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29話 光の祝祭⑥
しおりを挟む「僕と……ダンスを踊って欲しい。君のために、僕も隠れて特訓したんだ」
アレン様が眩しすぎて血を吐きそうーーー。
繋いだ手から、アレン様の心の声が聞こえない。きっと、思っていることをそのまま口に出しているから、聞こえなくなったんだ。
ダンスフロアにつくと、アレン様は一礼し、私の腰に手を回した。
「僕に身を委ねて貰っても構わない」
「はーーはい」
音楽が流れ、一緒にダンスを踊る。周りの人々は私達に見とれていて、誰も踊っておらず、ダンスフロアには私とアレン様しかいなかった。
「カリアはいつも綺麗で可愛いね。僕の自慢のお嫁さんだよ」
「ありーーがとう、ございます」
「うん」
爽やかな笑顔を向けられる。
ーーーいや、素直になりすぎじゃない?ーーー
が、率直な感想。
心の声が聞こえないのは、アレン様が裏表なく話している証拠。急成長過ぎる!一体どうしたんですか?!と心配になるレベル!
「アレン様…?あの、今日は随分と素直に言葉を出して下さるんですね」
「うん、いけない…?」
「いえ、寧ろありがとうございますなんですけど、ここに来るまでの馬車では普段通りでしたのに、この一瞬で何があったのかと思いまして……」
私の言葉にアレン様はんー?と考え込んだあと、言葉を紡いだ。
「君が素直に気持ちを伝えて欲しいって言ったからーーー素直に、なれるように……特訓をしていた」
私が貴族名簿で暗記をしている間、アレン様もラドリエル公爵邸の使用人達と、今日この日の為に、素直になれる特訓をしていた。
「…素直になれる特訓…ってーーふふ、何ですかそれ。どんな特訓なんですか?」
スマルトやビオラを巻き込んで、アレン様が使用人達と特訓している姿を思い受かべると、何だかおかしくて、笑ってしまう。
「……笑った顔も可愛いね」
「!アレン様……!ちょっと、一旦待ちましょうか」
「?何故?」
そんな屈託のない表情を浮かべるのは止めてもらえませんか?悪魔の公爵の要素どこに行ったんですか?もうただの爽やかイケメンですよ。私の心臓が持ちません!
アレン様の変化に、周りからは驚きの声が上がる。
「やだ……凄い素敵……!」
「あれが悪魔の公爵様?あんな方なら、私が結婚したいですわ!」
元より、顔面偏差値が高く、地位もあり爵位をお持ちの旦那様。普通なら、おモテにならないはずが無い。
「アレン、ラドリエル公爵夫人」
ダンスを終え、私達を迎え入れた人物に、私は慌てて深く頭を下げた。
ラドリエル公爵であるアレン様を気軽に呼び捨てに出来る人物は限られている。
「皇太子殿下にご挨拶します」
この帝国の皇太子、《ムンドク》殿下ーー!
「楽にしていいよ、アレンの奥さんってことは、僕にとってもかけがえのない大切な人だ。何より、あんな仏頂面で素直じゃないアレンを変えた人なんだからね」
……ムンドク殿下は、アレン様の唯一の理解者だ。
ムンドク殿下は、私がムンドク殿下宛に送った手紙をポケットから取り出し、笑顔で、私に見せた。
「カリア、君が調べた内容は、俺にとってとても興味深いものだった。何より、親友であるアレンを陥れた輩を、俺も許すつもりは無い」
「ありがとうございます」
私は、アレン様に悪魔の公爵の悪評を流し、私の可愛い旦那様を陥れたユーリ様を、絶対に許さないと決めた。地獄に叩き落としてやると。
その為に私は、ラドリエル公爵家の力をフル活用し、ユーリ様の悪事に加担した人物を洗い出し、呼び出しーーー心を読んだ。
どんな汚いこともしてあげる。
心は素直で可愛い、私の旦那様をお守りするためならーー。
「カリアーー!」
来ましたね、お義姉様。そしてーーユーリ様。
のこのこやってくるなんて、馬鹿な人達。私がここで、貴方達に引導をお渡ししてあげます。
「な、何なのよーー何で、アレン様がーー悪魔の公爵が、そんな格好良くて、素敵で、優しくなってるのよーーー!」
お義姉様、動揺からか知りませんけど、流石にアレン様の目の前で悪魔の公爵って言ったら駄目だと思いますよ。
「私の旦那様は素敵でしょう?それもこれも、お義姉様達が私の為に素敵な結婚相手を見付けて下さったおかげです!ありがとうございます」
勿論、本心でお礼なんて言ってませんよ。嫌味たっぷりです。
「!あ、有り得ない!カリアばかりズルいわ!それなら、カリアなんかより100倍可愛い私の方が、アレン様に相応しいはずよ!」
お義姉様は相変わらず、節操がありませんね。
婚約者のいる前で、義妹の旦那を盗ろうと言うんだから。
「アレン様!大変お待たせしてしまいました!私、目が覚めましたわ!今まで、アレン様がこんなに素敵な人だったなんて気付かず、遅くなってしまいましたが……私、アレン様が好きです!アレン様、義妹のことなど捨てて、私と結婚して下さい!」
お義姉様は本当に、顔だけしか取り柄が無くて、頭が悪い。だからこんな公衆の面前で、平気で自分の恥をばら撒く。
「マーガレット……!正気か?!」
「ごめんなさいユーリ様。私、真実の愛に目覚めてしまったんです!だから、貴方との婚約は破棄しますわ!」
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