上 下
16 / 17

16話 イベント③

しおりを挟む
 

 空を見上げると、授業終了の合図を告げる狼煙が見えた。

 もう授業はお終いか……結局、上手くいきませんでしたね。
 授業いっぱいを使って頑張ってみたけど、結局、魔物は倒せなかった。

 次からの森での授業、どうしよう……先生に、倒せないけど、一人で参加させて下さい。って言って許可してくれるかな……?いや、今日もサステナ王子が一緒じゃ無かったら怪我してたくらいだし、無理か。何か方法を考えないと……。

「ーーおい」

「はい!あ、課題はクリア出来ませんでしたが、サステナ王子が特訓に付き合ってくれたおかげで、少しは上達出来たような気がします!」

 目標は達成出来なかったけど、特訓に付き合ってくれたサステナ王子には、感謝しかありません!本当は私の事、大嫌いで顔も見たくない相手だろーに、償いのためにペアになってくれるなんてーーー俺様で口は悪いけど、本当は良い人!ですね!流石は攻略対象キャラ!これなら、ヒロインがサステナ王子を選ぶのも納得出来ます!

「そ、そうかよ!俺に感謝しろよ!」
「はい!私を守って頂いて、ありがとうございました!」
「…守る……俺が…!」

 感謝を伝えるたびに、何故かサステナ王子の顔が赤くなっている気がしますけど……どうしたんでしょう?風邪?嫌いな相手と一緒にいてストレス溜まっちゃったのかな?それは申し訳ない!

「お約束通り、これから先私は、サステナ王子に付きまとったりしません。なるべく関わらないように学園生活を送っていくので、安心して下さいね」

 どうぞどうぞ、好きなだけ好きな人と恋愛して下さい!マリアもヒロインに相応しく、優しくて凄くいい子だし、遠くのほーから、応援します!私のいないところで、物語をじゃんじゃん進めていって下さいね!

 それよりも私は、これから先の自分のことで頭が一杯です。
 どうしよう……次の森の授業は、申し訳ないけどマリアに頼み込んで、ペアになってもらおうかな……

「ーーおい!」
「?はい」

 サステナ王子ほったらかしで考え事をしていると、頭上から声を掛けられた。
 いけないいけない。つい、サステナ王子と一緒にいるのを忘れてしまいます。

「ーーし、仕方ねぇから、また、俺がお前とペアを組んでやってもいーぜ?」

「へ?」

 婚約破棄を突きつけてくるくらい、私の事が嫌いなサステナ王子が、何故に私と???

「勘違いするなよ!俺はただ、誰ともペアを組んでもらえねーお前が哀れで仕方ねーから、仕方なく!仕方なくペアを組んでやってもいいって意味でーーー!!」

 ああ、そういう意味で……。

「大丈夫ですよ!サステナ王子にそんなご迷惑をかけるわけにはいきません!」

 今日はありがたくペアを組んでもらいましたけど、本来、私のモットーは、ヒロインと攻略対象キャラの邪魔をしない!です!
 出番の終わった悪役令嬢なんかに構っている時間が勿体無い!そんな事している暇があるなら、ヒロインとの好感度アップに時間を費やさなきゃ!

「サステナ王子は、王太子候補として色々お忙しいでしょう?それなのに、私なんかの相手をしてもらうなんて、恐れ多くてーーーとてもじゃありませんが、お断りします」

「うるせぇ!別にいーんだよ!たまにだ!たまに!気が向いた時だけ、またペアを組んでやるっつってんだ!」

「…え…」

 その台詞、確かーーーヒロインが初期、サステナ王子に言われる台詞じゃなかったっけ?遠慮したヒロインに対して、俺様で素直じゃないサステナ王子が言う台詞。
 何で私に?

「いいんですか?私のこと、怖いんじゃありませんか?」

「誰がお前なんて怖がるか!怖がってなんかねーよ!」

「はぁ…」

 素直じゃない!絶対に怖がってたのに!

「では……お言葉に甘えて、たまに、お願いしてもいいですか?嫌になったら、すぐにお断りして頂いて大丈夫なので!」

「仕方ねーな!たまにだからな!」

 ……本当にいいのかな?婚約破棄するくらい嫌いだった私と関わるなんて……そもそも、悪役令嬢とサステナ王子が和解していた描写なんて、ゲームには一切無かったのに。
 裏設定多過ぎて、プレイヤー置いてけぼりじゃない?悪役令嬢なんて用が無くなったらゲームに登場させる必要ないと思ったのかもしれないけど、せめて攻略本に小さくオマケとして書いておいてくれれば良かったのに。そうしたら、いざ悪役令嬢に転生した時に助かるんだから。

 でもーーーサステナ王子が助けてくれるのは、正直助かる!
 これで、マリア以外にもペアを組んでくれる相手が出来た!マリアばかりに頼るのもよくないですもんね!マリアは週一、サステナ王子はーーたまにがどれくらいの頻度か分かりませんが、ペアを組んでくれる!

