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それぞれの進む道
時間魔法
しおりを挟む勿論、マドローナの罪は許されるものじゃない。
ラナン家に唆されたにしても、私達の国に戦争を仕掛けて来てのは事実。
その結果、マドローナは私達の国に敗北した。
「マドローナは、敗北の原因を、ラナン家の責任だと非難するでしょう。貴女の家族は今、マドローナにいるのでしょう?」
彼等はとっくに国を捨て、新しくマドローナで、磐石な地位で悠々自適に過ごす為、移転した。
だが、本来マドローナは、マフィアと比喩される、治安の悪い国で、殺人などが横行しているような、残忍な国。
「きっと、マドローナにいる家族の方が、無事でいるとは思えません」
そんな国でラナン家が生きて行けるのは、国を売り、その対価として、地位を確立したからに他ならない。
ラナン家の口車に乗せられたのか、はたまた、マドローナから持ち掛けたのかは分からないが、どちらにせよ、敗北の原因がラナン家にあるのは明白で、マドローナは、ラナン家を決して許さないだろう。
ここにいるサウィルンは、今から騎士団に連行され、何らかの罰を食らうだろうが、マドローナにいる家族達は、もっともっと辛く、残忍な殺され方を、するのかもしれないーーー。
「ちょっとーーー止めてよ!何言ってんの?!何で私の家族がそんな目に合わなきゃなんないのよ?!」
大きな声を上げ、私達に訴えても無駄なのに、非難の声を上げる。
「自業自得でしょ。良かったね、少なくとも君は、残忍な殺され方はしなくて済むんだから」
「あいつ等、平気で惨い事するからな」
元、奴隷としてマドローナにいたクラとジュンは、過去を思い出しながら、更にサウィルンに告げた。
「嘘ーー嘘よ!何でよ?!こんなのおかしい!何で私がこんなに追い詰められなきゃなんないのよ?!おかしいでしょ?!」
追い詰められている状況が信じられないのか、頭を掻き毟りながら、ブツブツと呟く。
「私達は悪くない!そうよ!あんたが、キリアが悪いのよ!」
「……私?」
「そうよ!あんただってラナン家の一員でしょ?!あんたが、今回の原因だって事にすればいいのよ!いい考えでしょ?!今まで何の役にも立たなかったゴミ屑が、やっと私達家族の役に立てるのよ?!最後に家族だって認めてあげるし、これで私達、助かるわよね?!」
「……今まで家族だって認めて来なかったクセにーー」
最後の最後まで、私を馬鹿にするのね?私が、今更家族って認めて貰えて、喜ぶとでも思うの?
「おい、俺がこいつを本当の肉団子にするー!」
「ジュン、待ってよ。俺も手伝う。ありとあらゆる痛みを与えてから殺して、魔物の餌にする」
最愛の妹をここまでコケにされ、ブチ切れているジュンとクラは、各々、武器を構えた。
そんな2人を、スっと腕を出して止める。
「キリアっ!こんな脳みそ空っぽ肉団子女を庇う必要ねぇだろ?!こいつ等の無鉄砲な行動のせいで、国がめちゃめちゃになるとこだったんだろ?!今すぐ死んで詫びろ!」
「マジで生かしておいても害にしかならない人種だと思うよ。ホントに、ここで殺そ」
2人の怒りゲージは限界突破しているらしい。
そうだね。本当に、怒りを通り越して、変に冷静でいるよ。魔法を放って、簡単に殺そうだなんて、思わないくらいに。
ゆっくりとサウィルンの近くまで近寄ると、私は、サウィルンと目をジッと見つめ、目を合わせた。
不思議。私の特殊魔法が時間だと知って、頭の中に、回復系の魔法とは別の、時間の魔法が思い浮かんだ。
「ーー時間魔法」
「はっ?!ちょっ、何、何ーーーこ、れーー」
見る見る内に、サウィルンの顔にシワが増え、腰が曲がり、髪が抜け落ちた。
私の時間魔法ーーー肉体の時間を奪う魔法。喰らえば、肉体の時間は経過し、その分、老いる。
「わ、私の……体が…!若くて、綺麗な、体が…!」
「大丈夫ですかお姉様?家族のした事だから、許して下さいね」
老いた体では、その肉厚たっぷりの重量級の体を持ち上げられないのか、その場にへたり込んだサウィルンの顔を覗きながら、私は、心配そうに声をかけた。
「ふふふざけんな!はやぐ元に戻しなざいよ!」
声もガラガラで、張りが無い。歯も何本か失ったのかな。
「戻し方なんて分かりません。何せ、初めて使った魔法ですから」
「はぁ?!」
「許して下さるでしょう?家族なんだから」
満面の笑みで、サウィルンの体を支えながら、尋ねる。
「ふざけないぇよ!あんだなんか家族な訳ないでしょ?!」
キリアの手を乱暴に払い除けるサウィルン。
……本当に。頭の悪い方達だね。
「そうだね。あんた達と家族なんて、こっちからごめんだよ」
あの日、紅の森で捨てられた時から、私は、ラナンの名前を捨てた。
「私の家族は、ケイ先生や、クラ兄さん、ジュン兄さんだけ!貴女達なんて、私の家族じゃない!!」
ハッキリと拒絶する。
この人達にされた仕打ちが忘れられなくて、怖くて、面と向かって今まで言い返せずにいたけれどーーー私の大切な人達を、自分達の勝手な都合で傷付けたこの人達を、私は絶対に許せない。
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