10 / 17
10話 悪役令嬢からの解放
しおりを挟む「あれは!お前がマリアを虐めたからーーー!」
「私が、マリアを虐めていた証拠は無かったはずです!事実無根です!」
ゲームの悪役令嬢と違って、私はヒロインを虐めていないんだから。
「それはーーー」
ゲームの悪役令嬢は、こんなに嫌われているのに、それでもサステナ王子が好きで、手に入れたかったんですねーーーでも、もうそろそろ、サステナ王子も解放されるべきです。
「サステナ王子、私、サステナ王子のこと、好きじゃありません」
「ーーえ?」
「もう好きじゃなくなったんです。だから、もう二度と貴方に付きまとったりしません。安心して、好きな人と恋愛して下さい!」
暗に、ヒロインとの恋路を邪魔しませんよ!とアピールしている。
私の言葉に、サステナ王子は憑き物が落ちたように、穏やかな表情に変わった。
ずっと、私の重すぎる愛に苦しんで、張り詰めていたんでしょうね。私はこの人のこんな穏やかな顔を、見た事が無い。私の記憶に残るサステナ王子は、いつも不機嫌で、怒っていて、眉間に皺が寄っていた。
それが答えな気がする。
悪役令嬢は、彼に愛されていなかった。
「ティセ様、マリア様!順番が来ましたよ!」
「はーい!分かりました」
先生に呼ばれたので、私は大きな声で手を上げ、返事をした。
「役に立てないと思うけど……頑張ろうね!」
「は、はい…!」
私はマリアに声をかえ、呆けているサステナ王子を素通りして、先生のもとに向かった。
どうかこれで、彼が私の呪縛から解き放たれて、自由に生きれますようにーーーついでに、私に対するむき出しの敵意が無くなりますように!!!
それにしてもーーーこんなイベント、ゲームには無かったよね?悪役令嬢とヒロインが友達になっていたのも知らないし……あのゲーム、裏設定が多かったのかな?
ヒロインであるマリアの光魔法は、万能だ。私と違って、攻撃も回復も出来る優れもの。流石ヒロイン。
対して、私の魔法属性は悪役令嬢らしくーーー闇ーーーだけど、全く強く無い。
光と相反する闇も希少だと思われるかもしれないけど、実はそうじゃない。闇の魔力を持つ者は、普通にいる。ただそのどれもが、闇の力を使えず、持て余しているだけ。
どこかの攻略本の裏情報で得た話によると、闇は魔物の力だから、闇の魔力を持っていても、人間は上手く使えないらしい。
真面目に授業を受けた私も、ゲームの悪役令嬢が扱う魔法以外は習得出来ず、上達出来なかった。
「闇魔法」
使える闇魔法は、非戦闘魔法の、影の中に身を隠す魔法。
ただ、この魔法は見ての通り、隠れることしか出来ないので、私はただ戦闘中は、陰に隠れてやり過ごすしかない。隠密行動とかには向いてるけど、こういった訓練には全く向いてない!気付かれず背後に周っても、攻撃魔法使えないからね!しかも定員は自分だけ。
折角乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのにーーー雑魚感がヤバい。
私と戦っても訓練にならないから、二年生でたまにあった戦闘訓練でも、誰も私と対戦しようとしなかった。
公爵家の権力を振りかざさないと誰も近寄ってこないなんて、私はどんだけヤバいの……。
影の中に隠れながら、外の様子を見ると、マリアが一人で戦っているのが見えた。
……私は一人、安全な場所にいて、マリア一人に戦わせるなんてーーーまるでゲームの悪役令嬢そのもの!
「ティ、ティセちゃん…!戦闘、終わりました……勝ちましたよ」
上から私を呼ぶマリアの声が聞こえる。
ヒロインであるマリアは順調に成長しているのに、悪役令嬢の私ときたら……
駄目!無理ーーー!罪悪感が半端無い!次からは、マリアとのペアを断ろう!
私はそう決心して、影の中から外に出た。
***
マリアの光の力は、この学園生活の中で大幅な成長を遂げていて、同じくハイスペックな攻略対象キャラ以外は、太刀打ち出来ないまでに成長していた。
それなら、女子生徒達に囲まれた時も、自分一人で余裕で対処出来たんじゃないかとは思ったけど、そこはヒロイン。守られ属性が働いたのでは無いかと受け取った。
「何だか、今日はいつもより疲れました…」
授業が終わり、家に帰って来た後も、何故かお父様とお母様に、今日あった出来事を根掘り葉掘り聞き出された……さ、流石に、ウィルとキスしたことは話せませんでしたけど!
私にも、恥じらいがありますからね!
ネグリジェに着替え、ベッドに仰向けで寝る。
あれから、今後一切、マリアとはペアを組まないと言ったら、マリアは目に涙をため、泣き出してしまった。
慌てて弁解と理由を述べたけど、『私は……ティセちゃんの役に立てるなら、それでいいの…!』なんて、泣きながら健気で可愛いことを言われて、心臓が鷲掴みにされるところだった!
事情を知らない他生徒から見たら、私がマリアを利用して戦闘訓練を受けていると思われるでしょうけどーーーマリアに泣かれるよりはマシ!私の名誉なんて、マリアの涙の一万分の一の価値しかない!
結局、攻略対象キャラとのイベントも考慮して、一週間に一回、ペアを組む事で納得して貰えた。
うん……私、女の子に一人で戦わせて、自分は安全な影の中ぬくぬくと見学なんてーーー人間的に大丈夫かな?
413
お気に入りに追加
619
あなたにおすすめの小説
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?
荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」
そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。
「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」
「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」
「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」
「は?」
さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。
荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります!
第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。
表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる