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しおりを挟む「ちゃう!ややこしなるよーな事言うな!」
告白を断っている身なので、それ系の会話は全力で避けたいイマルは、大きな声で即、否定した。
「あんたは全く……良い男やのに、彼女の1人も作らんと……」
そんなイマルに対し、マルシェは呆れたようにため息を吐いた。
「さ!んじゃまぁ、気を取り直して、豚の魔物の肉のお買い上げでいいね?ちょっと待ってな」
「因みに、リーシャはんは買い物初めてやからな」
「初めて?そんな事あんの?」
慣れた手付きで肉を包むと、そのまま、リーシャに手渡した。
「お金な」
「あ、はい!」
どうすれば良いか分からず、受け取ったまま微動だにしないリーシャは、イマルに促され、慣れない手付きでお金を取り出した。
「……ほんまに買い物初めてなんやね」
買い物が初めてである事を話半分で聞き流していたマルシェは、買い物初心者のリーシャを、珍しいものを見る様に、まじまじと見つめた。
「これで大丈夫でしょうか?」
「うん!毎度あり!」
受け取ったお金を確認し終えると、マルシェは笑顔で答えた。
「……」
じーと、購入した肉を見つめるリーシャ。
「どないしたん?何かわからん事でもあったか?」
「あ、いえ……その……初めて、自分が稼いだお金で、初めて、買い物をしたので……とても、嬉して……」
周りの人達が普通に行っていることが、本当に羨ましくて、遠くから眺めることしか出来なかったのに、今日、初めて、買い物が出来て、本当に嬉しい。
「…………いや、なんかごめん。こんな田舎の肉屋に、そんな大切な初体験を使わせてもて」
大袈裟に感極まるリーシャに、イマルは若干引き気味に伝えた。
「何がこんな肉屋や!リーシャちゃん、あんた良い子やねぇ」
失礼な事を言うイマルの頭を叩くと、マルシェは感心したようにリーシャを見、ゴソゴソと、何かを包んだ。
「はいよ!これはオマケや!買い物初記念にね!」
購入した物とは別に、違うお肉を追加で手渡す。
「え?いえ、そんな」
「ええ、ええ!これから一緒に暮らしていく村の仲間やねんから、仲良うしてな」
「…はい!こちらこそ、よろしくお願いします!」
暖かい言葉を掛けられ、胸が熱くなると、リーシャは、こくりと頷いた。
「……感動やな。肉屋の前で」
1人置いてけぼりにされたイマルは、2人の様子をただただ見学していた。
肉屋からの帰り道。
大切そうに、購入したお肉と、オマケでプレゼントして貰ったお肉を抱えるリーシャ。
「良かったなぁ」
「はい。とても嬉しいです」
「おばちゃん、優しいからな」
リーシャの家に着くと、イマルは肉を受け取った。
「料理……して下さるんですね」
「そらな。折角の肉が食べれんようになったら元も子もあらへん」
自然と料理を作り初めるイマルの姿を、リーシャはじっと、見つめた。
「はいよ。出来たで」
お皿の上には、ハンバーグと付け合せのサラダ。
別に、スープが添えられていた。
「す、凄い……!天才……!」
短時間でパパッと料理が作れる事に感銘を受ける。
「……まぁもう素直に受け取っとくわ」
大袈裟すぎるリーシャに対して、腹ぺこなイマルはスルースキルを発動した。
テーブルに向かい合って座り、手を合わせる。
「ほんまに俺も食べてえーねんな?てか食べるで。もうお腹ペコペコやし、ここまで付き合ってんから」
食べる前に、念押しで確認する。
「勿論です。一緒に食べて下さると、嬉しいですし、幸せです」
「いや、そこまで言わんでええけどーーまぁえええわ、頂きます」
挨拶をし、早速口に運ぶ。
リーシャも、ゆっくりと、ハンバーグを口に運んだ。
「…美味しい」
「せやな、これは美味しいわ。おばちゃんのオマケの肉使っただけあるわ」
オマケの肉の正体は、合い挽き肉。
「今日買った肉は置いてるから、明日にでも使うんやで」
「はい」
最悪、豚の魔物の肉は、きちんと食べれるサイズに切られているので、火を通せば食べれる。
合い挽き肉を調理するのはリーシャには難易度が高過ぎると判断し、今日の食事に使用した。
「買い物ちゃんと覚えたか?」
「はい。商品を選んで、お金を出して、受け取ります」
「よし、完璧ーーやな?絶対やで」
生活能力が皆無すぎて、イマルのリーシャに対する信頼度が段々減っていっている。
「イマルーー」
「なんや?」
「好きなのですが、どうしたら好きになって頂けますか?」
「ぐふっ!げほっ、ごほっ!」
食べ物が器官に入り、むせるイマル。
「中々執拗いな……あんた」
「ご迷惑だとは思うのですが、参考までに聞いておきたくて」
ハッキリと断られた事は理解しているーーーのだが、リーシャにはこれが初恋で、恋愛沙汰に疎く、何がどうすれば正解なのかが、分からずにいた。
「駆け引き?とは、どの様にすれば良いのでしょうか?」
村のおじさんに助言された事を、まさかの本人に尋ねるという、ミラクルプレイ。
「駆け引きて……誰やそんなん教えたん!」
イマルは瞬時に、村の誰かが余計な事をリーシャに言ったと理解した。
「俺は、好きにならん!」
「どうしてもですか?」
「ならん!ええか?!執拗い女は嫌われるで!」
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