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12話 マリアの好きな人
しおりを挟む冗談でも、私を独占出来るなんて言ってくれて、嬉しい。こうやって話していて、胸がドキドキするのは、ウィルだけーーやっぱり私は、ウィルが好きなんです!
やっぱり目指します!非攻略対象キャラ、悪役令嬢の執事ウィルとのハッピーエンド!
*****
新学期が始まり、はや二週間ーーーお昼休みは大概、私は中庭で過ごす。
この季節は風が気持ち良いし、学園の中庭は綺麗で景色もいいし、何より人が少なくて、ぼっちに優しい!食堂なんて、皆お友達と一緒で、私のぼっちがより一層、際立ちますからね。
「ティセちゃん……あの、これ……良かったら、ティセちゃんの為に、タコさんのウィンナーを多めに作ってきたんです……」
「本当?ありがとうございますマリア!嬉しい!」
「お、お口に合えばいいのですが……」
ぼっちのはずの私の隣には、何故か光の聖女である、このゲームのヒロイン、マリアの姿。
「美味しい…ですか?」
「うん!私、マリアの作るご飯、大好きです!」
「…ほ、本当ですか…?嬉しい…」
タコさんウィンナーを頬張る私を、幸せそうな笑顔で見つめるマリアーーー何故?
おかしい!何で私が、マリアと一緒にお昼ご飯食べてるの?!しかもあれから毎日!ヒロインの手作りお弁当は、攻略対象キャラの物なのにーー!
「ねぇマリア、無理して私とお昼食べなくていいんですよ?もっとこう、ほら、好きな人と一緒に食べるとかーー」
「あ……わ、私が一緒にご飯を食べたいのは……ティセちゃんなので……」
何、その頬を赤らめて言うキラーワード。可愛過ぎか!ーーーて、そうじゃなくて!攻略対象キャラそっちのけで、私とお昼休みを過ごしてるけど……いったい、進行状況はどうなってるの?
「マリアは、好きな人とかいないの?」
「え…!あ…その……」
あら、その反応、好きな人はいるっぽい!
「その人とは、いい感じなんですか?」
「あ……えっ…と、最近は、その……一緒に過ごす時間が増えたりしていて……」
「そうなんですね!それは良かったです」
なぁーんだ!ちゃんと私の見えないところで、イベントは進んでいるんですね!なら、もう少しくらい、お昼休みに私がマリアを借りててもいいかな。
私も本当は一人より、お友達と一緒の方が楽しいもんね!
***
「ーーー随分、光の聖女様に懐かれましたね」
光の聖女であるマリアは、私達一般の生徒と違って、稀に特別な授業に出席するから、今日の午後からの魔法授業には不参加。お昼ご飯を食べ終えた後は、マリアと別れて、私は今日の授業場所である、学園に併設された森にウィルと一緒に向かっていた。
「懐かれたワケじゃないと思うけど……多分、私がぼっちで可哀想だから、放っておけないんだと思います」
マリアは心優しいヒロイン属性なんですよね。だから、私みたいな悪役令嬢のことも放っておけないんです!きっとゲーム本編でも、語られなかっただけで、ヒロインは悪役令嬢を気にかけてくれていたんだろうなー。
「ティセお嬢様は鈍感なんですね」
「???」
学園に併設された森には、魔物が生息している。
勿論、外に魔物が出ないようにしっかりとバリアが張られていて、ここは、生徒達が魔法訓練として使う場所の一つになっている。
魔物の強さはA~Fで分類されていて、Aが最も強い。その中で学園の森には、下級のC~Fの魔物が存在している。
学園の森は三年生になってから開かれる新エリアで、行くのは今日が初めて。
ここで、ヒロインは攻略対象キャラと様々な困難を乗り越え、愛を育んでいくーーー。
「実戦かぁ……私にいったい、何が出来るんだろ……」
もう絶望しかない。
ただ、影の中に隠れるしか出来ない魔法で、どう乗り切っていけばいいのかーーー今日も先生とペアを組ませてもらおう。
先生も私に友達がいないことはもう周知しているので、いつも少し悲しい顔でペアになってくれる。マリアとペアを組んだ時、『ティセ様にやっとお友達が…!』って、何気に先生が一番感動してくれていたもんね……。
「はぁ……闇属性じゃなければな……」
「……ティセお嬢様は、闇魔法を少しは使えるんでしょう?闇魔法は属性を持っていても使えない人が多いですし、それだけで充分じゃないですか」
「非戦闘魔法しか使えないですけどね」
「充分ですよ」
「ウィルは、魔力を持っていないんでしたっけ」
魔力を持っていなくても、珍しくない。
国民の三分の一は魔力を持っていないし、持っていても、闇属性で魔法を使えないとか、少ない魔力しか無いとかーーーだから、強い魔力を持っている人は優遇されるし、希少な光属性の魔力を持つマリアは、聖女として崇められる。
「……はい、俺は魔法は使えませんね」
ゲームでも、非攻略対象キャラであるウィルが魔法を使う描写は一切無い。
「魔法も使えず、爵位も無い、ただの使用人の俺が、本当に好きですか?」
「はい!それはもう!」
食い気味に肯定すると、ウィルは驚いたように目を丸めた。
魔力が無いのも、爵位が無いのも、執事なのも、全て知っていて、ウィルを好きに決まってるじゃないですか!私は、本当に、ただただ、貴方が好きなんです!
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