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大切な出会い

狙われる理由

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 率直な賛辞を述べるカトレア。

 いや本当に凄いですね?よくそんな普通に呪われてる紅の魔法使いの家に単身、何の警戒もせずに来れますね。

 キリアは、煎れたばかりの温かいお茶をカトレアに出した。
「ありがとうございます」
 何の疑いもせずにお茶を飲む。
「美味しい!キリアはお茶を煎れるのがお上手なんですね」
 ストレートに褒められる。

「でしょー?キリアちゃん、お茶煎れるのも料理も凄い上手なんだよー♡」
「とても素敵です」

 ケイ先生もよく受け入れましたね。てか受け入れるのが早い。大歓迎してる。そもそもが、『立ち話も何だし、俺の家なら絶対安全だから、おいでよー』なんて軽いノリで、今迄誰も立ち寄せ無かった紅の魔法使いの家に招待してる。

「ケイ先生、依頼の話聞かなくていいの?」
 放っておいたら何時までも本題に入らず、たわいの無い世間話が続きそうなので、こちらから話を振った。
「ああ、そうだったね」

 やっぱり忘れてましたね。よく忘れられますね。逆に関心します。私の中では、結構一大事ですよ?依頼自体受けるの久しぶりですし、人間が自分達のテリトリーの家にまで入って来てるし……てゆーか、先生は私より依頼久しぶりなはずですよね?緊張とかしないんですね。

「護衛って話だけど、具体的に誰に狙われてるか、心当たりはあるの?」
「有ります。が、僕自身、狙われる理由について、とても戸惑っています」
「?戸惑う?何で?」
「僕が優秀なので、目障りだそうです」
「「……はい?」」
「彼は僕と同じ学校の生徒なのですが、入学テストで僕が1番だった事から目の敵にされていたようで、この前のテストで彼より良い成績をとったのがトドメだったみたいですね」

 ケイ先生と2人で、意味が分からず、首を傾げた。優秀だから、目障り?テストで負けたから、命を狙う?

「随分くっっだらない理由だね」

 カトレアさんの優秀さに嫉妬して、目の上のたんこぶだから、殺しちゃえ!って事?嘘でしょう?そんな事で人、殺しちゃいます?

「僕自身も半信半疑だったのですが、今日ので確信しました。彼は、《僕を紅の魔法使いが殺したと見せ掛けて、殺す気でいます》」
「「!」」

 紅の魔法使いに、殺人の依頼は結構多い。人を何だと思っているのか、1度も人殺しの依頼なんて受けた事が無いのに、懲りずに依頼が来る。都度、丁重にお断り(ゴミ置き場へ強制退場)していますが……。
 それだけ、紅の瞳は見下されてる。あいつ等なら、犯罪を犯してもいいと、汚れた仕事が相応しいと、思われている。

「ふーん。カトレア君を狙ってる馬鹿は、俺達に罪を擦り付ける気でいる訳だ」

 呪われていると蔑まされている私達になら、罪を擦り付け易い。

 ケイも面白く無かったのか、表情から一瞬で笑顔が消えた。ピリッと、張り付くような怒りを感じる。
「お怒りはご最もです。僕自身、罪の無い人に罪を擦り付けるなんて、許せません」
 12歳とは思えないくらいしっかりしてる。それに、私達と同じくらい、憤りを感じているのが伝わる。
「てか、聞いてる感じ、犯人も思惑も目星もついてるよね?それでも何とか出来ない相手なの?」
「権力者の息子。貴族なので、面倒なんです。学校でも、何か問題を起こせば父親の権力を使い、問題を揉み消していました」
「あー。貴族の息子ね」
 ケイは直ぐに納得したようだ。

 私はこの世界の事をよく知らないけど、貴族、権力者ってだけで、面倒臭いんだろうなーって想像はつく。前世でも、警察のお偉いさんとかが、息子の罪を揉み消す!とか、ドラマで見た気がする。

「先程の魔物の襲撃時も、犯人の姿を直接見ていませんし、証拠は有りません。なので、ギルドも動けないでしょう。危険な依頼になりますが、紅の魔法使いの皆さんに助けて頂きたいと思い、こうして依頼に参りました」
「……」
 危険な依頼なのは、いつもの事だから変わらないけど。

「俺達は護衛でいいの?その阿呆テスト男を始末しろって依頼じゃなくて?」
 根本的にその貴族の息子を何とかしないと、解決にはならない。人殺しの依頼は受けないはずなのに、ケイはカトレアを試すように質問をした。
「大丈夫です。僕を王都まで届けてくれれば、後は僕を護ってくれる人達がいますし、彼の事もこちらで対象出来ます」

 ーーー合格。
 カトレアさんは私達に汚れ仕事をさせる気も無い。

「んーいいね!OK!カトレア君を王都まで護衛する依頼ね!さっきも言ったけど、紅の魔法使いが引き受けるよ。大丈夫!安心して!」
「ありがとうございます」
「試すような事言ってごめんねー?」
「いえ。初対面の相手を見極めるのは大切な事ですから」
 試されていた事を気付いていたように、カトレアは答え、それに、ケイはまた笑みを深めた。

「まー今日はもう遅いし、ここに泊まりなよ!」
「嘘ですよね?!」
 ケイの爆弾発言に、思わず声が出てしまう。泊める?!ここに?!人間を?!
「ケイ先生の魔法で、王都まで移動したらいいじゃないですか?!海辺の街コムタにはそれで行きましたよね?!」
 ケイの特殊魔法は空間。色々な場所へ繋がるワープのような呪文を得意としていて、いつもワープを通じて、クラ達は依頼の場所や買い物に行ったりしている。その魔法を使えば、カトレアの依頼はすぐにでも達成出来る。
 王都で、彼を護る人達に引き渡せば良いだけなのだから。

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