呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子

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雨天の山コリカ

自由研究

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 カトレアのお願いに戸惑っていると、アレンが横から、呆れながら言葉を発した。
「公共の場では控えて頂きたいのが本音ですが、呼び捨てで構いませんよ。カトレア様はよく身分を隠して出歩かれているので、呼び捨てで名前を呼ぶ方は他にもいらっしゃいますから」
 もっと本音を言えば、そもそもが身分を隠して出歩いて欲しく無いし、呼び捨てもタメ口も止めて欲しい。が彼の本音だろうが、もう既に色々諦めてしまっているのが分かる。

「…わ、分かりました。カトレア…」
「ありがとうございますキリア。とても嬉しいです」

 キラキラな王子様スマイルを向けられ、とても眩しい。
 カトレアは、3年ぶりに会うとは思えないように、まるで昨日まで普通に会っていたかのように、自然にキリアに話しかける。
「ところで……あの、依頼って?」
 恐る恐る、キリアは尋ねた。

 前回のカトレアの依頼は、彼の護衛だった。紅の魔法使いに護衛を頼む事も稀有だったのに、蓋を開けてみれば、国の王子様の護衛で、襲って来たボンボン貴族の阿呆テスト男(命名ケイ)の従者達が凄く強くて、とても苦戦した。
 依頼が危険なのはいつもの事だけど、本当に、下手すれば死んでたと思う。
 そんなカトレアの依頼なので、身構えてしまうのは当然。

「自由研究を手伝って欲しくて」

 ーーーは?自由研究??

 一瞬、意味が分からなくて、キリアは助け舟にアレンを見たが、アレンは目を閉じ、視線を合わせないようにしていた。

 自由研究?自由研究って、確か、小学校とか中学校とかで、夏休みの宿題とかに出て来るやつの事ですか?それを、手伝って欲しい??

「自由研究……それは、あの、何か、国の為の重要な研究とかですか?」
「いえ。ただの学校の宿題です」
 念の為に確認してみたが、予想通りの答えが返って来た。

 学校の宿題?ただの学校の宿題を紅の魔法使いに依頼するの??それは大丈夫なのかな??思ってるのと違って、凄い平和なのが来たけど、それはそれで凄い戸惑うんだけどーーー!!!

 困惑していると、またも、アレンから補足が入った。
「心中お察しするが、カトレア様たっての要望なんだ。報酬は弾むので、引き受けてくれないだろうか?」

 前回の報酬も、ケイ先生の要望で、国中の美味しいお酒を払ってくれましたったけ……。兄さん達は、折角の大物の報酬を酒になんて使いやがって。と、ブチ切れてましたけど……。

「多分……いえ、絶対大丈夫だと思います。から、この依頼、紅の魔法使いが引き受けます…よ」

 報酬の良さにケイ先生はご満悦だったし、私達のことを馬鹿にも見下したりもしない依頼主。断る理由は無い。無い。けど、紅の魔法使いに学校の宿題を手伝ってって依頼に来る人は初めてだよ。逆に大丈夫?って心配になる。

「良かった」
「えっと、その自由研究って、具体的に何するの?」
「花の採取をしたいんです。とても珍しい花があって、危険な場所なのですが、紅の魔法使いの皆さんなら、問題無いと思います」

 成程。依頼するって事は、ただ工作するとかじゃないんですね。危険と聞いて安心するのもおかしな話ですけど、安心しました。

「危険って……」
「山の上にあるんですが、崖も多くて、雨が頻繁に振る地域で、地面がぬかるんでいて、とても危ないです。今回も、命の危険が伴う大変な依頼だと思います」

 真剣な表情を浮かべるカトレアに、息を飲む。
「なら、我々騎士団にお任せ頂ければとは思うのですが……」
 不満げなアレンは、はぁ。と大きく息を吐くと、キリアに視線を向け、カトレアに代わり、詳しく説明した。
「花の名前はコトコリカ。山の名前は雨天の山コリカと言う。確かに魔物もいて危険な区域だが、魔法使いなら空も飛べると思うし、崖から落ちても危険は無いだろう。それに、コリカには今、我等の騎士団長が隊を率いて、魔物を退治するべく動いている」
「騎士…団長」
「大変お強いお方だ。君達が着く頃には討伐作戦も終わり、魔物の数も減っているから、危険は少ないだろう」

 山は依頼で数回、魔物退治に行った事あるけど、確かに、魔法で飛べるから、落ちても大丈夫だけど……怖いのは怖いんだよ?飛ぶ!って思って飛ぶのと、落ちるのは違うからね。呪文間に合わなきゃ死ぬんだし。
 でも、魔物が少ないのは良いね。
 うん。総合的に見ても、以前よりは平和そう?

「分かりました。その花ーーコトコリカを採取して来たらいいんですね?」
「え?違うよ。僕も行くよ」
「ーーーえ?」
「自分の宿題なんだから、僕が行かないと」

 それってーーーまた護衛も含まれるって事?コトコリカの採取+カトレアの護衛?

「あーーぶ、ないので、お城で待って頂ければとー」
 チラリと、アレンを見ると、わざとらしく視線を背けている。
「大丈夫。紅の魔法使いの皆さんなら、無事に僕も連れて行ってくれると思います!」

 アレンが視線を背けている理由が分かった。
 カトレアの無理難題を、きっと、アレンは何度も止めたのだろう。騎士団が花を取りに行く。から始まり、騎士団がカトレアと一緒に同行するーーそれ等を断り、カトレアは紅の魔法使いを選んだのだ。

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