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26話 光の祝祭③
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皇宮ーーーー。
「ーー皆、今宵は帝国に仕える騎士を称えるための祝祭だ。騎士の働きに敬意を示し、存分に楽しんでいくと良い」
皇帝陛下の祝祭の挨拶から始まり、功績を上げた騎士達への褒美。そこには、帝国を守護する騎士の副隊長であるアレン様の姿もあった。皇帝陛下からの褒美は、実績が無い限り頂けるものでは無い。あそこに立っているアレン様は、きちんと騎士として評価を出している証。
アレン様……格好良い……!
仕事で評価を出されているのは勿論、顔面偏差値は元からとてもお高いし、綺麗に着飾っているそのお姿も凛々しくて素敵です…!この映像を録画して、帰ったらスマルトとビオラにも見て欲しいくらい素敵!
「ーーいいよな悪魔の公爵様は、素行や態度が悪くても、実力さえあれば褒美が貰えるんだからよ」
「戦いの実力だけある野蛮な公爵のクセに」
ラドリエル公爵夫人である私がここにいると分かっていて、アレン様の悪口を言うなんて……愚かな奴等。
「ふふ、実力もないくせに口ばかり達者ですね」
「は?」
「《タマル》子爵令息、《モルガン》男爵令息、お久しぶりですね。会うのはお義姉様の取り巻きしている時以来でしょうか」
この二人はお義姉様の見てくれに騙されて虜になっていた典型的な馬鹿男二人。ちなみに、私の同級生でもある。
「何が取り巻きだ!」
「カリアの分際で生意気だぞ?俺達にそんな口聞いていいと思ってるのか?痛い目に合っても知らねえぞ!」
「へぇーーーどんな痛い目に合わせてくれると言うの?ラドリエル公爵夫人である私に」
「えーー」
馬鹿な男共。
あの時、私が貴方達に逆らわなかったのは、私がまだグレイドル男爵家にいて、問題を起こすとお父様達が五月蠅かったからに過ぎません。
「爵位も下の貴方達が、私に危害を加えると?」
「いや……その、本気じゃないってゆーか……」
いつも逆らってこなかった私が逆らってきたからか、たじろく二人。
ちょっと言い返しただけで負けるなら、初めから喧嘩なんて売って来ないでくれます?迷惑だし鬱陶しいので。
「な、なんだよ…!ラドリエル公爵夫人になったからって調子に乗ってーーー悪魔の公爵の妻になったからって何だってゆーんだよ!どうせ、すぐ捨てられるか、嬲られて殺されるに決まってんのに!」
アレン様のイメージが酷い!私の旦那様を猟奇殺人者みたいに言わないでくれます?!
「ーーーで?」
「へ?いやだから、カリアなんて直ぐに殺されーー」
「今は?今の私は生きていますし、まごう事無きラドリエル公爵夫人ですよね。貴方達より爵位は上ですし、貴方達なんかよりよっぽど、私の方が優秀でしたよね」
思いっきり小馬鹿にしたように、鼻で笑う。
「女の私よりも成績が悪いなんて……よほど、無能なんでしょうね。だから、アレン様に嫉妬されているんですか?アレン様は優秀ですものね!貴方達みたいな女の尻を追いかけ回している馬鹿な男と違って」
あえて、貴方達に普段、言われている、『女』である部分を強調する。
「お!女のクセに男の俺より成績が良いのがおかしいんだ!」
「でしたら、女なんかに負けないように頑張れば良かったのにね。ああ!馬鹿だから無理でしたね。無能ですものね」
「なっーー!」
思いっきり言い返せるって気持ち良いーー!私がいつまでも大人しくしていると思ったら、大間違いなのよ。
周りが私達の言い争いに気付きだして、ざわついている。
めでたい祝祭の最中に喧嘩するなんてどうかとは思いますけど、売られた喧嘩を買っただけですし、もし争いの原因を聞かれたら、私は正直にラドリエル公爵を馬鹿にした発言をしたと言いますよ?そうしたら、困るのはどちらか分かりますよね?
私の無言の圧の意味に気付いたようで、二人は慌てたように、その場から逃げ出した。
ーーーこれで逃げ切れると思うなよ?心は素直で可愛い私のアレン様を馬鹿にしたこと、絶対に許さないからーーー
「あの、ラドリエル公爵夫人……カリア様ですよね?先程、私の愚息が声をかけていたようですが、大丈夫でしょうか?」
騒動に気付いた女性の一人が、心配そうに私に声を掛けた。
「……ご心配ありがとうございます、モルガン男爵夫人」
「あら……私の事をご存知でしょうか?」
「ええ。先日、長男様が帝都の守護する騎士に選ばれたとか、おめでとうございます」
「まぁ……どうしてそれを?ありがとうございます」
私の同級生であるモルガン男爵の次男は、頭も悪くて無能だけど、長男の方は優秀。
悪魔の公爵であるアレン様の新しい妻である私ーーー今までのアレン様の妻は、皆が早々に逃げ出していたのに、私は逃げ出さず、アレン様と一緒に光の祝祭にまで出席した。こういった行事にアレン様が妻を連れて行くのは、初めてのこと。
悪魔と言われていても、皇帝陛下に信頼され、公爵の爵位まで頂いた帝国の副隊長。隙あらばお近づきになりたいと思うのは、貴族としては当然のことで、その足掛かりになるかもしれない、ラドリエル公爵夫人ーーー自然と注目されるだろうなとは思っていたけど、予想通り、私には人だかりが出来るほど、次から次へと挨拶に訪れる人が集まった。
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