呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子

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それぞれの進む道

半年後

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 幻の花コトコリカの依頼から、半年ーー。

 キリアは、カトレアから託されたコトコリカを、家の外、日当たりの良い場所に埋め直し、小さな花壇を作った。
「♪」
 じょうろを使い、鼻歌を歌いながら水をあげる。

「上機嫌だな」
「ジュン兄さん!お帰りなさい」
 外から帰ってきたジュンは、パッパっと、服についていた水滴を払った。
「雨が降ってたの?」
「いや。魔物に水を使うやつがいただけ。雨は暫くごめんだぜ」
「あはは」

 雨天の山コリカで、これでもかって位びしょ濡れになりましたもんね。私も1年は雨を見たくない。

「ふわぁぁあ。おはよーキリアちゃん。ねー今日のご飯は何ぃ?」
 ガラララと、縁側の窓を開け、まさに今起きたかのようなボサボサな頭で欠伸をしながら、外に出て、キリアに尋ねた。
「飲兵衛師匠……人が働いてる間にぐーすか昼過ぎまで寝やがって、良い身分だな?!」
「うわっ!ジュン君もう帰って来てたんだ?!」
 ジュンの姿を確認するなり、部屋に隠れるケイ。
「くっそ!依頼が馬鹿みたいに増えたのに相変わらず師匠は働かねぇしよ!」

 そう。あれから、紅の魔法使いの評判はうなぎ登りに上昇し、依頼は格段と増えた。
 今では追い付かないからと、個別で対応したりしていて、ジュン兄さんは専ら魔物退治専門。人間に対する当たりは強いし、口が悪いのは変わっていないけど、腕は確かなのと、ほんの少しだけ態度が緩和して、喧嘩を売ってこない人間相手には、見張りがいなくてもやり取りが出来るようになった。

「もう変な依頼は受けなくてすむけどね」

 紅の瞳を罵倒する奴等は問答無用で出禁処置を行い、良質な依頼のみを受ける。前から悪質な依頼は受けなかったけど、今では完全に良質な依頼が多くなったから嬉しい。

「キリアちゃんは専ら回復依頼だよねー」
「そうですね」

 私の特殊魔法、回復の力も知れ渡り、依頼が来るようになった。先生曰く、『回復魔法なんて使える有能な魔法使いが今まで放置されてた事が有り得ないけどねー』との事。

「まぁ、もうそろそろ落ち着くと思うよー」
「くそ!あいつのせいでっ!」
「こらこら。カトレア君は紅の瞳の差別を怒涛の勢いで無くしてくれてる救世主だよ?そんな事言っちゃ駄目ーー☆」

 紅の魔法使いの依頼が増えた。それは、紅の瞳の差別が減った証。偏見が無くなり、良い評判が増え、たまに、石をぶつけて来るような人間もいるけど、本当に稀。
 それは、第3王子で有り、騎士団長であるラットが、国民に向かって高々と宣言した事が大きい。

 あれからも、事もあろうに王都でも、大々的に私達の事を賞賛してくれたらしいと、人間から聞いた。

『第7王子であられるカトレア様も、紅の瞳に命を救われたと明言されてるしね』
『あのカトレア様が、紅の魔法使いの皆さんをお褒めになるんだもの、間違いないわよね。平民である私達にもいつも優しくして下さって、成績も優秀。剣の腕も、ラット様に指導されて上達して来たと聞くし、本当に素敵な王子様よね』
『ホント。実際、カトレア様がおっしゃる通り、貴女は丁寧に怪我を治してくれるし……本当に助かったわ。ありがとうね』

 治療中、本当に普通に、お礼の言葉を述べられて、そのまま、世間話の1つ2つ交わす。
 怪我を治して、純粋に感謝されるのは、凄く嬉しいし、前までは、人間とこうやって話す事が無かったから、彼の話が耳に届く事もなかった。
 なのに、今はこうして、彼の活躍を、人づてに聞く事が出来る。

「酒も報酬でいっぱい貰ったしねー」
 幻の花コトコリカの報酬で、再度大量のお酒をGETしたケイ。
「師匠は仕事してねーだろ!このヒキニート!」
「ヒキニート?!どこでそんな言葉覚えたの?!」
 ジュンは、新品の高級な杖を手に入れた。

「キリアちゃんはまだ報酬貰って無いんだよね」
「はい。まだ何も思い付かなくて…」

 考えておいて。とは言われたけど、本当に私まで報酬を頂けるとは思っていなかったし、急に欲しいもの…と言われても、何も思い付かない。
 服も杖も食べ物もあるし、生きるのに困って無いし。←元・貴族だが、悲惨な扱いのせいで物欲無し。

「ゆっくり考えたらいーよ。もし何も思い付かなかったら、俺がかわりに貰ってあげてもいーし☆」
「おい!それは保護者として終わってんぞ!キリアのを奪うんじゃねー!」
 まだまだお酒が欲しいケイの貪欲な要求を、すかさずジュンが阻止する。
「まー本気は置いといて」
「本気かよ」
「クラ君の報酬には驚いたよねー」

 人間を好きでは無く、無関心なクラ兄さんが、報酬として望んだのは、騎士団での剣技の指導。
 元より、ここには魔法を教えてくれるケイ先生はいたけど、剣を教える人はいないから、クラ兄さんはずっと独学で技を磨いてきた。

『無理ならいーよ。どうせダメ元だし』
『……クラ』
『OKらしいですよ』
『どこからその答えが導き出せんだよ?!名前呼んだだけじゃねーか?!』
 クラの要望に、ラット通訳のカトレアが翻訳すると、ジュンは大きな声でツッコミを入れた。
 かくして、クラは紅い瞳を隠し、騎士団に入団。ラット騎士団長のもと、剣技の腕を磨いている。


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