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紅の魔法使い

闇魔法(クラーク)

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 ヒゲールからすれば、いきなり目の前に見知らぬ子供が2人現れたのだ、驚きと恐怖しか無い。

「直接お目にかかるのは初めてかな。初めまして、ヒゲール。僕は紅の魔法使いの1人、クラ」
「……紅の魔法使いの1人、ジュン」
 2人は、紅い目を闇夜の中、光らせた。

「紅の魔法使いだと?!何故貴様等がここにーー!!おい!紅の魔法使いだ!紅の魔法使いが現れた!さっさと始末しろ!」
 依頼を受ける場では、直接的な対面はしておらず、こちらは声だけしか伝えていない。ヒゲールは子供の正体が紅の魔法使いである事が分かると、直ぐに部屋にあった無線機を使い、従者達を呼び戻した。

「思惑通りに動いてくれる猿さんで助かるね」
「単細胞」

 私達の目的は、リク達親子の身の安全。
 ヒゲールがリク達の元に向かった従者を呼び戻してくれたなら、こちらにとっては好都合。

「2人共、大丈夫なの?!」
 ただ、続々と従者達が武器を持って集まって来るのに対して、戦力にならない私を覗いて、こちらはクラとジュンの2人しかいない。
「馬鹿ゆーな、こんな雑魚共にやられる訳ねーだろ」
「キリアは、ジュンの魔法で大人しく隠れててね」

 キリアだけは、闇の魔法で姿を現していないまま。下手に何かしても邪魔になるのは明白なので、大人しく隅っこの窓際に移動する。
「闇魔法クラーク」
 闇が床を這い、敵の目前まで来ると、床から姿を現し、鋭い牙となり襲う。
「ぐわっ!」
「うわぁぁあ!!」
 為す術なく、次から次へと倒される。

「ななななな何だ?!この魔法は?!」
 ヒゲールは、ジュンの使う闇の魔法を見て、腰を抜かしながら叫んだ。
「闇?!そんな馬鹿な!そんな特別な魔法を使えるのか?!紅の魔法使いが?!」

 私は全くこの世界の事を知らないけど、どうやら闇の魔法は特別らしい。本当に私、この世界の事知らないな。ちゃんとケイ先生に聞こう。

「紅の瞳は呪われてるから、そんな特別な力は使えないと?僕等からしたら逆なんだけどね。紅の瞳の持ち主だからこそ、特別なんだ。と」
 ケイ先生も同じような事を言っていた。紅の瞳は、神様から愛された証。特別なんだ。と。

 クラもまた、短剣で相手を斬りつけつつ、植物の魔法を使ってツルで相手の足を絡めたりと、上手く魔法を使っていた。
「植物の魔法までーー!!」

 (もしかして、本当に紅の瞳は、神様に愛されてる証なの?)

 クラさんの持つ植物の力も、ジュンさんの持つ闇の力も、ケイ先生の持つ空間の魔法も、全てが特別な力ーー?だとしたら、本当に神様も悪気があって私を不幸にした訳じゃ無いのか……。
 恩恵を今まで感じた事が無さ過ぎて、神様の嫌がらせじゃないかとすら思っていたので、とりあえずは、誤解は解けた。会った時に殴るのは止めよう。文句は言うけど。生まれ変わって人生イージーモードって約束だったのに、イージーモードでは無かったからね、全然。文句の1つは言わないと気が済まない。

 (でも、そもそも何で、そんな特別な力を持ってるのに、呪われてるなんて扱いをされてるんだろーー?)

「このっ!呪わてる分際でワシに楯突くな!いいのか?!貴様等みたいな、生きる価値の無い人間が、ワシに逆らうなど、神が許さぬぞ!!」

 その神様に愛されてるって私達は主張してるんだけど…。
 てか、よくこの状況でそんな事言えるな。もう殆ど従者生き残って無いよ?いや、死んでは無いけどさ。

 順調に敵を倒しているジュンとクラによって、辺りを見渡せば、残っているのはヒゲールのみ。

「ひぃ!待て!待て待て!止めろ!今すぐ止めれば、まだ許してやる!それどころか!貴様等呪われてる紅の魔法使いをワシの従者にしてやることも考えてやるー!!」
「往生際が悪いね。チンピラと一緒に従者も1人捕まってるんだから、言い逃れ出来ないでしょ?ギルドに捕まるのも時間の問題なのに」
 冒険者ギルドも無能では無い。従者とヒゲールの繋がりを示す確固たる証拠を見付けたら、悪事を働いたヒゲールを捕まえるだろう。
「ふん!そんなもの!金さえ積めば何とでもなる!あの親子が作ったお菓子を独占し、その売上さえあればーー!金さえあれば、全ては上手くいくんだ!!」
「ーー屑が。お前なんて生きてる価値ねーよ!」
「ひぃ!」

 ジュンは闇の魔法だけで無く、多彩に色々な魔法を使えるようで、今度は杖の先端に、風の魔法を現した。
「!駄目!」
 ヒゲールに向かい、怒りに任せて魔法を放とうとするジュンを、キリアは窓際から駆け出して、腕に捕まった。

「早まらないで!絶対駄目!こんな嫌な奴の為に手を汚しちゃ駄目!駄目!殺しちゃ駄目ー!!!」
「……!」
 ヒゲールに放とうと杖に集まっていた魔法が、キリアに腕を引っ張られた事で揺らぎ、行き場を無くし、キリアの体を斬り付けた。
「っぅ!」
「キリア!」
 風の魔法によって、体中に痛みが走るのを、キリアは目をつぶって耐えた。切り刻まれた箇所から流れる血。

「キリア!この馬鹿っっ!」
 ジュンは、倒れるキリアの体を支えながら、怒鳴った。


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