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紅の魔法使い
怒ったら怖い
しおりを挟む依頼を断った事を知っているのは、ヒゲール達関係者だけ。
「このっ!何の用だ?!人間様の役に立つ気がねーなら、森の中にすっこんでろ!」
「残念ながら、人間があまり好きでは無いので、依頼を受ける人間は選ばせて貰ってるんです。おじさん達みたいな頭の悪そうな人間の依頼はごめんだなぁ」
あれ?意外とクラさんって毒舌ですか?敵と認識した相手には容赦しないタイプですか??流石ジュンさんと双子!攻撃的な所はそっくりです!
「何だとっ!このっ!呪われてる分際でーー!!」
「その呪われた分際に依頼して来たのはそっちでしょ?俺達を良いように使えなかったから、自分達で強硬手段に出た?」
「うるせぇ!呪われてる奴等にはピッタリな仕事だろ?!それで金を貰おうとする事自体が浅ましいんだよ!底辺は、人間様の役に立つ事だけを考えて生きていけや!」
「そっかぁ。人殺しが俺達にピッタリな仕事なら、雑音が耳障りだから、耳障りの奴等から始末して行こうかな」
(口調が僕から俺に変わってる…!めっちゃ怒ってる気がする!え!何?!怖い!怒らせんなよ!!)
屋根の上から一部始終を見学しているキリアは、クラの優しい雰囲気が一転した事に、一人怯えていた。
「調子乗んなや糞ガキがー!!」
男達は剣を取り出すと、剣先をクラに向けた。3・4人に囲まれる。
「クラさん!」
慌てて、クラの元に駆け寄ろうとするも、屋根から下に降りれない。
その間にも、男達が一斉にクラに飛びかかった。
「ーーあれ?もうおしまい?味気無いね」
だが、地面にひれ伏しているのは、クラでは無く、男達の方だった。涼しい顔で、息1つ切れていない。片手には、短剣を持っていて、反対の手でトントンと剣身を叩いた。
「くっ…何だ…体が…動か、な」
上手く呂律も回らない様で、声は不自然に震えていた。
「紅の魔法使いを相手にするのに、普通に勝負しようとしたの?浅ましいね」
男に言われた言葉を、そのまま返すと、クラは男に近寄り、手をかざした。
シュルルルルル。と、男の体を、植物のツルが巻き付く。
「!うー!うー!」
「俺は植物を操る魔法を得意としてるんだ。中でも、毒を好んで扱う。馬鹿みたいに叫んでた間に、こっそり神経痛の毒を仕込んだんだ」
気付かれない様に、足元に植物を生やし、気付かれないような細い棘を刺した。
「ほら、どーする?このまま、今度は即死になるような強い毒を仕込もうか?それとも、一生寝たきりになるような毒が良い?」
「!うー!うー!」
植物に口を塞がれて、言葉を出せない男は、涙を流しながら、必死で止めてくれ!と訴えているように見えた。
「ーーーあはは。やだなぁ。冗談ですよ、冗談」
(冗談?!結構本気にしか見えなかったんだけど!?)
屋根の上から、キリアはとりあえず止まってくれたクラにホッとしつつ、絶対に本気で怒らせない様にしようと心に決めた。
迎えに来て貰ったクラに地面に降ろして貰い、痺れる男達をクラの魔法でぐるぐる巻きにして捕え、一旦店の中へ。尋問大会が始まり、粗方聞き終えた所で、『僕達は最低最悪な屑人間です』と張り紙を貼って店の前に放り出した。
「もう朝だねー眠いや。キリアは大丈夫?疲れてない?」
喫茶店を出る頃には、朝日が登りかけていた。
「大丈夫だよ」
元に優しいクラに戻った事に心底ホッとする。本当は、『前の家で寝るな!って難癖付けられて、1日2日余裕で徹夜してたので余裕ですよ!』って言おうとしたんだけど、折角優しいクラに戻ったのに、また変な事で怒らせたら駄目だと、言葉を飲み込んだ。
「ーー遅かったな」
「ジュンさん!」
待ち合わせ場所には、既にジュンの姿があった。
「待たせてごめんね。そっちは大丈夫だった?」
「問題無い。ヒゲールは自宅で機嫌良さそうにワイン飲んでやがった。何度その頭にワインぶっ掛けてやろうと思ったか!」
思い留まってくれて本当に良かった。もししてたら、そっちでも大騒ぎですよ。
「機嫌良かったのは、もうすぐ喫茶店がなくなるって思ってたからかもね。残念ながら、思惑は泡となって消えちゃったけど」
「ああ?何だ、そっちに動きがあったのか」
「まーね。詳しくは帰ってから、先生の前で話すよ」
収穫はあった。
尋問大会はとてもスムーズで、ペラペラと聞いた質問に答えてくれた。多分、いや、間違い無く、クラの毒に対する恐怖が効いていた。
「とりあえず帰って寝る」
「そうだね。先生一人で休んでたんだから、叩き起して、今度は僕達が寝ようよ」
3人は来た時にも通った道ーー海辺の街コムタと、ケイの家を繋ぐ転送の場所である浜辺の砂場に、足を乗せた。
*****
「おっはよー!もー、2人とも酷いよねー。折角気持ち良く寝てたのに、あんな風に起こすだなんて」
朝方、家に帰って来て、ケイと入れ替わりに入眠し、現時刻は正午。起きて来たキリアは、メソメソと泣きながら訴えるケイを前に、食事の準備をしていた。
「あはは」
昨日もお昼近くまで寝ていたのを知っているので、起きているはずないと思っていたら、予想通り、ケイはぐっすりと就寝していた。
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