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大切な出会い
好意的な人
しおりを挟むキリアが話すカトレアと言う人物に興味が出て来たケイは、持っていたお酒を飲み干すと、フラフラながら立ち上がった。
「会いに行ってみよー♡」
「大丈夫ですか?足元覚束無いですけど?!」
そんな酔った状態で行くのかと、不安になる。
「平気平気ー☆空間魔法でちょちょいと移動出来るからー」
空間魔法便利ですね。逃げ足に最適。酔っ払いに優しい?
「案内してよキリアちゃん」
「…はい」
キリアは言われた通りに、先程カトレアと出会った場所まで、ケイを誘導した。
誘導した先、もうその場から離れていたらどうしようと思っていたが、カトレアはまだその場に留まっていた。
「あの人です」
カトレアから見えないよう、草木から覗き、目線で示す。
顔色が大分良くなっていて、怪我もきちんと治っているのが確認出来て、キリアはホッと胸を撫で下ろした。
「こんにちわー!」
「ちょっ?!ケイ先生?!」
何の迷いも無く草木をかき分け姿を見せるケイ。
「!さっきの…!」
「……」
仕方無く、キリアはケイの後に続いて、姿を見せた。
呪われたと言われる紅の瞳の持ち主が目の前に2人、いきなり現れた。これまでの人間の対応としては、①恐怖に顔色が染まる②罵倒する③問答無用に攻撃してくる④走って逃げ出すのどれかになる。
ケイは、目の前の少年がどんな態度に出るのかを楽しみに待っていたがーーー
「キリアのご家族の方でしょうか?初めまして。僕はコルオーネ=アクア=カトレア。彼女に命を救って頂いた者です」
ーーーそのどれにも当てはまらず、自然に、親切丁寧に笑顔で頭を下げ自己紹介を始める。
「とても感謝しています。良ければ、お礼をしたいのですが、何か好きな食べ物等有りましたら食事でもーー」
「ちょっちょい待ち!」
予想外過ぎて、思わずケイは制止し、キリアを見た。
ケイの表情からは、困惑が読み取れる。
そうですよね。好意的な人間なんて中々いないですもんね。私は会った事ありませんし。ましてや、お礼にと食事に誘ってくる人間なんて、今迄を考えても衝撃ですよね。
「な、何この子?視覚障害者?目が見えてない?」
「見えてると思いますよ」
「じゃあ本当に俺達を見て、怯えも罵倒も軽蔑も攻撃もしてこないの?すっごいねー!こんな人間、まだいるんだねー」
普段、紅の瞳がどんな扱いをされているのか、悲しくなる台詞を吐きますね…。
「あの」
ボソボソと小声で話していると、カトレアが笑顔で話しかけてきた。
「すみません。命の恩人の方々に心苦しいのですが、僕、先を急いでいまして……後日、必ず、改めてお礼に伺いますので、失礼してもよろしいでしょうか?」
思わぬ怪我で足止めし、体のコンディションを元に戻す為に待機していたのもあって、予想以上に時間が経過している。
まだ辺りは明るいが、後1.2時間すると、日が暮れ始める。夜の森は、魔物も活発になるし、危険が増えるから、先を急いでいるのだろう。
(私達(紅の魔法使い)は普段、夜に活動してるから慣れっこだけど、家も無いただの人間には、夜の森は冒険者と言えどきついよね)
キリア達は、ケイの空間魔法で外部と遮断された家があるが、冒険者達は野宿をしなければならない。
(とゆーか…)
カトレアさんは、見た目私と同じ12歳の子供。そんな子供が1人、魔物のいる紅の森を渡り歩いている事が、信じられない。現に、魔物に襲われて死にかけていたし。このまま1人で紅の森を探索しても、また同じように死にかけてしまうのでは……?
ケイも同じ事を考えていたようで、キリアと目を合わせた後、彼はカトレアに声をかけた。
「この森に何の用があるの?子供の1人歩きは危険だよ」
「あーーそう。ですよね」
キリアの主観だが、カトレアを見る限り、腰に剣を帯刀しているが、全く強そうには見えなかった。寧ろ弱そう。そもそもが戦えなさそう。
「僕は、紅の魔法使いに頼みたい事がありましてー」
((でしょうね))
と、心の中で同意する。
紅の森に、紅の魔法使い目当て以外で来訪する人はいない。一般人はそもそも入って来ないし、この紅の森に入った所で、行き着く先は海で行き止まり。通り抜けも出来ないこの紅の森は、普通の冒険者も避けて通る。
「じゃあ改めてこちらも自己紹介するよ。俺はケイーーー紅の魔法使いの一員だよ」
普段、ケイが依頼主と顔を合わす事は無い(依頼主瀕死騒動で禁止されている)が、偶然的な出会いから、紅の魔法使いである事を名乗った。
そもそも、ケイは紅の瞳を元の黒い瞳に戻す事も出来るのに、紅い瞳を好み、街に買い物にも出掛けないから、私と同じで、人間と接する機会が無い。ケイにとっても、カトレアは久しぶりの人間との対話だろう。
「!そうだったんですね。なら、キリアも?」
「…はい。紅の魔法使いが1人、キリアです」
紅い瞳に、魔法でカトレアを助けたのだから、気付かれて当然。
「カトレア君さ、紅の魔法使いの依頼の仕方、知らないの?」
紅の魔法使いに直接依頼に来る人間はいない。
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