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9話 心の中は素直で可愛い旦那様
しおりを挟む《僕の仕事の時間は、とても朝早かったり遅かったりするから……それに妻を巻き込むのは、悪い。カリアには、のんびりと穏やかに、この家で過ごして欲しいんだ》
「……」
うん、もっと別に言い方ありましたよね?迷惑って言い方は違いますよね?
「そこまで言うなら、ここから出ていけばいい」
《もう少ししたら仕事が落ち着くから、それまで気分転換に、旅行にでも行って来たらどうだろう?使用人も増えるように今手配しているし、帰ってくる頃には、ここも少しは綺麗になっている筈だ》
「ーーっ」
だから、言い方考えてーーー!!!
「アレン様、私はラドリエル公爵邸から出ていきません」
こんな言葉足らずな言い方してたら、そりゃあ歴代の奥様達は出ていきますよ!でも、残念ながら、私には通じませんよ!
「……何故?」
心底不思議そうに思わないでくれます?折角の良い提案だとでも思ってるんでしょうけど、私は別に、のんびりダラダラ過ごしたいワケじゃないんです。
「私は、アレン様の妻になったんです。アレン様と、一緒に温かな家庭を築いていきたいんです」
「…!」
見つめているアレン様の目が、一瞬、大きく見開いたと思ったら、少しだけ耳が赤くなっているのが見えた。
《僕の妻になったなんてーー温かな家庭を築いていきたいなんてーーー嬉しいぞ!嬉しすぎて、どう反応すればいいんだ?》
「……………………好きにしろ」
迷いに迷ってそれですか?心の中とふり幅、激しすぎません?
「はい、私の好きにしますね」
心を読める私に、そんな天邪鬼通じませんよ?もうこうなったら、私も、アレン様を幸せにしてあげます。心の中は素直で可愛い私の旦那様。
「手始めに、毎日顔を合わせるところから始めましょうか」
私の提案に、アレン様は今度は渋々、心の中は歓喜で応じて下さった。
ーーー更に更に二週間後ーーー
「奥様、全ての電球変え終わりました」
「奥様、外壁の塗装と、窓ガラスの修繕完了しました」
「奥様、庭のお手入れ終わりました」
「奥様、全部屋の清掃と、奥様の部屋の引っ越し完了しました」
私はアレン様に代わり、新しく迎え入れた使用人達の窓口になった。
「皆さんありがとうございます。アレン様もお喜びになると思います」
アレン様では、折角新しく来た使用人が怖がって、また辞めてしまうかもしれないので、アレン様の許可をもらい、私が家の管理を請け負った。
最初は、アレン様のお力で無理矢理雇われた使用人達しか来なかったけど、新しくラドリエル公爵夫人になった私が、アレン様との橋渡しを上手く行っていると、風の噂で広がると、向こうから雇って欲しいと応募が来るようになった。
悪魔の公爵なんて噂され、無愛想で天邪鬼な発言しか出来ず、誤解されやすいアレン様のせいで、退職者は続出、使用人不足に悩まされてきましたが、本来、名のあるラドリエル公爵家のメイドに執事、料理人等などーーー決して給金は安く無いし、ここで働けるのは、名誉なことなんです。
それにーーー
「是非、ラドリエル公爵様のもとで働かせて下さい!」
《へへ!人手不足って聞くし、今ならカリアがラドリエル公爵邸を仕切ってるって聞く、女相手なら、適当に働いてもバレねーだろ!適当に金目の物盗んで、悪魔の公爵様の所為にして逃げれば問題無い!》
「不合格です。二度とラドリエル公爵邸の敷居を跨がないで下さい」
「……ええ?!な、何でですか?!」
ーーー私が、新しく雇う使用人達の面接も行った。
一通りの面接を終え、最後に握手をして交わしてもらうのだけど、その時に読めた汚い心の持ち主は、不採用にした。
その中には、悪魔の公爵なんてアレン様の異名を利用して、金品を盗み、アレン様に暴力を振るわれ、命からがら逃げ出した。なんて、根も葉も無い噂をばら蒔こうとしている輩もいた。
即、不採用。二度と来るな。
お陰様で、今、ラドリエル公爵邸にいる使用人達は、皆さん良く働くし、気が利くし、良い人達ばかり。
やっぱり、皆アレン様に怯えてはいるけど……私が間に入ったりして、上手く取り持っている。
「奥様、これはこちらに置いておきますね」
「奥様、アレン様の本日のお帰りの時間をお伝えに来ました」
新しくメイドとして雇った《ビオラ》と執事の《スマルト》の二人は特に優秀で、ここに来て数週間だけど、私が望むことを口にする前にしてくれる。
「ありがとう」
今日から、私の部屋はアレン様の隣になった。
あれから毎日、どれだけ忙しくても、私の顔を見に訪れてくれたアレン様。
それを利用して、『部屋も遠いし、大変でしょう?隣なら、すぐに顔を見に来れますよ?』と理由をつけて、無事にアレン様の隣の部屋に引越しが出来た。
これなら、アレン様が部屋にいるのも、出ていくのも、帰ってきたのも分かりやすい。
「奥様、遅れてしまい申し訳ありません…!」
「サザンカ」
「……サザンカさん、貴女、遅刻が多すぎます。奥様をお待たせするなんて、恐れ多いことですよ」
「…申し訳ありません…」
ビオラに苦言を呈されるサザンカ。
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