヤに視線を向けた。
「カリン姉ちゃん…」
サクヤはカリンが苦手なのか、私の後ろに隠れると、そっと手を握って来た。
(…可愛い…!)
不謹慎なのかもしれないが、ギュンっと、胸が鷲掴みにされるような衝撃を受けた。
「おい、8歳の小さな子いじめんなよ」
「何よ!まだ何も言ってないでしょ!」
相手に向かって引きこもり。と発言するのは、失礼には当たらないのでしょうか?
「何よーーやっと家から出て来たと思えば、また、イマルと一緒にいてー!!」
キッ!と、カリンはサクヤを睨み付けた。
「あんたが家から出ると、また、魔法が暴走して、怪我させられないかって、皆迷惑するのよ!分かるでしょ?!」
「そんな…言い方…」
酷いと思う。
サクヤは、傷付けたくて、村の人達を傷付けた訳じゃない。
私の事は、どう言って貰っても構わないが、まだ小さな、幼い子供に対して、言う台詞じゃ無いと思った。
「……っ」
カリンの言葉に、サクヤは強く、私の手を握る。
その手は、震えていてーーー私も、同じように強く、サクヤの手を握り返した。
「ーーー迷惑だなんて思っとらんよ」
騒ぎを聞き付け、集まって来た村人の1人が、カリンの発言に対して、平然と否定した。
「へ?」
呆気にとられたような声を出すカリン。
「思ってないわよね。別に。怪我した子達だって、別に対した怪我じゃなかったし」
「初めっから何事も上手く出来る訳ないだろ。特に魔法なんて難しそーなもん」
「何より、サクヤ君は良い子だもの」
次から次へと、サクヤを擁護する声が、村人から上がる。
「なっなっなっ!」
カリンは、慌てたように周囲を見渡した後、助けを求める様に、イマルを見た。
「サクヤの事悪く言うてんのなんて、お前だけや」
勿論、イマルが助け舟を出す訳も無く、容赦なくカリンを突き放した。
その後、カリンの大暴走を知らされたジェラードが駆け付け、巨大な雷を落とされたカリンは、泣きながら酒場に引きづり戻された。
結局、村の人達は誰も、サクヤを悪く思っている人はいなかった←カリンを除く。
引きこもっているのも、無理強いして家から出すのは良くないと、本人が自ら家から出て来るのを待っていただけ。
「ほな、帰ろか」
嵐が去り、改めて、イマルが足を進めた。
村の人達の発言を聞いても、普段と何も変わらないイマルは、村の人達がサクヤを悪く思っていない事を、勿論、知っていたのだろう。
「行きましょう、サクヤ」
「…うん」
ずっと繋いでくれている手を優しく引き、リーシャとサクヤも、イマルの後につづく。
隣にいるサクヤの顔は、泣きそうだけど、嬉しそうに見えて、私も、とても嬉しくなった。
それと同時に、やっぱりこの村は、皆優しくて暖かくて、良い村だな。と、改めて、そう思った。
ゲンの家に着くと、帰りを今か今かと待ち侘びていたゲンが、サクヤの姿を見るなり、駆け寄った。
手荷物の魔物の肉を見て驚き、話を聞くと、大喜びでサクヤを抱き上げ、めいいっぱい褒めちぎった。
「止めてよじいちゃん」
口では止めてと言っているが、その顔は、嬉しそうに見える。
そのまま、サクヤ、イマルが、持ち帰った肉と山菜で鍋を作り、4人で楽しく、鍋を囲んだーー。
「お邪魔しました」
帰り、リーシャはぺこりと、見送りに来たゲン、サクヤに頭を下げた。
「また遊びに来てね」
「はい。勿論です。サクヤも、是非遊びに来て下さい」
「うん!お姉ちゃんの家、行ってみたい」
今まで家から出れなかったのに、サクヤはリーシャの誘いを、笑顔で受け入れた。
何事にも、自信は大切。
1度、魔法を上手く使い、魔物を倒した経験は、サクヤにとって大きな自信に繋がった。
これなら、もう魔力が暴走する事も無いだろう。
「リーシャ、本当にありがとう…!恩に着る」
ゲンは、リーシャに向かい、深々と頭を下げ、礼を言った。
「私は何もしていませんよ」
本当に何もしていない。
もしかしたら、少し、背中を押したのかもしれないけど、ほんの少しの後押しで、サクヤがここまで一気に成長出来、外に出れるようになったのは、今まで支えてくれたゲンやイマルに、優しく見守ってくれた、村人達の存在だ。
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