53 / 96
雨天の山コリカ
ラット
しおりを挟む「なっ!五月蝿い!元はと言えば、お前がいなくなってから、おかしくなったんだ!」
「へ?」
肌荒れを私の性にされても……凄い迷惑だし、何より、私を追い出したのは、そっちね。
「お前がいなくなってからというもの、実は食事はお前が用意してたからって、ご飯は不味くなったし」
そうでしょうね。あの家は使用人も私を見下してましたからね。貴方達の食事も、実は私が全て用意してましたよ。健康等も考えた肌や髪に良い食事をね!
「家の中も埃塗れになるし、汚いし!」
掃除も全てやらされてましたからね。前世の家政婦としての知識をフル活用して、色々綺麗にしてました!
「全部お前の性なんだよ!呪われてるくせに、優秀に働いてたなんて思う訳ねーだろ!」
言い掛かりも良い所です。何度も言いますが、追い出したのはそちらなんですよ。今では追い出された事に感謝してます。ありがとうございます。
「ユーリ、もう止めましょう。同じ事の繰り返しですよ。それより、ユーリ1人では無いでしょう?ラット兄様はどこにいるんですか?」
懲りもせずにキリアに対して乱暴な口をきくユーリに呆れつつ、カトレアは誰かを探して、辺りを見渡した。
「にーー兄様?」
その誰かを指す言葉を、キリアは聞き逃さなかった。
「はい。確か、騎士団長が来ていると聞いています」
カトレアは、この国の第7王子である。
そんなカトレアの、兄ーーーそれは、即ちーーー
「まさかーー騎士団長って、カトレアのお兄さんなの?!」
「はい。そうですよ。コルオーネ=アクア=ラット。この国の第3王子で、騎士団長を務めている、僕の兄様です」
(嘘でしょおーーー?!?!)
と、キリアは内心叫んだ。
第3王子?!あれ?王子様って騎士団長とかするんだ?するか!騎士団長って凄いもんね!王子様が務めててもおかしく無いよね?!
カトレアが何も教えてくれないから、まさか王子様だとは思っておらず、驚愕する。
カトレア以外の王族と会った事なんて(当然)無いけど、カトレアが特殊なだけで、普通は、こんなフランクじゃないよね?紅の瞳にも会っていいの?!凄い怖くなって来たんだけどーー!!
「ラット様に何をする気だ?!いいか?!ラット様はお前なんかと違って、第3位の王位継承権で、この国の騎士団長を立派に務めておられるお方だ!フラフラ渡り歩いてるお前とは、地位が違うんだよ!」
この人、本当に地位とかしか考えて無いんだな…。
「お前マジでうぜぇな、無能肌荒れ男」
「人を見る目も無ければ、ぎゃーぎゃー喚き散らすしか出来ない無能肌荒れ男」
「おい!その呼び方絶対止めろよ!」
「ああ?文句あんのか?」
「ひっ!」
名前を覚える気の無い相手に対して、呼び名を付ける習性のある2人は、ユーリを無能肌荒れ男と命名したようだ。
「ね、ねぇカトレア!とりあえず先に進もう!それか、一旦戻る?」
ユーリに時間を取られ、気付けば、結構良い時間が経過しているし、雨もまた降り出してしまいそうな天気になっている。
「どうしてですか?折角ですから、ラット兄様に皆さんの事を紹介したかったのですが…」
「いや、止めとかない?!」
キリアは紅い瞳を変えれないし、兄達2人も、ここに来てから、強制的に紅い瞳に戻っている。
王子様相手に、呪われてるとされる紅い瞳の持ち主が喋りかけてもいいものなの?カトレアはもう別として!
「ふん!誰がお前等にラット様の居場所なんて教えるか!身の程を知れ!お前等みたいな底辺が気軽に会える相手じゃねーんだよ!」
言われてる内容には同意するけど、余計なお世話!わざわざ言われなくても分かってます!てか、ほんと懲りませんね。また兄さん達に殺されたいんですか?
「ーーーまさかですが、ユーリ。また独断専行で、ラット兄様の許可を得ず行動していますか?」
カトレアは、怪訝そうな表情を浮かべ、ユーリに質問した。
カトレアやアレンからの話で、雨天の山コリカで起きた魔物の大量発生を対処する為、騎士団長が隊を率いて、討伐作戦を行うと聞いていた。
詳しくは分からないけど、ユーリさんも、その騎士団長ーーカトレアのお兄さんと一緒に、ここに来たのだろう。
「ああ?俺は、いち早くこの任務を終わらせる為に、行動しているだけだ!」
「……統率を乱す行為は、隊にとって危険です。即、止めて下さい」
「俺に指図するな!第7王子の出来損ないのクセに!」
完全にカトレアを見下しているユーリは、彼の言葉を即、切り捨てた。
「出来損ないでも何でも結構なので、ラット兄様に迷惑をかけるのは止めて下さい」
「俺のどこが迷惑をかけてると言うんだ?!寧ろ、俺は、ラット様に貢献している!こうしてここにいるのも、魔物一斉討伐作戦の準備の為だ!!」
(魔物一斉討伐作戦??)
ユーリは、その魔物一斉討伐作戦とやらを実行する為に、騎士団長達から離れて、単身1人で、ここにやって来たらしい。
そして、私達に偶然会い、ボコボコにしてやられたーーと。
66
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる