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雨天の山コリカ
ラナン家55
しおりを挟む「てか、君はいいの?お兄さんに目をつけられて」
実の兄とは言え、ユーリも、第3とか第7で差別していたし、王族の兄弟関係は複雑そうだと、クラは思った。
「邪魔さえしなければ、きっと大丈夫ですよ。それよりも、キリアは大丈夫ですか?」
「私?ーーああ」
前の家族である、ユーリの事を心配されているのだと、理解する。
「大丈夫。ちょっと……まだ怖いけど、過去の人だし、今は兄さん達が、本当の家族だもん」
それに、正直申し訳無いけど、今の私は、ユーリさんよりも強い自信がある。ユーリさん、凄い弱そう。私でも簡単に倒せちゃいそうな気がする。
「キリア……安心して、またあの無能肌荒れ男が、キリアに余計な事をしようとしたらーーー」
「ーーーその時は、俺等が責任を持って、この世から消し去ってやる」
全身から、怒りと殺意が入り交じった物が溢れてる。
「止めて!取り敢えず、命を奪うのは止めよう?!」
キリアは、息の根が合った双子の兄の怖い発言を必死で諌めた。
「てか、ユーリさんと知り合いなんだね、カトレア」
「はい。彼ーーラナン家は代々、王家と繋がりのある貴族の1つで、彼はその長男として、騎士団の一員に選ばれたんです。ですから、僕とも何度か城で対面した事があります」
私は家で軟禁されてたから、ラナン家の事何も知らなかったけど、貴族の一員だったんだ…。でも、だからってカトレアにあんな口聞いていいの?それに、勝手に単独行動して、迷惑かけて……駄目駄目じゃない?
キリアは、元・家族の情けない体たらくに、心底呆れ返った。
結局、ユーリやラットの出現で時間を食ってしまった事も有り、一旦、今日は拠点場所まで戻る事になった。
「丁度雨も降って来たしね」
ザーザーと、一瞬で雨が降り注ぐ。
平地から離れ、山を下って行くと、クラとジュンの瞳の色が、紅から薄い青に戻った。
「あれ?兄さん達、瞳の色戻ってるよ」
「ほんとだ…」
「さっきの場所、何か変な感じしてたから、それが原因かもな」
詳しくは分からないが、強い力を感じたのは、確かだった。
「……強い力。ですか」
3人の話を聞き、1人、カトレアは、先程までいた平地の場所を見上げた。
*****
3日後ーーー晴天、午前。
「やっと雨が上がりましたね」
あれから2日間。捜索どころでは無い土砂降りの雨が降り続き、拠点となる空洞で缶詰め状態でいたが、やっと雨が上がった。
カトレアは、空洞から外に出ると、久しぶりの日光を、全身で浴びた。
「まだ依頼ほぼ手付かずじゃねーか…」
ゲンナリするジュン。
雨天の森コリカに来てから、雨に妨害されつつ、魔物との戦闘に明け暮れる日々で、肝心の幻の花コトコリカの捜索には一切辿り着けていない。
「見付けなくても良いって言ってたけど、具体的にどうゆうとこ探せばいーの?頂上?」
「そうですね。頂上が1番見付かる可能性が高いとされていますので、頂上は絶対ですね。後は、崖付近や、あの、平地の場所も探索してみたいですね」
「平地の場所?あの、気分が悪くなる所?」
「はい。皆さんが感じてる力が、幻の花コトコリカなら良いなと思いまして」
依頼内容を確認するクラに、それに答えるカトレア。
幻の花コトコリカって、不思議な力を発してる感じなの?そりゃあ、数百年の間見付かって無いんだから、どんな物なのかは誰も分からないけど……そんな不思議な力を発してるなら、誰でも簡単に見付かりそうだけど。
「僕には、皆さんの言う不思議な力は感じません。気分も悪くなりません」
「魔法使いにだけ感じるとか?」
「そうかもしれませんね」
前回と同じ様に、頂上を目指し、山を登る。
ぬかるんだ山道は歩き辛いが、こればかりは致し方ない。魔物を退治しつつ、順調に登る。
「……魔物の数、減って来てるね」
クラは、木々から落ちる水飛沫を手で払った。
1時間に4回の戦闘ペースは前と変わらないが、相対する魔物の数が減った。
「頂上付近はまだ多いのかもだけど、下は少しずつ落ち着いてるんじゃない?」
何度でも言うが、1時間に4回のペースでの魔物の戦闘は、多い。だが、感覚の麻痺してるここ雨天の山コリカでは、少なく感じる。
「紅の魔法使いさん達だけで無く、ラット兄様の騎士団もいますからね。討伐が上手く進んでいるんだと思います」
上手い具合に、騎士団と紅の魔法使いが、山の反対の両端に別れて登り、戦闘を繰り広げ、魔物の数を減らし、雨が落ち着いてきているのも手伝い、増加よりも、減少が勝ったのだろう。
「ラット様も、頂上を目指してるのかな?」
人間に敬意も何も持っていないクラだが、表面上、揉め事が無い様に当たり障りなくやり過ごす(紅い瞳を馬鹿にしない奴限定)タイプなので、流石に王子に対して呼び捨ては不味いと判断し、様と付けて呼ぶ事にしたらしい。
但し、同じ王子でも、カトレアは除く。
「どうでしょう?どちらかと言うと、ラット兄様は街が襲われるのを危惧しているので、街に近い中区層辺りで活動していると思いますけど」
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