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最終話 私はとても幸せです。
しおりを挟む「っ!違う!そうじゃない!それも問題だが、気にすべきは、今ここで、アレン様に求婚し、俺に婚約破棄を伝えたことだ!」
仮に本当にアレン様と結婚し直すとしても、こんな公の場で、婚約者に婚約破棄を告げるものでは無いし、ましてや、アレン様は私の旦那様。義妹の婚約者を、こんな場所で口説くものでは無い。
「何が駄目なのですか?私は、愛を貫いているだけです!」
「時と場所!そして、自分の立場を考えろ!」
「……お義姉ーー」
「マーガレット嬢」
私が口を開こうとする前に、アレン様が口を開いた。
「はい!アレン様!」
「俺の妻はカリアだ。俺が愛しているのは、カリアだけーーーお前みたいな性格のねじ曲がった奴など、好きにはならない」
「なっーーそんな!私の告白を断るんですか?!この私の?!」
「断る。俺が可愛いと思い、綺麗だと思い、素敵だと思い、愛してやまないのはーーカリアだけだ」
アレン様はハッキリと、1寸の隙も無く、お義姉様の告白を断った。
「嘘……私よりも……カリアを選ぶなんてーー!」
予想外のアレン様の急成長に、お義姉様のプライドがズタボロになったようで何よりです。
でもーーーこれだけで終わらせる気は、ありません。
「ユーリ、君を本日付けで騎士団から解雇する」
「ーーは?な、何故ですか?!皇太子殿下?!確かに、今は思うように手柄を上げておりませんが、それは、怪我を負ったからでーー」
「違うだろう?君は、アレンから手柄を横取りしていただろう?」
「ーーっ!」
アレン様は素直じゃなくて口下手で、自分の気持ちを上手く伝えらない方だったけど、仕事では、問題なく言葉を伝えられている。だからこそ、今は騎士団の副隊長の地位まで上り詰めた。
「アレンが評価を上げたのは、公爵に上がってからーーーアレンが君と同じ騎士団から外れ、帝国を守護する騎士団に配属してからだ。それと同時に、君は騎士団で評価を上げれなくなった」
今まで横取りしていたアレン様の手柄を、奪い取れなくなったからーーーアレン様を上手く利用して、自分の評価を上げていた!
「君は学生時代から、優秀なアレンを妬んでいたらしいね。だから彼の不名誉な噂を流した。そして、自分の評価をあげるために、アレンを利用していたんだ」
「どこにそんな証拠があってーー」
「証拠なら、優秀なアレンのご夫人が全て揃えてきたさ」
「!このーークソ女がーー!」
怪しいと思わしき人物全員に当時の話をわざと持ち出し、心を読んだ。
中々に大変だったんですよ?お陰様で、私の最近の趣味は手相を見ることになりました。そう言っておけば、手に触れやすいですからね。
ある時は弱味を見付けて吐かせたりーーー手段を選ばずに行動しました。全ては、貴方の罪を明白にし、アレン様の悪評を物色するため!
「アレンの過去、有り得ない噂話も、全てがデタラメだと証明されている。アレンは、悪魔の公爵などでは無い!俺が証明しよう!」
皇太子殿下は、祝祭に集まった人達に高らかに宣言した。
割れんばかりの歓声が聞こえる。
良かった……これで、アレン様の悪評は晴れる…!
「ユーリ=トランス伯爵は、アレン=ラドリエル公爵の名誉を傷付けた罪、そして、騎士団で他の騎士達からも手柄を横取りしていた罪で拘束するーーー連れて行け」
皇太子殿下の命により、腕をおさえられ、衛兵に連れていかれるユーリ様。
他にも余罪はゴロゴロ有りそうですから、これでもう二度と、ユーリ様とお会いすることは無いでしょう。さようなら、ユーリ様。
「さぁ!余計な騒ぎは起きたが、気にせずに祝祭の続きを楽しんでくれ!」
皇太子殿下の声で、中断していた光の祝祭は、また音楽が鳴り、動き出したーーー。
***
パーティの騒音を抜け、皇宮のテラス。私はそこで一人、夜空を見上げた。
あれからお義姉様は、まるで魂が抜けたように静かになって、そのままお義母様とお父様に連れられて、グレイドル男爵邸に戻った。
今日の騒ぎでお義姉様の本性は知れ渡ったでしょうし、これからお義姉様の嫁ぎ先を見付けるのは困難でしょうね。
幾ら顔が良くても、中身があれでは、拾うものも拾いません。大人しくしていれば、また新しい婚約者を見付けられたかもしれないのに、馬鹿なお義姉様。
「カリア」
「アレン様」
テラスにいた私に、アレン様はいつものような無表情で近付いた。
「…疲れた…」
いつも無表情で感情を出すのが苦手な人が、いきなりずっと感情を表に出すのは難しいですよね。
きっと、私の為に、一生懸命練習してくれたのでしょう。そう思うと、この人のことがとても愛おしい。
「……ムンドク殿下から、君が、僕の為に色々と動いてくれていたのを聞いた……本当に、ありがとう」
「いいえ、旦那様の為ならば、当然です」
「……カリアが、僕の妻になってくれて、僕は本当に幸せ者だ」
「……私も、アレン様の妻になれて、幸せです」
心を読まなくても、随分、素直な気持ちを言葉に出来るようになった旦那様。
手を繋いでも心の声が聞こえないのは、彼が本当の気持ちを、素直に言葉にしている証拠。
「こらからもずっと、傍にいてくれ」
「……はい」
私とアレン様は、手を繋いだまま、口付けを交わした。
完
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