18 / 82
18
しおりを挟む「どうですか?」
「…うん、普通に苦いよ。焦がし過ぎだし……それに、野菜、ちゃんと切った?なんか、塊があるけど」
丸ごと人参の黒焦げが、鍋に沈んでいる。
「はい、切りました」
「……よくそんなにはっきり言い切れるね」
真っ直ぐな顔で言い切られ、逆に感心する。
「お恥ずかしながら、この様に、料理は初心者でして、とても下手なのですが、今、まさに頑張っている最中でして」
リーシャは、ニコッと笑顔をサクヤに向けた。
「一緒に頑張りませんか?」
「一緒に…」
急なお誘いに、サクヤは戸惑い、返事が出来ず、俯くと、チラリと、火傷したリーシャの手を見た。
「僕と一緒にいたら……また、怪我しちゃうよ?怖くないの?」
「どうしてですか?サクヤは、わざとしたのでは無いですよね?なら、怖がる必要がありません」
魔力の暴走を止めれず、相手を怪我をさせてしまう。
その事を恐れ、距離を置こうとする彼を、私は、怖いとは思わない。
「今日から特訓ですね」
「え…えっ…と…」
否定しないのを肯定と捉えるリーシャに押され、サクヤは次の言葉を上手く出せず、ただ戸惑った。
「おお?!リーシャじゃねーか!」
そこへ、顔見知りのゲンがやって来て、声をかけられた。
「ゲンさん」
「じいちゃん」
「何やってんだお前等?」
どうやら、今いるこの場所はゲンの家らしく、出掛けていたゲンは、いるはずの無いリーシャの姿を見て、驚いた表情を浮かべた。
「サクヤがすまねぇな!リーシャ!」
話を聞き、リーシャが怪我した箇所を冷やす為の氷を持ってきながら、ゲンは申し訳なさそうに謝罪を口にした。
「かすり傷ですし、全然平気ですよ」
「いや、でもーー」
赤い腫れは、水脹れになっていて、痛みはあるが、我慢出来る。
「それよりも、今日からサクヤと特訓をする約束をしたんです」
「僕了承してないけど…」
庭先の縁側で座りながら、勝手に決定事項にされた約束に、サクヤは口を開いた。
「何?!サクヤと?!仲良くしてくれんのか?!」
「はい」
「くぅ!こんな出来の悪い孫と仲良くしてくれるなんてーー!サクヤをよろしく頼む!リーシャ!」
「じいちゃん!僕了承してないってば!」
本人である自分を置いてけぼりに話を進める2人に対し、サクヤは急いで否定したが、最早後の祭りだった。
「頑張りましょうね、サクヤ」
「…うぅ。じいちゃん、全然僕の話聞いてくれないんだもんな…」
実のおじいちゃん公認で、リーシャは野菜スープの特訓、サクヤは、魔法の特訓をする事が決まったーー。
48
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説
美形軍人に連行された少女の末路 ~辿り着く先は見知らぬ夫の元か、投獄か!?~
当麻月菜
恋愛
『アルベルティナ・クラース。悪いが何も聞かずに、俺たちに付いてきてもらおうか』
パン屋で店主を泣かせるほど値切った帰り道、アルベルティナことベルは、突然軍人に囲まれてしまった。
そして訳がわからないまま、鉄格子付きの馬車に押し込まれどこかに連行されてしまった。
ベルを連行した責任者は美形軍人のレンブラント・エイケン。
人攫い同然でベルを連行した彼は人相が悪くて、口が悪くて、いささか乱暴だった。
けれど、どうやらそうしたのは事情があるようで。
そして向かう先は牢屋ではなく、とある人の元らしくて。
過酷な境遇で性格が歪み切ってしまった毒舌少女(ベル)と、それに翻弄されながらも毒舌少女を溺愛する他称ロリコン軍人(レン)がいつしか恋に発展する……かもしれない物語です。
※他のサイトでも重複投稿しています。
※2020.09.07から投稿を始めていた作品を加筆修正の為取り下げ、再投稿しています。
お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして
みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。
きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。
私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。
だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。
なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて?
全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです!
※「小説家になろう」様にも掲載しています。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
つがいの皇帝に溺愛される皇女の至福
ゆきむらさり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる