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エピローグ
しおりを挟む王都カナン。
大きな城、その中の、王の間にてーーー。
「聖女よ」
王座に座る、立派な髭を携えた王と思われる人物が、王の前に膝を付き、祈る様に手を合わせる、1人の少女に向かい、語り掛けた。
「はい」
鈴のなる様なか細い声で、小さく返事をすると、少女は目を開け、王を見上げた。
王の間には、王と少女以外にも、王に続く道筋に沿い、2人を見守るように、沢山の人が詰めかけていた。
「聖女様……相変わらず儚げでお美しい」
「ああ!流石は、国を救いし聖女だ」
周りからは、聖女を賞賛する声が至る所で囁かれる。
長く綺麗に手入れされた白の髪に、間から見える、透き通った青い瞳。
日焼けも無い真っ白な肌に、か細い腕に足。
「そなたの力で、我等の国は救われた。感謝する」
「お言葉、有難く承ります」
王様の隣には、王妃。
更にその隣には、王位第一継承者の王子の姿もあった。
「そこでだ、国を救ってくれたそなたに、褒美を授けようと思う」
ざわざわ。と、辺りがどよめく。
少女の耳には、「ついに王子との結婚…」や「16歳になられたものね。騎士様かしら」「大魔法使い様よ」など、様々な声が聞こえた。
国を救った聖女は、王子様と結婚し、自分を守ってくれていた騎士様、魔法使い様と一緒に、生涯、煌びやかなお城で、幸せに暮らしました。
それが、世界を救った聖女の、幸せな結末であると、皆は信じて疑わない。
「望むものを何でも言ってみると良い。勿論、我が王子との婚姻を望むのなら、それも構わんし、他に想い人がいるのならーー」
「王様」
聖女は、話を遮るように声を発した。
「何でも……願いを叶えて下さいますか?」
「ああ、勿論だ。二言は無い」
王様は、ハッキリと断言した。
「そうですか……では、お願いがございます」
スタッと、聖女はその場に立ち上がり、ニコッと満面の笑みを浮かべた。
「私は、聖女としての地位を捨て、残りの生涯、ただの村娘として、生きていきたいと思います」
「ーーーは?」
聖女の言葉に、王様だけで無く、周りに集まった人々も揃って、豆鉄砲を食らったような、呆気に取られた表情を浮かべた。
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