30 / 96
大切な出会い
命の恩人
しおりを挟む何度も言いますが、カトレアさんは分かるよ?!依頼主だし、護衛対象だし、守られて当然!でも、私は違うのに!
「私も寝ずの番出来る!」
最悪、1人で魔物と戦っちゃ駄目って言うなら、皆を起こせば良いんでしょ?それなら出来る!問題無い!
「駄目だよ。まだ子供なのに」
「兄さん達が仕事デビューしたのは9歳の時でしょ?!私、もう12歳だよ!」
それに比べれば、遅いくらい!
「五月蝿い、執拗い」
「ジュン兄さん、いっつもそれで終わらせようとする!」
言い合いが面倒臭いのか、会話を無理矢理終わらせ、ジュンは空間魔法でしまって置いた荷物を次から次へと出した。
「クラ兄さん、お願い!私も何か役に立ちたい!」
懸命に訴えてみるが、クラはニコニコと笑顔を崩さず、先程ジュンが出した荷物、鍋やフラインパンをキリアに手渡した。
「食材、狩ってくるから、料理お願いね」
「わーー」
「俺等は料理出来ねーんだから、適材適所だろ。それに、カトレアを1人にすんのか?全員で行ったらヤバいだろ」
私も行く!の言葉を言う前に、先手で拒否される。
悔しいけど、今回はジュン兄さんの言う事も一理ある。警護対象であるカトレアさんを1人にするのは良くない!良くないけど、残るのが私である必要は無い!絶対!こんな崖の場所だから見付からないって思って、私をここに残す気だ!
本格的に何も危険な事をさせる気が無い兄2人を、キリアは睨み付けたが、兄2人はそれをスルーした。
キリア、カトレアを残し、兄2人は食材を調達する為に、野宿場所となった崖から離れた。
このままでは、きっと寝ずの番もさせてくれない。
キリアは何とか出来ないかと思考を張り巡らせるが、上手い方法が何も思い付かなかった。
(うう……このままじゃ、本当にただついてきただけになっちゃう……)
そしてまた、この依頼が終わった後、仕事に参加させてくれなくなるのが目に見えて分かる。
「キリアは、お兄さん達に愛されているんですね」
一緒に残ったカトレアは、キリア達のやり取りを見て、思った感想を述べたのだろう。
「……それは、凄く、嬉しい……よ」
家族に愛されて育たなかった私にとって、今世、初めて優しくしてくれた、私の新しい家族だと思ってる。
「でも!兄さん達は、何も分かってくれてない…!」
私は、兄さん達の為にも、紅の瞳の偏見を、少しでも無くしたい!その為には、私も、仕事をして、人の役に立って、紅い瞳の印象を良くする必要がある!てか、そんな大きな話じゃなくても、普通に仕事したい!ずっとおんぶにだっこは嫌なの!
「過保護過ぎるの……私だって、魔法使いになったんだもの」
一生懸命学んだ。兄さん達の力になりたくて。
でも、何もさせてくれない、守られているだけの環境は、私の気持ちを全部否定されているようで、とても悲しい。
「キリアも、お兄さん達が大好きなんですね」
「……うん」
優しく話を聞いてくれる、その眼差しに甘えて、つい、身の上話をしてしまって、何だか恥ずかしくなって、キリアはカトレアから視線を外した。
薪を並べて、魔法で火をつける。
パチパチと揺らぐ炎越しに、カトレアに気付かれないように、彼に視線を戻した。
(人間なのに……変な人)
紅い瞳の私を、真っ直ぐに優しく見つめてくれる。人間と触れ合う事が怖くなっていたのに、今は、この人なら怖くない。
「……紅い瞳が、怖く無いの?」
初めて出会った時から、カトレアに紅い瞳の差別は感じなかった。それどころか、私の瞳を見て、綺麗。とすら言った。
「怖くありません」
ハッキリと答えてくれる。
「何故?」
人間は、紅い瞳を、呪われていると、蔑む。何もしていてなくても、ただそこにいるだけで、畏怖や軽蔑の対象になる。
「何故、とは?キリアは、何か悪い事をしましたか?」
「し、してないよ!」
「なら、怖くありません。何もしていない人を恐れる必要は無いでしょう?」
その言葉に嘘偽りは感じられない。
「とは言っても、そう思ってしまうのは、それだけ、僕達に酷い言葉や態度を取られていたとゆう証ですよね。本当にすみません…」
