心が読める令嬢は冷酷非道?な公爵様に溺愛されました

光子

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6話 ラドリエル公爵邸

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 《カリア。これから君は、僕が守る》


「……ありがとうございます、アレン様」
「?……別にいい」

 私のお礼の言葉を、アレン様がどう捉えたのかは分からない。
 披露宴会場から連れ出してくれたこと、お義姉様から守ってくれたこと、支えてくれたことーーー沢山、アレン様に感謝しているけど、一番は、彼の心の声、彼の思いが嬉しくてーーー彼に感謝の気持ちを伝えた。


 ***


「マーガレット、大丈夫?!」
「お、お母様…!怖かったですわ!私、アレン様にあのまま殺されるかと思いました!なんて野蛮なの!」

 カリア達が去った披露宴会場では、泣き喚くマーガレットを、スミンが抱きしめながら宥めた。

「酷いですわ……!私、何も悪い事なんてしてないのに!」
「そうね、マーガレットは何も悪くないわ。悪いのは、カリアよ!カリアがあのまま余計なことを言わなければ、全ては上手くいっていたのよ!」

 いつものように、都合の悪いこと全てを、カリアの所為にする二人。

「マーガレット」
「ユーリ様…私、悔しいです!あんな不出来な、家族の一員にもなれないカリアが、私を虐めるなんて……あんまりです!折角、アレン様が妹に騙されないように、妹の本性を知ってもらうために、黒いウェディングドレスまで用意したのに……!」

 悪魔の公爵にカリアが気に入られる。その万が一の可能性を潰す為に、わざわざ、計画を立てた。それなのに、あのアレン様が、カリアを守ったように見えた。

 ユーリに差し出されたハンカチを受け取ると、今更ながら、マーガレットは淑女のように大人しく涙を拭いた。

「もしこのまま、カリアなんかが、アレン様の寵愛を受けることになったらーー」

「そんなことあるはず無いさ、アレン様は冷酷非道な悪魔の公爵。今は良くても、いつかきっと、カリア嬢はアレン様のもとから逃げ出すに決まってる。その時に、マーガレットは助けを求めるカリア嬢を追い返せばいいのさ」
「そうよ、マーガレット。あんな不出来な女、すぐにアレン様の逆鱗に触れて、ズタボロにされるに決まってるわ!」

 スミンとユーリの励ましに、笑顔を徐々に取り戻すマーガレット。

「ユーリ様……お母様……そうよね!きっとそうですわね!ありがとう二人共!」

 気を取り直したマーガレットは、スミンとユーリ、二人にガバッと抱き着いた。




 ***


 ラドリエル公爵邸ーーー。

 今日からアレン様と結婚し、ラドリエル公爵夫人となった私も、ここで過ごすことになる。

「……」

 馬車に揺られること数時間ーーーラドリエル公爵邸と言うからには、とても綺麗で、豪華で、素敵なお家だと想像していた。

 ボロ……いや、ボロくは無い……のか?全然、綺麗にされていないだけ?

 だが、予想は外れ、立派なお屋敷ではあるが、外装は長い間掃除をしていないからか薄汚れ、庭は草木が荒れ放題、窓ガラスは所々割れていて、まるでホラー映画に出てくるような洋館で、素敵なお家とは言い難かった。

 何故???皇帝陛下にも認められるほど優秀な公爵家でしょう?
 結婚式の費用、全額負担するし、ドレスも聖歌隊も買ったり呼べたりするほどのお金を持っているんですよね?何故それで家の整備をしないんですか?無頓着すぎるでしょう?!これじゃあ、婚約者もお嫁さんも逃げ出したくなりますよ?!
 注意 アレン様には、婚約解消&離婚歴がある。

「君の部屋はもう用意してある」
「ありがとうございます……」

 屋敷の中も暗すぎません?ちゃんと電灯変えてます?


「ーーお帰りなさいませ、アレン様」
「……ああ」

 屋敷の中に入ると、一人の若い執事が私達を出迎え、アレン様に頭を下げ終えると、今度は私の方に向き直した。

「新しい奥様ですね?初めまして、私は執事の《クレパス》と申します」

 新しいって。そんな、奥様をとっかえひっかえしてるみたいな言い方ーーー実際そうなのか。

「カリアを部屋まで案内してくれ」
「かしこまりました」

 それだけ執事に伝えると、アレン様は私を置いて、スタスタと奥に進んでしまった。

「奥様のお部屋はこちらでございます」
「……あの、アレン様はどちらに?」
「アレン様は自室にお戻りになられました」
「自室?」

 私が今から案内されようとしているのは、アレン様のお部屋がある場所とは正反対。妻なのに?旦那様とお部屋が離れているんですか?

「アレン様は自室に誰も近付いて欲しくないようで、歴代のどの奥様とも、部屋は離しておいでです」
「そうなんですね」

 プライベート空間を大切にしたい人?でも別に言ってくれれば、勝手に部屋に入ったりしないけど……。

「どうぞ」

 案内されたのは、とても公爵夫人に用意された部屋とは思えないほど、薄暗く汚い、ホラー映画そのままの部屋。掃除とかしてます?蜘蛛の巣とか張ってるんですけど……。

「申し訳ございません。ただ今ラドリエル公爵家は、使用人が次から次へと辞めてしまい、人材不足でしてーー」

 ああ。悪魔の公爵様にビビって、辞めてしまうのね……。

「全然問題無いわ。箒とちりとりを後で貸してくれる?自分で掃除するから」

 グレイドル男爵家でも、私の部屋だけ清掃が入らなかったから、自分で掃除していました。だから、掃除はお手の物なんですよね。
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