 二人が私に付き合ってくれている間に、何とか!何とかFランクの魔物を倒せるようにならなきゃ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

【電書化により作品引き上げ】貧乏令嬢は婚約者への最初で最後の贈り物を婚約解消に決めた

キムラましゅろう
恋愛
アネットは両親の死後、名ばかりの女性男爵となった。 借金は全てを売ってほとんど相殺となったが、爪に火を灯すような貧しい暮らしを余儀なくされていた。 そんな中、アネットに縁談話が持ち込まれる。 相手は平民だが魔法省高官の超エリート。 平民ゆえの軋轢を回避するために、名ばかりでも男爵位を持つアネットに白羽の矢が立ったのだ。 見合い相手のトリスタンは札束で鼻をかめると揶揄されるほどの金持ち。 だがその性格はかなり難ありで……? いつもながらの完全ご都合主義。 ノーリアリティノークオリティなお話です。 あー……誤字脱字?うん、ごめんね?<(_ _*)>ペコリ 小説家になろうさんにも時差投稿します。

追憶のシェリナ

カギナカルイ
ファンタジー
大陸全土を巻き込んだ大戦から三年。操魔士(ソーサラー)の少女・シェリナは、失った母の形見を求めて辺境の街アノレアを訪れる。 出会いと別れ。恥辱の悲劇と愛欲の楽園。その、ひとときの記憶。

傷物扱いされていても私はあなたと結婚したい

しゃーりん
恋愛
アニオン王国の公爵令嬢ユラは一年間だけ隣国キャロル王国に留学に来ていた。 ある日、呼び出された部屋で待っていると体調がおかしくなる。 飲み物に媚薬が入っていた。 たまたま入ってきた人に助けてもらうが…ユラが傷物だと学園に張り紙がされた。 助けてくれた人は婚約者がいる人だった。 しかし、ユラを傷物と笑う婚約者に失望し婚約を解消した。 傷物扱いされるユラと彼女が気になっていたアレンのお話です。

魔女のなりそこない。

ごろごろみかん。
恋愛
嫁いできたばかりのエレメンデールは、聞いてしまった。 「エレメンデールに優しくするのはただの義務だ」という夫の言葉を。魔女の血を引く彼女は、生まれながらに虐げられて育った。夫に優しくされて、初めて人の優しさに触れた。 だけどその淡い想いを打ち砕いたのは、夫本人だった。 ショックを受ける彼女に、夫──ロディアスは告げた。 「第二妃を迎えようと思う」と。 名を挙げられたのは、ロディアスの恋人として密かに有名な令嬢、ルエイン。 私は、二人の邪魔になっているのでは──? そう感じたエレメンデールは、ひとつ、彼に嘘を吐くことにした。 *効率的で合理主義な男が、失って初めてその存在の大切さに気が付くお話 *R18は激しめです

【R18】××に薬を塗ってもらうだけのはずだったのに♡

ちまこ。
BL
⚠︎隠語、あへおほ下品注意です

強気敬語同期君と作る♡ドスケベ指導マニュアル

BL
とにかく仕事ができない真野は優秀な同期の多野を「指導係」として宛がわれ、悶々な日々を送っていた。ところがひょんな流れで自分の没企画『最強ドスケベ指導マニュアル』の制作を多野と共に任されることになり、その企画に託けてここぞとばかりにあらゆるスケベを「指導係」として多野へ行使していくが──? 凸凹2人のドスケベ時々エモラブコメディ。 攻め:真野拓斗(まのたくと)/ 好きなことしか努力できない暫定無能君 受け:多野繭人(たのまゆと)/ 好きなものには滅法ちょろい不遜有能君 「凸凹まのたの」 完結済の作品を実験的に毎日連載投稿しております(21時投稿) pixiv/ムーンライトノベルズに完結版を投稿済みです! なにかありましたら(web拍手)  http://bit.ly/38kXFb0 Twitter垢・拍手返信はこちらにて  https://twitter.com/show1write

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

処理中です...