36 / 96
大切な出会い
呆れる悪足掻き
しおりを挟む「すみません。身分を隠して入学していました」
「はぁーー?!?」
アレンに守られながら、軽く謝罪の言葉を口にする。
「カトレア様……ですから、王子である事をきちんと公言し、留学した方が良いと申したのです」
「すみません。でも、まさか命を狙われる事になるとは思わなかったので……」
普通に入学してたら、普通は、命を狙われないのだから、当然。ニケみたいな奴がいた事がおかしい。
「僕は第7王子だから、結構自由に生活させて貰ってるんです」
「嘘だろ……お前が……王子!知っていたら、俺だってー!!」
俺だって、命を狙おうとしなかった。が正解ですかね。そうですよね。流石に他国の王子様に手を出したとあれば、大問題ですよね。最悪、国によっては、物凄く重い重い刑になるのではーー?
「帰り、魔物に襲われたと聞いた時は、本当に……心臓が止まる所でした」
「あはは。心配をかけてしまってすみません」
「笑い事じゃありません!従者達を逃がして、自分が囮になるだなんて……何を考えているのか!」
魔物に襲われて私が助けた時に1人だったのは、従者達を逃がしたからだったみたい。
「だから私がお迎えに上がるとーー!」
「アレンは任務の途中だったのでしょう?なら、そちらを優先して頂かないと」
「カトレア様はこの国の第7といえど、王子なんですよ?!もう少し自覚をお持ち下さい!」
カトレアがアレンに怒涛に責められている中、ニケは騎士達に手錠をかけられた。
「待ってくれ!これは何かの間違いだ!俺様はこいつが王子だったなんて知らなかったんだ!こいつが黙ってたのが悪いんだ!俺様を貶める為にわざと教えなかったんだ!」
往生際悪く、更には意味の分からない言い分を喚き散らすニケ。
「貶める?何の為にだ?」
「それは!俺様が優秀だから、目障りでーー!」
「カトレア様は貴様を相手にもしていない。実際、お前がカトレア様の何の脅威になった?成績も勝てず、周りの信頼も得られず、親の財力と権力で従者達を使っていただけだ」
カトレアを守る騎士のアレンは、まるでゴミを見るような目で、ニケを睨み付けた。
「っ!ーーそうだ!俺様は貴族の息子だぞ?!俺様に何かあれば、父上が許さないぞ!!」
この後に及んで、父親の権力を振りかざすニケに、心底呆れてしまう。
「その父上と貴様の国には、我が国から正式に抗議しよう。我等の国の王子の命を脅かしたとしてな」
「だから、父上がーー!!」
「自覚しろ。貴様が唯一、誇れていたその父親の権力ですら、カトレア様には敵わないと。カトレア様は、貴様等の国よりも遥かに巨大な国の王子なのだからな」
「そんーーっなーー」
成績も負け、教師の信頼も、他生徒達からの人望も負けていたニケにとって、唯一勝てていたのが、親の権力であり、貴族という身分だった。
だが、それすらも、本来のカトレアの身分には敵わない。
「身分がどうであれ、誰かの命を脅かすその行為そのものが、許される物では無い。しっかり反省して下さいね」
騎士達に連行されるニケの背中に向かい、カトレアは最後に言葉をかけたーーー
「はっ!」
怒涛な展開にぽかんと呆けていたが、気付けば、周りを人間に囲まれている。
(こ…怖い…!)
騎士達の中には、冷たい視線や、警戒しているのか、睨み付けてくる人もいた。人数が圧倒的に多かったとしても、ニケ達を一瞬で一網打尽にした人達で、強いのは明白。
(な…何?私も、カトレアさんの命を狙ってたと思われてる…?怖い…!何かされるの…?!)
「キリア」
怖くて、フードを深く被り直し、俯いていると、近くに来たカトレアが、キリアの被ったフードを外した。
「命懸けで僕を守って下さって、ありがとうございました」
「え?いえ、その…依頼、だし…」
「はい。とても助かりました。僕の命が救われたのは、貴女達、紅の魔法使いのお陰です」
満面の笑みを浮かべながら、カトレアはキリアに礼を述べ、カトレアに言葉に、周りの騎士達からざわめきが起こった。
「救った…?紅の瞳が…?」
「あれだろ、紅の瞳って呪われてるってゆうーー」
喧騒の中から聴こえる声。
「ーーーキリア。と言うのか?」
「!は、はい…!」
様子を見ていたアレンが、すぐ近くまで来て、キリアを見下ろした。一瞬しか剣さばきを見ていないが、騎士達の中でも群を抜いて強いと、直ぐに分かった。
何を言われ、何かをされるのか?!と、警戒して体を強ばらせていたキリアに、アレンは、膝を付き、頭を下げた。
「カトレア様の命を救って頂けた事、心より感謝する」
「えーー」
アレンが頭を下げ、礼を述べた事で、周りの騎士達もはっ!と気付いたように、次々と頭を下げ出した。
「ありがとうございました!」
「カトレア様をお救い頂き、なんとお礼を言ったらいいかーー!!」
「え?え?え?」
一斉にお礼を言われ、戸惑うキリア。
何なに何なに何なに?!お礼?!人間が私に?!国の騎士さんが?!有り得ない!何で?!助けて兄さん達ーーーって、そうだ!
72
お気に入りに追加
293
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる