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13話 元凶③
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ーーー心を読める。それはある意味卑怯な裏技。
きっと誰もが心を読まれるとは思っていないだろうし、無防備な状態を土足で踏み荒らされたようなものかもしれない。かと言って全ての心が読み取れるかと言えば、そうでは無い。
手に触れている間、相手が思った事を読み取るだけで、知りたい事を毎回都合良く読み取れるワケでは無い。
それに、彼氏彼女でも無い相手の手に自然に触れるのも、中々に困難だったりする。
「クレパス、お茶を入れてくれる?」
「…はい」
カップにお茶を入れている間に手に触れようかともしたけど、そんなに急に触れられても向こうも不審がるでしょうし、その一瞬で都合良く、私の知りたい情報を考えているとは、思えない。
まだ何か隠し事があるかもしれないと思って、情報が欲しかったんだけど……そんなに都合良くはいかないか。
「あの、奥様……また私を身支度に呼んで下さい」
「ごめんなさい、メイドの管理は全てビオラに一任したの。だからビオラに聞いてくれる?」
またサザンカを身支度に呼びつけて、心を読もうかとも思ったけど、あの一回ですら、ビオラが『あんな未熟者に奥様のお世話をさせるわけにはいきません』と嫌がっていたのを無理強いしたから、強行しづらい。『どうしてもするなら、私が傍にいてサザンカを指導します』と言われた。
ビオラの監視付きでサザンカの手に自然に触れられるかなーーっと思って、諦めた。
クレパス達が私にアレン様の人身売買疑惑を告げてもう二週間。
餌も撒いたし、きっともうそろそろ、動きがある頃かな?
なんて思っていたら、すぐに動きがあった。単純で短絡的。我慢が効かない性格で助かるわ。
「奥様、いつ、ここから逃げ出しますか?」
中々ラドリエル公爵邸から逃げ出さない私に業を煮やしたクレパスとサザンカが、わざわざ誰もいない深夜、私の部屋まで訪ねて来た。
昼間はいつも誰かしらを私の傍にいるようにしたから、こんな主人を貶める嘘の内容、他の人の目がある所では話せないものね。
「えっと……逃げ出すって?」
「前に話したじゃありませんか!アレン様が、奥様を人身売買で売り払おうとしているって!」
「あれってーーー本気だったんですか?」
「はぁ?」
私のすっとぼけた発言に、クレパスとサザンカは苛立っているようだった。
「クレパスとサザンカが悪ふざけで言っているのだとばかり思っていました。アレン様が、そんなことするはずありませんもの」
本当は優しい妻想いの人。そんな人が、私を人身売買に出すわけがありません。それに、本当にラドリエル公爵が人身売買に手を出していたら、大事件ですよ?犯罪ですよ?世間を賑わす大事ですよ?そこんとこ分かっています?
「何言ってーーアレン様は、悪魔の公爵ですよ?!今までだって、気に入らない使用人を斬り付けたり、歴代の奥様を殺そうとしたこともあるんですよ?!」
「そうです!その都度、私達が皆さんを逃がしてあげていたんです!」
ーーーふふ。本当に、馬鹿は単純で助かります。まさか心を読まずとも、自分で自白してくれるんだもの。
私は微笑みを隠さず、彼等に見せつけた。
「な……奥様?」
私の意味深の微笑みが、彼等には不気味に映ったんでしょうね、なんとも面白い、ひきつったような表情を浮かべた。
心を読んだだけでは、証拠にはならない。
私が、いくら彼等が全て仕組んだことだと言っても、信じてくれないでしょう。
「人身売買の件は自分から自白してくれると思っていましたけど、まさか、過去のお話まで口に出して下さるとは思っていませんでした。本当にありがとうございます。これで、貴方達の罪が明白になりましたね」
「は?一体、何を仰っているんですーーかーーー」
お忘れですか?私は、引っ越しをしたんですよ?アレン様の隣の部屋にね。
隣の部屋の扉が開くのを、クレパスとサザンカは、まるで死刑台に上る死刑囚のような、絶望の表情で見ていた。
「アレン…様!?」
「やっ!嘘!何で?!アレン様は、今日は遠征で帰って来られないってーー!」
魔物退治には出かけましたが、遠征は嘘です。スマルトにお願いして、嘘の情報を流して、貴方達を誘き寄せる餌にさせて頂きました。
貴方達は真面目に働くのが限界なのか、最近はよく仕事を抜けだしてサボっていることが多かったので、アレン様は貴方達に見つからず、簡単に部屋に帰れましたよ。
貴方達が過去、私がアレン様と出会わないようにしていたのと、同じ事をさせて頂きました。
「……どうゆうことだ?カリアを人身売買で売る?誰がいつ、そんなことを話した?いつ、僕が使用人を斬り捨てた?ーーー妻を殺そうとした?」
アレン様は私の元まで来ると、今回こそ嘘ではなく本当に、使用人である彼等に激しい殺意を向けた。
「い、いえ……これは、そのーー」
アレン様の殺意に触れ、上手い言い訳が思いつかず、体をガタガタ震えさせながら、言いよどむクレパス。
近くで隠れて待機していたスマルトとビオラも、その場に姿を見せ、二人を取り囲んだ。
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