心が読める令嬢は冷酷非道?な公爵様に溺愛されました

光子

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11話 元凶

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「アレン様、私は、きちんと愛を定期的に、素直に(大切なので三回目)言葉にして欲しいんです」
「…………何故?」

 《わざわざ言わなくても、結婚しているんだから好きだと分かると思うが……》

「口にするのが大切なんです!」

 全てを素直に口にするのはまだ難しいでしょうから、最初は好きの一言から始めましょう!愛さえ囁いてくれれは、とりあえずは、私は満足します!

「アレン様はとても優しい人です」

 ーーーどこがだよーーー
 と、周りからツッコミが聞こえる気がしますが、スルーします。

「私は、アレン様が皆様に冷たい人だと勘違いされているのが、とても悲しいんです…」
「……」

 ーーー勘違い?ーーー
 心を読んでいないのに、周りの視線から、そう言われている気がしますね。


「私はアレン様を……まだ出会ったばかりで、正直、好きかと言われれば、まだ分かりません」
「……」
「でも、私はアレン様を好きになりたいと思っています。幸せにしたいと、一緒に、温かい家庭を築いて行きたいと、思っています」

 アレン様の素直な気持ちは、勝手に心を読んで伝わっていますし、アレン様が素直に口に出来ない分、私は、きちんと言葉に出して、気持ちを伝えていきます。いつか貴方が、素直な気持ちを口に出来る日がくるようにーーー。



 ***

「アレン様相手にあんな事が仰れるなんて……奥様はとても勇気がお有りなんですね」

 一足先に、仕事が残っているとダイニングルームを出たアレン様。
 新しく執事になったスマルトがアレン様に同行し、クレパスはダイニングルームに残り、空いた私のティーカップにお茶を注きながら、先程までの私とアレン様の会話について感想を述べた。

「そう?旦那様に愛を囁いて欲しいとお願いしただけよ?」
「悪魔の公爵と呼ばれるアレン様にそれを言えるのが、勇気がいることです」

 心を読めない人からすれば、アレン様は表情一つ変えない、無表情の冷たい人ですもんね……しかも、周りから悪魔の公爵と恐れられている人。私もその噂を聞いていたから、最初、アレン様を怖い人だと思っていたし。

「……ラドリエル公爵邸に手を加えることを許されたり、使用人との窓口を許されたり、アレン様とお食事を共にしたり、お部屋が隣になるのを許されたりーーー長い間ラドリエル公爵邸に務めていますが、全て、奥様が初めてのことです」

 頼んでみたら意外と簡単に許可をくれましたよ。
 住まいに無頓着でしたけど、お家が綺麗になっていくのは嬉しそうな感じでしたし、使用人が増えて、特に優秀な執事のスマルトが補佐に付くようになって、内心とても喜んでいました(心読み取り済み)。
 スマルトもビオラも、他の新しい使用人達も、いつか、私の窓口無しで、直接アレン様と関われるようになって、アレン様が本当は優しい方なんだと分かって頂けると、嬉しいーーー。


「……奥様、ここだけのお話なのですが……」

 クレパスはそう言うと、他の誰にも聞こえないように、私の耳元で小声で話し始めた。

「早くラドリエル公爵邸からーーアレン様からお逃げになった方が良いと思います」
「え?」
「実は……聞いてしまったんです。アレン様が、奥様をーーー売り払おうと企んでいるのをーーー」


 ーーーん?


「売り払う…?アレン様が?私を??」
「はい。どうやら人身売買に手を出されているようで……ですから、アレン様は奥様が逃げないようにと、今まで優しく、好き勝手にされるのを許していたんだと思います」
「……」

 えっとーーー信じられないんだけどーーー。

「悪魔の公爵の犠牲者にならない内に、どうか、早くお逃げ下さい」

 100%の善意で、クレパスは私に、アレン様から逃げるように忠告しているように見える。
 長い間ラドリエル公爵邸に仕えてきた執事からの忠告。普通なら、聞き入れてしまうのかもしれないけれど、ごめんなさいクレパス。

「……そうだったのね……まさかアレン様が私を売り払おうとしてるなんて……!早く、逃げなきゃ……!」

 私はクレパスの忠告を受け入れたフリをして、彼の手に触れた。

「私のことを心配してくれてありがとう」
「いえいえ。大切な奥様に何かあれば、悲しいですからね」

 《早くここから出て行け!お前が来た所為で、サボっても金だけ手に入る働き易い環境がめちゃくちゃだよ!》

 ーーーとてもじゃないけど、貴方を信じられないわ。




 *****


 ーーー数日後ーーー


「奥様、お呼びでしょうか」
「サザンカ、お呼び立てしてごめんなさい」

 私は自分の部屋にサザンカを呼び付けると、ビオラを下がらせ、二人っきりにしてもらった。

「是非、貴女に私の身支度をお願いしたくて呼んだの。貴女は、私が来る前からここで頑張って働いてくれていた人だもの」
「……ありがとうございます奥様、光栄です」

 私の言葉に、サザンカは笑顔を浮かべ、頭を下げた。

「髪をといてくれる?」
「はい」
「ほんの少し前は、人が少なくて、身支度もお願い出来なかったものね」
「……そうですね」

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