「カトレアさんが謝る必要無いよ!」
カトレアの瞳に、悲しみの色が映るのを、慌ててキリアは止めた。
「……僕、幼い頃に、紅の目をしたお姉さんに、命を救われた事があるんです」
「!そーなの?」
私達が初めて会った紅の瞳じゃないんだと、キリアは驚いた。
「はい。だから、キリアにも命を助けて頂いたので、これで紅い瞳をした人に助けられたのは、2回目になりますーーー僕にとって、紅の瞳はーーー貴女の瞳は、綺麗で、純粋な、敬愛する瞳です」
「!」
まだ12歳とはいえ、可愛くて綺麗な容姿端麗の男の子からこんな事を言われたら、恥ずかしくて顔が真っ赤に染まる。
幸いな事に、火を挟んで会話をしていたので、顔が真っ赤に染まったのは、カトレアには気付かれなかった。
「僕は、紅の瞳の差別を無くしたいと思っています」
「えっ…」
それは、キリア自身も、ずっと思っている事。
「無くなったら、冒険の間も、フードで顔を隠さなくてもいいし、街に一緒に買い物も行けますね。美味しいご飯屋さんがあるので、是非皆さんと一緒に行きましょう」
キリアにとって夢物語な話を、カトレアは笑顔で、語り続けたーーー。
「ただ今、キリア。変わり無かった?」
安定で大きな猪の魔物を抱えて帰って来たクラは、火を起こし、簡易な寝具(薄いブランケット等)を用意していたキリアに向かい尋ねた。
64
お気に入りに追加
283
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ
柚木 潤
ファンタジー
実家の薬華異堂薬局に戻った薬剤師の舞は、亡くなった祖父から譲り受けた鍵で開けた扉の中に、不思議な漢方薬の調合が書かれた、古びた本を見つけた。
そして、異世界から助けを求める手紙が届き、舞はその異世界に転移する。
舞は不思議な薬を作り、それは魔人や魔獣にも対抗できる薬であったのだ。
そんな中、魔人の王から舞を見るなり、懐かしい人を思い出させると。
500年前にも、この異世界に転移していた女性がいたと言うのだ。
それは舞と関係のある人物であった。
その後、一部の魔人の襲撃にあうが、舞や魔人の王ブラック達の力で危機を乗り越え、人間と魔人の世界に平和が訪れた。
しかし、500年前に転移していたハナという女性が大事にしていた森がアブナイと手紙が届き、舞は再度転移する。
そして、黒い影に侵食されていた森を舞の薬や魔人達の力で復活させる事が出来たのだ。
ところが、舞が自分の世界に帰ろうとした時、黒い翼を持つ人物に遭遇し、舞に自分の世界に来てほしいと懇願する。
そこには原因不明の病の女性がいて、舞の薬で異物を分離するのだ。
そして、舞を探しに来たブラック達魔人により、昔に転移した一人の魔人を見つけるのだが、その事を隠して黒翼人として生活していたのだ。
その理由や女性の病の原因をつきとめる事が出来たのだが悲しい結果となったのだ。
戻った舞はいつもの日常を取り戻していたが、秘密の扉の中の物が燃えて灰と化したのだ。
舞はまた異世界への転移を考えるが、魔法陣は動かなかったのだ。
何とか舞は転移出来たが、その世界ではドラゴンが復活しようとしていたのだ。
舞は命懸けでドラゴンの良心を目覚めさせる事が出来、世界は火の海になる事は無かったのだ。
そんな時黒翼国の王子が、暗い森にある遺跡を見つけたのだ。
*第1章 洞窟出現編 第2章 森再生編 第3章 翼国編
第4章 火山のドラゴン編 が終了しました。
第5章 闇の遺跡編に続きます。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん
夏本ゆのす(香柚)
ファンタジー
高校生たちの異世界召喚にまきこまれましたが、関係ないので森に引きこもります。
のんびり余生をすごすつもりでしたが、何故か魔法が使えるようなので少しだけ頑張って生きてみようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる