呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子

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それぞれの進む道

改めて

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「はい。信じますーーー僕には、信じる根拠があります。貴女に、命を2度も救われていますから」
「????」
 意味が分からず、頭を傾げたが、カトレアはクスッと微笑むだけで、答えを言ってくれなかった。

「さぁ、父様の元に向かいましょう」

 カトレアに促されるまま、4人は王の間へと足を運んだーーー。




 *****

 3週間後ーーーマドローナ本隊。

「あはは!遂にこの時がやって来たわ!」
 マドローナの本隊の中心、1人、優雅な馬車に揺られながら、サウィルンは機嫌良さそうに、高笑いをしていた。
「これでやっと、ラナン家を没落寸前まで追い詰めたあのクソみたいな国が無くなるのね」
 鼻歌を歌いながら、爪に自身の髪、瞳と同じ、緑のマネキュアを塗る。
「たかが第7王子のクセに、私の誘いを断った底辺男カトレアも、呪われた紅い瞳の分際で、兄さんが本来座るべき騎士団副団長の椅子を奪ったクラも、家族に捨てられた不幸いっぱいのキリアも、みぃーんな、お陀仏♡」
 ふー。と、爪に息を吐き掛ける。
「間抜けな騎士団は、今頃ノコノコと救助に出掛けた先で始末されてるし、残ってる騎士くらいなら、マドローナでもよゆーよね。本当はラット騎士団団長も始末しておきたかったんだけど、流石に第3王子様まではおびき出せなかったね、残念」
 1番厄介な人物は残ってしまった。
「でも、それくらい誤差の範囲内よね!なんたってラナン家には、紅い爆弾がある!国を出る前に、あちらこちらに紅い爆弾を設置して来たし、城壁さえ壊せば、王都に侵略するのは簡単!」
 騎士団で強いとされているアレンは始末出来た。それだけで上場。
「これでラナン家は、新しくマドローナが侵略した国で、磐石な地位を築けるのね」
 この侵略が成功した暁には、マドローナから、王妃に迎え入れると提示されている。貴族なんかじゃない!王妃!そう、王妃こそが、私に相応しい!

「ふふ。キリアを私の目の前に連れてくるよう命令してるし、ホント、あのゴミ屑の絶望に満ちた顔が見れるのが今から楽しみー♡」
 目的が後少しで達成されることで、すこぶる機嫌が良いサウィルンは、更に気分を良くするために、キリアを痛め付ける場面を想像した。

 ガコンッッ!
「!ちゅっと!何?!」
 急に馬車が乱暴に止まり、並べてあったアクセサリーやマネキュアが、全て地面に落ちた。
「何よ!まだ王都には早いでしょ?!」
 王都に着くまでには、まだ後数時間はかかるはず。それまでに停留する予定も無い。
 先程までの機嫌の良さは消え、サウィルンは怒り任せに、馬車の外に出た。



「《闇魔法クラーク》」

 呪文とともに、闇の魔法が、マドローナの兵士達を一斉に襲う。
「俺の大切な妹に手を出そうとした馬鹿共はてめぇらか?!全員、ズタボロのボロ雑巾になるまで、痛め付けてやるよ!」
 真っ黒なローブに身を包んだジュンが、空に浮かびながら、怒りのオーラ全開で、マドローナの兵士達を見下ろしていた。

「ジュンーー!程々にねーー!」
 その下から、ニコニコ笑顔で、真っ白な衣類に包まれたクラが、ジュンに声をかけた。
「ああ?!何で程々にしなきゃなんねーんだよ?!」
「そんなの決まってるでしょ?」

 左手を上げると同時に、背後に迫っていたマドローナの兵士達を、植物のツルで羽交い締めにしつつ、反抗出来ないように、太腿、手の甲を突き刺すクラ。
「俺も暴れたいからだよ」
 笑顔が反転して、冷めた冷たい目で、クラは答えた。


「騎士団よ!進め!我が国に攻め入る輩を、1匹足りとも逃がすな!!」
 ラット騎士団団長が、騎士団を率いて、マドローナの兵士達を相手取る。その隣には、アレンの姿もあった。


「ななななな、何で?!何で騎士団がここに?!」
 まだ王都には辿り着いていない。
 宣戦布告だって、つい先程送り付けたばかり!早すぎる!
 サウィルンは、半分パニックになりながらも、圧倒的不利な状況を察した。
「何でアレンもいるのよっー!てか、騎士の数、全然減ってないじゃない!何でよ!あいつ等、普段馬鹿みたいに平民如きを助けに行くくせに、行かなかったのーー!?」
 その場から逃げようと、足を動かした所で、自分を見ている人物に気付いて、立ち止まった。

「何であんたがここにいるのよーーキリア!?」
 そこには、カトレアと、キリアの姿があって。サウィルンは、キリアを鬼如く睨み付けた。



「……久しぶりだね、サウィルンさん。どうやら、あの時とは、立場が逆になったみたい」
 こうして会うのは、貴女に、殺されかけた時以来ーーああ。でも、今の貴女には、身に覚えの無い話ですね。

「何の話よ?!てか、何?!ゴミ屑が何の用?!そこを退きなさいよ!」
「そう言われて退くと思います?国を売った反逆者相手に」
「ちょっ!何で知ってんのよ!?」

 動揺してるのかもしれないけど、ここでその台詞は、罪を認めたも同義ですよ。まぁ、今更言い逃れなんて出来ないから、一緒だけど。

「貴女の馬車での会話、全て録音させてもらいました」
「なっ!」
 一緒にいたカトレアが、記録の魔道具をサウィルンに見せた。ボイスレコーダーみたいな物かな。
 ジュン兄さんの闇魔法使えば、忍び込むのなんて簡単。

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