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18話 遭遇

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 帝国で有名なデザイナーのお店なだけあって店内は広いし、他の店員だっているし、嫌ならわざわざこちらに来なければいいのに……。

「お二人もドレスを買いに来られたんですか?」
「……それが分からないとは、お前も理解力が無いのか?」

 デザイナさんに引き続き、アレン様的には、仕立屋に来ているんだからそれ以外何の用事があるんだ、馬鹿なのか?と言いたいんですよね。間違いありません、このお二人は色々な意味で馬鹿なんだと思います。

「……これは失礼しました、無駄な質問でしたね」

 笑顔を崩していませんが、アレン様の態度にユーリ様は内心、苛苛しているでしょうね。

「それにしても……これは親切心で言うので、誤解しないで欲しいのですが、カリア様はもう少し、ご自身の身なりを気になさった方がよろしいのでは?君もそう思うだろう?マーガレット」

 私の頭のてっぺんから足のつま先まで見ると、ユーリ様は小馬鹿にしたように微笑み、義姉に同意を求めた。

「ええ、それはもう。血の繋がりが無いとはいえ、そんな貧相な格好、姉妹として恥ずかしい限りですわ」

 貧相な格好って……今着ているこの服のこと?動きやすくて気に入ってるし、市街に買い物に行くくらいなら、これでも充分だと思うけど。
 私の今日の服装は、昔から着ている緑のロングワンピース。装飾品は、結婚指輪くらい。
 対してお義姉様はーーーどこか、今からパーティにでも行くの?ってくらい、煌びやかな衣装に身を包まれ、指輪にネックレスにイヤリングにブレスレットに爪にはネイルーーーお義姉様はとても綺麗な人だから、着飾れば着飾るほど綺麗だとは思いますけど、たかが買い物に行く程度で、毎回そんなにお洒落して出掛けるんですか?

「このドレス、素敵でしょう?このネックレスも、ユーリ様が私にプレゼントして下さったんですよ」
「このくらいお安い御用さ、婚約者にはいつも綺麗でいて欲しいからね」

「へー」

 心底どうでもいい相槌を打ってみたんだけど、お義姉様達には伝わらなかった。そのまま気分良く話が続く。

「いーいカリア?私達貴族の女はね、いつ旦那様の隣を歩いても恥ずかしくないように、綺麗でいなきゃいけないの。隣に立つ女が貧相だと、旦那様まで恥ずかしくなってしまうでしょう?それなのに貴女ときたら、何なのその恰好は?」

 まるで女が男のアクセサリーみたい、貴族の女性は大変ですね……私もか。

「仮にもラドリエル公爵夫人になったのですから、そんな安物の服なんて着ないで欲しいわ……まぁ、肝心の旦那様に贈り物をされないのでしたら、仕方ありませんけど」

 この服は、まだグレイドル男爵家にいた時に、お父様達が、お前なんてこの程度の服で十分だって買ってもらった服なんですけど?不満があるならお父様達に言ってくれません?私は、動きやすくて可愛くて気に入っていますけど……。
 大体、お義姉様がお父様やユーリ様に買って貰っている服が高過ぎるだけで、普通です。

 お義姉様は、私が大切に胸に持っている魔法書にも目を向け、馬鹿にしたように笑った。

「服も買って貰えず、そんな安物の本をプレゼントされるなんて……カリアの価値が知れますわ」

 魔法書はパッと見、古汚く見えますが、実際はとても高価な物ですよ。
 そんな事をお義姉様に説明する気も無いけど。どうせ魔法を学ばせてもらえることになったと伝えても、お義姉様は馬鹿にするでしょうし、お義姉様に理解してもらうつもりはない。

 お義姉様達の言うみすぼらしい恰好をしている私を、アレン様に大切にされていないと判断したのか、ここぞとばかりに攻撃してくるお義姉様。そそのかしたのはユーリ様ですけど。

 高価なプレゼントを贈られ、着飾ることが、お義姉様達のいう、大切にされているということなのでしょう。人の形はそれぞれ。お義姉様達がそれでいいならいいとは思いますけど、私にまで押し付けないで欲しいです……ちゃんと、TPOに合わせて服装は選びますから、ご心配無く。

「まぁ、いかに着飾ったところで、私の足元にも及びませんわ」
「……そうですね」

 『外見美人なのに、心が汚過ぎて、私にはお義姉様が汚物のように見えます』と言ったら怒られそうなので、今は止めておきます。
 もう早く気が済んで離れて欲しいので、ただただ聞き流している私。


「お待たせしましたアレン様、カリア様ーー!こちら、当店自慢のドレスになります!」

 私達の要望を受け、店の奥に引っ込んでいたデザイナーさんが、他の店員も手伝い、最高級のドレス達を運んで来た。

「おや、ユーリ様、マーガレット様。いらっしゃいませ、ご来店ありがとうございます」
「やぁ、今日はマーガレットに、祭典で着ていくドレスを選んであげようと思ってね」

 ユーリ様とお義姉様はデザイナーさんと顔見知りのようで、軽く挨拶を交わしていた。

「折角だからご一緒させて下さいよアレン様。俺がマーガレットと結婚すれば、俺と貴方は親戚になるのですから、仲良く致しましょう」

 返事を待たずに、ユーリ様とお義姉様は私達の為に用意されたドレスを見始めた。

 なんて図々しい奴等なの……
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