心が読める令嬢は冷酷非道?な公爵様に溺愛されました

光子

文字の大きさ
上 下
30 / 30

最終話 私はとても幸せです。

しおりを挟む
 

「っ!違う!そうじゃない!それも問題だが、気にすべきは、今ここで、アレン様に求婚し、俺に婚約破棄を伝えたことだ!」

 仮に本当にアレン様と結婚し直すとしても、こんな公の場で、婚約者に婚約破棄を告げるものでは無いし、ましてや、アレン様は私の旦那様。義妹の婚約者を、こんな場所で口説くものでは無い。

「何が駄目なのですか?私は、愛を貫いているだけです!」

「時と場所!そして、自分の立場を考えろ!」

「……お義姉ーー」
「マーガレット嬢」

 私が口を開こうとする前に、アレン様が口を開いた。

「はい!アレン様!」

「俺の妻はカリアだ。俺が愛しているのは、カリアだけーーーお前みたいな性格のねじ曲がった奴など、好きにはならない」

「なっーーそんな!私の告白を断るんですか?!この私の?!」

「断る。俺が可愛いと思い、綺麗だと思い、素敵だと思い、愛してやまないのはーーカリアだけだ」

 アレン様はハッキリと、1寸の隙も無く、お義姉様の告白を断った。

「嘘……私よりも……カリアを選ぶなんてーー!」

 予想外のアレン様の急成長に、お義姉様のプライドがズタボロになったようで何よりです。
 でもーーーこれだけで終わらせる気は、ありません。


「ユーリ、君を本日付けで騎士団から解雇する」

「ーーは?な、何故ですか?!皇太子殿下?!確かに、今は思うように手柄を上げておりませんが、それは、怪我を負ったからでーー」

「違うだろう?君は、アレンから手柄を横取りしていただろう?」

「ーーっ!」

 アレン様は素直じゃなくて口下手で、自分の気持ちを上手く伝えらない方だったけど、仕事では、問題なく言葉を伝えられている。だからこそ、今は騎士団の副隊長の地位まで上り詰めた。

「アレンが評価を上げたのは、公爵に上がってからーーーアレンが君と同じ騎士団から外れ、帝国を守護する騎士団に配属してからだ。それと同時に、君は騎士団で評価を上げれなくなった」

 今まで横取りしていたアレン様の手柄を、奪い取れなくなったからーーーアレン様を上手く利用して、自分の評価を上げていた!

「君は学生時代から、優秀なアレンを妬んでいたらしいね。だから彼の不名誉な噂を流した。そして、自分の評価をあげるために、アレンを利用していたんだ」

「どこにそんな証拠があってーー」

「証拠なら、優秀なアレンのご夫人が全て揃えてきたさ」

「!このーークソ女がーー!」

 怪しいと思わしき人物全員に当時の話をわざと持ち出し、心を読んだ。
 中々に大変だったんですよ?お陰様で、私の最近の趣味は手相を見ることになりました。そう言っておけば、手に触れやすいですからね。
 ある時は弱味を見付けて吐かせたりーーー手段を選ばずに行動しました。全ては、貴方の罪を明白にし、アレン様の悪評を物色するため!

「アレンの過去、有り得ない噂話も、全てがデタラメだと証明されている。アレンは、悪魔の公爵などでは無い!俺が証明しよう!」

 皇太子殿下は、祝祭に集まった人達に高らかに宣言した。
 割れんばかりの歓声が聞こえる。

 良かった……これで、アレン様の悪評は晴れる…!

「ユーリ=トランス伯爵は、アレン=ラドリエル公爵の名誉を傷付けた罪、そして、騎士団で他の騎士達からも手柄を横取りしていた罪で拘束するーーー連れて行け」

 皇太子殿下の命により、腕をおさえられ、衛兵に連れていかれるユーリ様。
 他にも余罪はゴロゴロ有りそうですから、これでもう二度と、ユーリ様とお会いすることは無いでしょう。さようなら、ユーリ様。


「さぁ!余計な騒ぎは起きたが、気にせずに祝祭の続きを楽しんでくれ!」

 皇太子殿下の声で、中断していた光の祝祭は、また音楽が鳴り、動き出したーーー。





 ***

 パーティの騒音を抜け、皇宮のテラス。私はそこで一人、夜空を見上げた。


 あれからお義姉様は、まるで魂が抜けたように静かになって、そのままお義母様とお父様に連れられて、グレイドル男爵邸に戻った。
 今日の騒ぎでお義姉様の本性は知れ渡ったでしょうし、これからお義姉様の嫁ぎ先を見付けるのは困難でしょうね。
 幾ら顔が良くても、中身があれでは、拾うものも拾いません。大人しくしていれば、また新しい婚約者を見付けられたかもしれないのに、馬鹿なお義姉様。

「カリア」
「アレン様」

 テラスにいた私に、アレン様はいつものような無表情で近付いた。

「…疲れた…」

 いつも無表情で感情を出すのが苦手な人が、いきなりずっと感情を表に出すのは難しいですよね。
 きっと、私の為に、一生懸命練習してくれたのでしょう。そう思うと、この人のことがとても愛おしい。

「……ムンドク殿下から、君が、僕の為に色々と動いてくれていたのを聞いた……本当に、ありがとう」

「いいえ、旦那様の為ならば、当然です」

「……カリアが、僕の妻になってくれて、僕は本当に幸せ者だ」

「……私も、アレン様の妻になれて、幸せです」

 心を読まなくても、随分、素直な気持ちを言葉に出来るようになった旦那様。
 手を繋いでも心の声が聞こえないのは、彼が本当の気持ちを、素直に言葉にしている証拠。


「こらからもずっと、傍にいてくれ」
「……はい」

 私とアレン様は、手を繋いだまま、口付けを交わした。






 完



 いいね、お気に入り、エール、最後まで読んで下さった方、貴重なお時間を頂き、作品を読んでくださり、本当にありがとうございました。



しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。

ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。 こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。 (本編、番外編、完結しました)

処理中です...