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紅の魔法使い

実は前世家政婦

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 次の日ーーー。

 お風呂にも入らせて貰い、服も、男物だが、綺麗な服を身につけさせてもらい、夜は暖かいベットで眠りについた。
 (こんな普通の生活が送れたのは、前世以来)
 感謝しつつ、習慣的に、キリアは朝早く起きた。家ーー前にいた屋敷では、誰よりも早く起き、掃除や洗濯、料理までするのが仕事だった。
 (お世話になるんだし、何もしない訳にはいかないよね)
 寧ろ、こんな人間らしい生活を送らせてくれるのなら、全部しても良いくらいだ。

「おはようございまーす…」
 2階から1階のリビングに行くも、まだ誰もいない。
「どうしよう……流石に勝手に触るのはよくないよね」
 環境の変化での緊張も有り、思っていた以上に疲れていて、促されるままに休んでしまったが、昨日のうちに、家事の事を聞いておけば良かったと後悔する。
「食材……は、これかな」

 肉や魚、新鮮な野菜も沢山ある。家の周りには畑が耕されていたから、家庭菜園しているのだろう。家庭菜園はした事が無いが、教われば、それも出来るようになるはず。
 忙しなく動いていたせいか、何もしないとなると、落ち着かない。

「あれ?キリア?おはよう」
 暫くすると、クラがパジャマ姿のまま、1階に降りて来た。
「おはようございます。クラ…様」
「止めてよ。何で様?普通に呼び捨てでいいよ!敬語も要らない」

 元・実家ではお母様、お父様、姉様、兄様、皆さんを様呼びしていたので、居候の身では様付けが妥当かと思ったのですが、違うみたいですね。

「分かりました、クラさん」
「……ここは、もうキリアを虐めていた、前の家じゃないんだから、自由に振舞っていいんだよ」
 優しい言葉。気遣ってくれているのが分かる。
「お気遣い感謝します」
「あはは。キリアって子供なのに難しい言葉使うね」
 前世では年齢25歳ですからね。敬語も仕事で普通に使ってましたし。
「クラさん、私をここに置いてくれるなら、せめて家事をしようと思ってるんだけど、ここにあるのは使ってもいいの?」
「家事?出来るの?」

 実は前世でお仕事、家政婦していましたから、家事は得意なんですよね。お陰様で、前の屋敷での掃除や洗濯も誰に教わる事も無く出来たので、助かりました。普通、8歳の女の子に何も教えずにやれ。は無理ですからね。
 あの屋敷の方々は、誰かが教えたんだろうと思い込んでいましたけど、親切に教えてくれるような人は、あの屋敷には0です。

「前の屋敷では(も)、家政婦みたいな事をしてたので」
 家政婦という名の奴隷みたいな扱いだったけど。
「……そっか。うん、いいよ。てか助かるよ。僕達、家事全く出来ないから」
「??出来ない??」
「うん、出来ない」
 笑顔でハッキリと答えるクラ。

 家事が出来ないと言うけど、家の中は多少散らかってるとは言え、綺麗だし、昨日借りたお風呂も綺麗で、借りている服も、新品みたいに綺麗ーーー。

「その服は買ったばかりの新品。これ、洗濯の山ね」
 クラはそう言うと、開かずの間と化していた扉を開け、中の惨状を見せた。山積みに積まれた衣類。生乾きの臭い。
「床掃除はね、たまに先生やジュンが風の魔法でビューって吹き飛ばすんだ。昨日はたまたま、余りにも埃が溜まったから、ジュンが魔法を使った後ってだけ」

 言われてみれば、確かに、細かな所の汚れはそのままで、良く見れば汚い。ただ、お風呂だけは、自身を綺麗に保つため、ケイさんが口煩く掃除を言い付けるので、3人ともしているらしい。

「料理は一切出来ない。魔法で切って焼いて食べるくらい」
「……」
 キリアは、山積みの洗濯や、良く見れば汚い部屋。そして美味しそうな食材を前に、無言で袖を捲った。
「腕がなりますね」
 とりあえず洗濯から片付けようと、キリアは山積みにされていた衣類に手を伸ばした。



「ーーよし!」
 とりあえず超特急で、庭に干せれるだけ洗濯して干した。残念ながら、1回で終わる量じゃない。一体何日分……?てか、もしかして、1回1回、汚れて着れなくなったら新しい服を着ていた?勿体無い……!!
「凄いねキリア。手際良いー!」
「効率良くやらないと、お仕置きされちゃいますから」
 私の失敗がある意味大好きな元・家族だったからなー。虐める口実が出来たと、喜んで罵倒してくる。
「……」
「あ!えっと…クラさん達は、いつからここに住んでるの?」
 前の家の話は、聞いていて楽しい話じゃない。完全に自虐ネタ。黙り込むクラに、キリアはわざとらしく話題を変えた。
「僕達?僕達も、キリアと同い歳くらいーー8歳の時かな。先生に拾って貰って、ここに住んでるよ」
「へぇークラさんとジュンさんは兄弟なの?」
「双子だよ」
「あ、やっぱり?何となく似てるもんね」

 髪や元の目の色が一緒だし、雰囲気や目付きは違うけど、やっぱりどことなく似てる。

 洗濯を終えると、キリアは次に台所に立ち、テキパキと料理を始めた。この世界の料理は勿論知らないので、日本の料理になるんだけど、実はこれは意外と、前の家でも評判が良かった。誰も褒めてくれないけど、皆、綺麗に完食していたのを知ってる。

「……何してるんだ」
 もう時刻は10時。洗濯に時間がかかりすぎて、朝食の時間は過ぎてしまったから、朝食兼昼食作り。
 この時間になってやっと起きてきたジュンは、台所で料理を作っているキリアと、その様子を楽しそうに見ているクラの2人に尋ねた。
「キリアがご飯作ってくれてるんだ」



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