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24話 光の祝祭
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ラドリエル公爵邸ーーーダイニングルームーーー。
「光の祝祭ですか?」
「……ああ」
昨日まで遠征でラドリエル公爵邸を留守にしていたアレン様は、今日は珍しく遅い出勤で、私はアレン様と久しぶりに、朝食をご一緒した。
アレン様とこうして顔を合わせるのは久しぶりなので、凄く嬉しい。
一週間も顔を合せなかったのは、毎日顔を合わせる約束をしてから、初めて。
出立前、神妙な趣で枕元に立っておられたアレン様に、『…………カリアの顔はもう見れない』と言われた時は何事かと思いましたけど、遠征で一週間、ラドリエル公爵邸を離れるという意味だと知って安心しました。確かに毎日顔を合わせる約束はしましたけど、そこはケースバイケースで大丈夫ですよ。
「私は参加したことはありませんが、とても盛大な行事だと聞いています」
光の祝祭は、皇室が主催する祝祭の一つで、帝国に仕える騎士を称えるもの。日頃、帝国に仕える騎士達に感謝すると同時に、大きな功績を上げた者に、皇帝陛下から褒美を与える場でもある。
光の祝祭は騎士を除けば、貴族の爵位を持つ家から出席が可能だが、私はお父様の意向で出席したことが無い。お義姉様は毎年出席されていますが、去年からはトランス伯爵であるユーリ様の婚約者として出席していましたね。
アレン様は一年前、そこで多大な功績が認められて、皇帝陛下から公爵の地位を授かった。
『魔物の襲撃を偶然察知したアレン様は、手柄を独り占めするためにわざと他の者達に知らせず、単身、魔物退治に向かい、全ての魔物を退けた。
結果として、アレン様は帝都を救ったが、その身勝手な行動は、一歩間違えれば帝都を危険に晒したとも非難されており、また、一人で多くの魔物を相手にし、その返り血を浴びた姿は、まるで悪魔のように強く、恐ろしいものだったと語り継がれているーーー』
……うん、これ、嘘ですよね?アレン様が手柄を欲しがって、一人で魔物退治なんか行きます?大体、一人で魔物退治に向かったのに、なんで返り血を浴びた姿を見た人がいるのよ。
「アレン様は、何故、一人で魔物を食い止めに行ったのですか?」
単刀直入に聞いてみる。
心を読んでみてもいいけど、私の力は万能じゃない。手に触れた時点で思ってくれていないと、欲しい情報は読み取れない。
「…………報告はした。誰も信じなかっただけだ」
「……そうですか……」
アレン様は今や、帝国を守護する騎士の副隊長を任されている立場……仕事関係とかのマニュアルで決められているようなことは、問題無く口に出せるみたいですし、部下達から冷たい鬼上司と勘違いされてはいそうですけど、、口下手だから信じなかったってわけではないと思いますけどーーーまさか、これもユーリ様の仕業ですか?あいつ、遡れば学生時代から、アレン様の悪評を流しているみたいですものね。
一度、徹底的にユーリ様を調べる必要がありますね。
「その……カリアには……………僕の妻として、一緒に………………参加して欲しい」
すっごい溜めましたけど、よく素直に言えました!!!
見て下さい!ビオラやスマルトだけじゃなく、他の使用人達まで、とても温かい目でアレン様を見つめているじゃありませんか!本気で怒ったら怖い方でしょうけど、皆、アレン様が本当はただの口下手で不器用な、根は素直で優しくて可愛い人だって気付き出しているんです!
素直になって欲しいという私のお願いを聞き入れて下さったアレン様は、まだまだこれからですが、少しずつ、素直な言葉を口に出すようになった。
「勿論です!絶対に行きます」
私の言葉に、アレン様は少しだけ、ホッとしたような表情を浮かべた。
最近は少しずつ表情にも出てくるようになりましたし、良い事です。
「……仕事に行ってくる」
「はい、いってらっしゃいませ」
仕事に向かうアレン様を笑顔でお見送りするが、内心はそれどころでは無かった。
ーーー参加に同意しましたけど、このままでは、非常にまずいーーー
一通りマナーやダンスは叩き込まれているし、実戦経験もあるけど、実は私、それ等がとても苦手だったりする。貴族令嬢・夫人としての能力より、勉強とか魔法の方が、得意。だから余計にお義姉様達には、貴族の女として無能扱いされてきたんですよね。
ラドリエル公爵夫人になったからには、アレン様に恥を欠かせない為にも、苦手なんて言ってられない!当日までに、なんとか形にしなくては!
「ーースマルト」
「はい、奥様。マナー講師とダンス講師は手配しております。本日中にもお越し頂けると思いますよ」
言う前に手配しているなんて、相変わらずスマルトは優秀ですね。
「奥様ならきっと大丈夫ですよ、私も張り切ってサポートさせて頂きます」
「……ありがとうスマルト」
「いえいえ」
グレイドル男爵家にいる時は、『何でこんな事しなくちゃいけないの』って反骨精神があったけど、今は、アレン様の為にも頑張ろうと思える。
「奥様、光の祝祭に向けて、ドレスが一段とお似合いになるように、本日より肌や髪のお手入れにも力を入れていきましょう」
ここぞとばかりに隣にいたビオラも口を挟む。
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