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それぞれの進む道
部屋
しおりを挟む急に謝罪された事に驚いて顔を上げると、悲しそうな表情を浮かべた、カトレアが見えた。
「キリアがそんな風に、自分を貶める発言をしてしまうのは、僕達が今まで、貴女達にしてしまった仕打ちが原因です。幾ら謝っても許される事ではありませんが……本当に、申し訳ありません」
「そんなーーち、違う!少なくともカトレアは、最初から私達を差別なんてしてなかった!」
それどころか、自分には何の特にもならないはずなのに、紅の瞳の差別を無くそうと、誰よりも頑張ってくれていた。
「それでも、僕も、貴女達を非難した人達と同じーー《人間》ですから」
「…あ…」
私達は、自分達紅の瞳と、ただの人間を区別するように、人間と呼ぶ。私達は人間では無いから。と。
「キリアさん、自分も、初めて城に足を踏み入れた時は、身が引き締まる思いで、大変緊張したのを覚えている」
「アレンさんも…?」
「ああ。今でも、王の間に入る時には、とても緊張するよ」
王の間!即ち王様の御前!!それは……緊張で吐いちゃうかもしれない。
「大丈夫だ。すぐに慣れる。逆に、少しくらい緊張してくれる方が、どこぞの誰かさんと違って可愛げがあっていいと思うぞ」
それってーーーまさかクラ兄さんの事じゃないですよね?クラ兄さん?お城の中でどんな感じで過ごしてるの?
「キリア。紅の瞳を悪く思う人間は、きっと、まだいるでしょう。でも、キリアは1人では有りません。僕も、アレンも、クラもいます」
「ーーはい」
覚悟を決めて、キリアは城の中に足を踏み入れた。
「とりあえず、キリアに用意された部屋に案内します」
「……カトレア自ら?」
さっかから全部、カトレアが主導でしてくれてるけど、本当は王都に呼び寄せに来たりするのも、部屋まで案内するのも、普通は王子様がしたりしないよね?メイドはどうした?執事は?
城の中を歩いてると、あちらのちらにメイドや執事の姿があって、カトレアを見る度に頭を下げるのに、誰も肝心の案内を変わろうとしない。
「気にするな。カトレア様ご自身が望まれていて、皆もそれを承知しているんだ」
アレンは呆れたように言葉を述べた。
「あはは。第7王子という立場を理由にして、自由にさせてもらってます」
そう言えば、自由研究と称して、1ヶ月近く城を抜けてたもんね。今回だって、王子様自らが私をスカウトしに来たし……自由過ぎない?いーの?
「カトレア様は、ある程度成果を出しておられるので、王様も自由をお認めになっております」
「成果?」
「今回で言うと、紅の瞳の地位向上ですね。結果的に、優秀な人材の発掘に繋がりました」
城の中でも、奥に進んだ先。3階の突き当たりに、真ん中に大きな扉。その左右に、それよりも小さな扉が1つずつ。
その右の扉を、カトレアは開けた。
「ここがキリアの部屋です」
綺麗な部屋だが、中には普通のベッドと、テーブル、椅子しか無い。広さも、ケイ先生の家で用意された自室よりは広いが、驚く程じゃない。安心した。私の部屋まで豪華にされてたら、部屋なのに落ち着かないところだ。
「?これは何ですか?」
部屋の中に、また扉があって、キリアはカチャと、扉を開けた。
扉を開けた先は、自分達の部屋よりも大きく、豪華な内装が施された、どう見ても、特別な部屋。
「そこは僕の部屋です」
「カトレアの?!」
「カトレア様の専属魔法使いだからな。いつなんどきでも力になれるように、部屋も隣になっている」
ーーと言う事は、専属騎士であるアレンさんのお部屋は左なのかなーーって、そうじゃなくて!
「と!近すっ!なっ!」
「と?ちかす?な?」
隣?!近過ぎない?何で?と言おうとしたけど、テンパリ過ぎて上手く言葉が出ない。
いやいや落ち着け。前だって、カトレアは私の家に泊まった事あるじゃない。それと同じ。同じ。同じーー同じかなぁ?!
必死にマインドをかける。
「?あ、鍵はちゃんとかけれますよ!安心して下さい」
よく見れば、私の部屋の方の扉には、きちんと鍵がかけれるようになっていた。
「女性ですもんね。配慮は必要です」
「…あ、ありがとうございます」
変に狼狽えてしまったのが、今更、恥ずかしくなってきた。何でだろう?冒険中も一緒に寝泊まりしてたはずなのに、急に恥ずかしくなった!冒険中や、家の時は、兄さん達がいてくれたし……!ここに来るまでだって、アレンさんがいたし、そんなに意識したこと無かったのに!
「荷物の整理もあるでしょうし、少し休憩にしましょう。後で城の中も案内しますね」
そう言い残し、カトレアとアレンは、部屋から出た。
1人残された、新しい自分の部屋。
「……荷物、出そう」
見知らぬ部屋に1人でいると、もう、ケイ先生の家が懐かしくて、恋しくなって、困る。冒険で1ヶ月近く帰らなかった事もあるのに、心持ちが違うからかな?もう、家を出たんだもんね。
いつでも帰って来て良いとは言ってくれたけど、そんなに簡単に帰る訳にはいかない。せめて、私も、紅の瞳の地位向上に役立てるまでは!
クラ兄さんを初め、他の紅の瞳の持ち主達も、頑張っているって、カトレアは言っていた。
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