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雨天の山コリカ
ラット
しおりを挟む「なっ!五月蝿い!元はと言えば、お前がいなくなってから、おかしくなったんだ!」
「へ?」
肌荒れを私の性にされても……凄い迷惑だし、何より、私を追い出したのは、そっちね。
「お前がいなくなってからというもの、実は食事はお前が用意してたからって、ご飯は不味くなったし」
そうでしょうね。あの家は使用人も私を見下してましたからね。貴方達の食事も、実は私が全て用意してましたよ。健康等も考えた肌や髪に良い食事をね!
「家の中も埃塗れになるし、汚いし!」
掃除も全てやらされてましたからね。前世の家政婦としての知識をフル活用して、色々綺麗にしてました!
「全部お前の性なんだよ!呪われてるくせに、優秀に働いてたなんて思う訳ねーだろ!」
言い掛かりも良い所です。何度も言いますが、追い出したのはそちらなんですよ。今では追い出された事に感謝してます。ありがとうございます。
「ユーリ、もう止めましょう。同じ事の繰り返しですよ。それより、ユーリ1人では無いでしょう?ラット兄様はどこにいるんですか?」
懲りもせずにキリアに対して乱暴な口をきくユーリに呆れつつ、カトレアは誰かを探して、辺りを見渡した。
「にーー兄様?」
その誰かを指す言葉を、キリアは聞き逃さなかった。
「はい。確か、騎士団長が来ていると聞いています」
カトレアは、この国の第7王子である。
そんなカトレアの、兄ーーーそれは、即ちーーー
「まさかーー騎士団長って、カトレアのお兄さんなの?!」
「はい。そうですよ。コルオーネ=アクア=ラット。この国の第3王子で、騎士団長を務めている、僕の兄様です」
(嘘でしょおーーー?!?!)
と、キリアは内心叫んだ。
第3王子?!あれ?王子様って騎士団長とかするんだ?するか!騎士団長って凄いもんね!王子様が務めててもおかしく無いよね?!
カトレアが何も教えてくれないから、まさか王子様だとは思っておらず、驚愕する。
カトレア以外の王族と会った事なんて(当然)無いけど、カトレアが特殊なだけで、普通は、こんなフランクじゃないよね?紅の瞳にも会っていいの?!凄い怖くなって来たんだけどーー!!
「ラット様に何をする気だ?!いいか?!ラット様はお前なんかと違って、第3位の王位継承権で、この国の騎士団長を立派に務めておられるお方だ!フラフラ渡り歩いてるお前とは、地位が違うんだよ!」
この人、本当に地位とかしか考えて無いんだな…。
「お前マジでうぜぇな、無能肌荒れ男」
「人を見る目も無ければ、ぎゃーぎゃー喚き散らすしか出来ない無能肌荒れ男」
「おい!その呼び方絶対止めろよ!」
「ああ?文句あんのか?」
「ひっ!」
名前を覚える気の無い相手に対して、呼び名を付ける習性のある2人は、ユーリを無能肌荒れ男と命名したようだ。
「ね、ねぇカトレア!とりあえず先に進もう!それか、一旦戻る?」
ユーリに時間を取られ、気付けば、結構良い時間が経過しているし、雨もまた降り出してしまいそうな天気になっている。
「どうしてですか?折角ですから、ラット兄様に皆さんの事を紹介したかったのですが…」
「いや、止めとかない?!」
キリアは紅い瞳を変えれないし、兄達2人も、ここに来てから、強制的に紅い瞳に戻っている。
王子様相手に、呪われてるとされる紅い瞳の持ち主が喋りかけてもいいものなの?カトレアはもう別として!
「ふん!誰がお前等にラット様の居場所なんて教えるか!身の程を知れ!お前等みたいな底辺が気軽に会える相手じゃねーんだよ!」
言われてる内容には同意するけど、余計なお世話!わざわざ言われなくても分かってます!てか、ほんと懲りませんね。また兄さん達に殺されたいんですか?
「ーーーまさかですが、ユーリ。また独断専行で、ラット兄様の許可を得ず行動していますか?」
カトレアは、怪訝そうな表情を浮かべ、ユーリに質問した。
カトレアやアレンからの話で、雨天の山コリカで起きた魔物の大量発生を対処する為、騎士団長が隊を率いて、討伐作戦を行うと聞いていた。
詳しくは分からないけど、ユーリさんも、その騎士団長ーーカトレアのお兄さんと一緒に、ここに来たのだろう。
「ああ?俺は、いち早くこの任務を終わらせる為に、行動しているだけだ!」
「……統率を乱す行為は、隊にとって危険です。即、止めて下さい」
「俺に指図するな!第7王子の出来損ないのクセに!」
完全にカトレアを見下しているユーリは、彼の言葉を即、切り捨てた。
「出来損ないでも何でも結構なので、ラット兄様に迷惑をかけるのは止めて下さい」
「俺のどこが迷惑をかけてると言うんだ?!寧ろ、俺は、ラット様に貢献している!こうしてここにいるのも、魔物一斉討伐作戦の準備の為だ!!」
(魔物一斉討伐作戦??)
ユーリは、その魔物一斉討伐作戦とやらを実行する為に、騎士団長達から離れて、単身1人で、ここにやって来たらしい。
そして、私達に偶然会い、ボコボコにしてやられたーーと。
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