39 / 96
雨天の山コリカ
査定場
しおりを挟む「花を摘む時に汚しちゃったの」
兄達と合流する前に、水の魔法で泥を落とし、風の魔法で乾かした。でも、衣類の汚れまでは完全に落とせなくて、考えていた嘘の理由を伝える。
「花を摘む時。ね」
「う、うん!」
クラ兄さんは勘が良いから、いつも誤魔化したりする時はドキドキする。
「早く戻ろーぜ」
ジュンはそう言うと、この村での紅の森を繋ぐ転送場所となっている1本の大きな木の幹に足を乗せた。そのまま空間魔法が発動し、魔力の発動とともに消える体。
「家に帰ったら、その服、着替えようね」
「うん」
キリアとクラも、ジュンの後を追って、ワープした。
あれから3年ーーー
私は15歳になって、兄さん達は19歳。身長も伸びたし、魔法も、もっと使えるようになったけど、相変わらず、私は紅の瞳を変える事は出来ない。
変わった事、変わらない事、色々あるけど、1つ大きな変化は、私も、仕事に行けるようになった事。
カトレアさんの依頼は、兄さん達2人の力を見直すキッカケになったみたいで、まだまだ自分の力が未熟だと思い知り、兄さん達はもっと、魔法や剣技の訓練に励むようになった。
更に、私がいなかったら、依頼が達成出来なかったと、力を認めてくれて、依頼の同行を許してくれるようになった。
(お陰様で、引きこもり生活から脱出出来ました)
兄さん達は元から綺麗な顔立ちしてたけど、大人びて、もっと格好良くなった。ケイ先生はエルフだからか、何も変わらない。
もう1つ大きな変化は、さっきも上げた、紅の瞳の差別についてーーー。
カトレアーーー第7王子を救った話は、国中を駆け巡り、生じて、紅の瞳の評価を上げる結果となった。どれだけ依頼をこなしても、ここまで評価を一気に上げる事は、きっと不可能だった。
『計算でしょ?カトレアは、紅の瞳の地位の向上の為に、自分の命を懸けたんだよ』
1年経った頃位に、クラ兄さんがそう教えてくれた。
第七王子カトレアを救ったとなれば、それは間違い無く、大きな衝撃となり、噂が広がり、紅の瞳の地位の向上に繋がる。
だから、彼はギルドに助けを求めず、紅の魔法使いに助けを求めて来た。それで、自分の命が危険に脅かされようとも、私達の力を信じ、自分の命を懸けた。
紅の瞳の差別を無くす為にーーー。
それが事実なら、大成功だ。
紅の瞳のイメージは、昔と比べて、格段と良くなった。依頼だって、最低な依頼も昔と変わらず来るけど、マトモな依頼も増えた。
変わらず、私達を罵倒する人もいて、その度に、心を痛めるけどーーー
『僕は、紅の瞳の差別を無くしたいと思っています』
『私と……私と一緒に、紅の瞳の差別を無くすのを……手伝ってよ…!』
カトレアと交わした約束を思い出して、前を向く。
いつか必ず、彼は、私達の願いが叶うと言った。私は、それを信じたい。
(……私達のために、命を懸けてくれたんだもの……同士として、私も、頑張らないと)
私に出来る事は、こうして、依頼をこなして、1歩ずつ、印象を上げる事しか出来ないけど、少しでも、紅の瞳に持つイメージを変えられたら、嬉しいーーー
*****
キリアは、1人、夜の紅の森にいた。
最近は昼間の依頼も増えて、昼に活動する事が多くなったけど、基本、紅の魔法使いが夜行性なのは変わらない。
依頼の受付は変わらず夜だし、依頼が無い日は、皆、夜起きて過ごしてる。今日は朝方から花畑の依頼があって、今は兄さん達は寝てるけど、依頼に行かないケイ先生は、ずっと夜起きて朝から昼過ぎまで寝る生活を送ってる。
(依頼も昔と比べて増えたのに、ケイ先生は絶対に外に行かないもんね)
前迄は依頼主が屑で、断る依頼も多かったけど、最近は真っ当な依頼が来るようになった。
それでも、ケイ先生が依頼の受付を許可される事は無い。何故なら、折角紅の瞳の印象が良くなったのに、また、ケイ先生が暴走して印象を落とされるのは避けたいからーー!!!
なら、『魔物の討伐くらいは行けよ!』と、1回ジュン兄さんにブチ切れされてたけど、ケイ先生は『えー、面倒だし、い・や☆』と笑顔で断っていた。
結果、依頼の受付も出来ず、依頼もこなせず、ケイ先生は家の中でずっと酒を飲んでは寝るぐーたら生活を送っている。
(ある意味羨ましいけど、少しは外に出たくならないのかな?)
色々考え事をしながら、キリアは、依頼を受ける場所ーー名称《査定場》である、ケイ先生の作った空間に入った。
因みに名前は、私が付けました。あそこ。とか、ここ。とか、曖昧に呼ぶ事が多かったので、名前を付けた方が分かりやすい!と、許可を頂きました。
依頼を受けるか受けないか、査定する場所なので、査定場。安直ですよね、すみません。
依頼の受付だけなら、危険は少ないので、最近は私1人で行く事も増えた。
ジュン兄さんはケイ先生よりマシだけど、人間嫌いが発動して、良い依頼主も(口)攻撃してしまう事があるので、魔力の量が足りず、ケイ先生の道具を使えないお目付け役のクラ兄さんとペア。
「ちょっと早く着きすぎちゃったかな」
画面を見ても、まだ依頼主の姿は無い。キリアは、空洞に備わっている椅子に、腰掛けた。
62
お気に入りに追加
283
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
世界を救いし聖女は、聖女を止め、普通の村娘になり、普通の生活をし、普通の恋愛をし、普通に生きていく事を望みます!
光子
恋愛
私の名前は、リーシャ=ルド=マルリレーナ。
前職 聖女。
国を救った聖女として、王子様と結婚し、優雅なお城で暮らすはずでしたーーーが、
聖女としての役割を果たし終えた今、私は、私自身で生活を送る、普通の生活がしたいと、心より思いました!
だから私はーーー聖女から村娘に転職して、自分の事は自分で出来て、常に傍に付きっ切りでお世話をする人達のいない生活をして、普通に恋愛をして、好きな人と結婚するのを夢見る、普通の女の子に、今日からなります!!!
聖女として身の回りの事を一切せず生きてきた生活能力皆無のリーシャが、器用で優しい生活能力抜群の少年イマルに一途に恋しつつ、優しい村人達に囲まれ、成長していく物語ーー。
「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜
望月かれん
ファンタジー
中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。
戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。
暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。
疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。
なんと、ぬいぐるみが喋っていた。
しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。
天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。
※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる