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7話 初めてのお友達

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 こんな愛されヒロインの口説きに落ちない女、いる?!いないでしょ!
 それに、私が友達になったら、マリアさんを虐める人がいなくなるかもしれないし……!友達なら、マリアさんを堂々と守ってあげられるもんね。

「本当に……私のお友達になって下さるんですか?」
「はい!私でよければ」

 私はにっこり微笑むと、マリアさんの手を掴んだ。

「これから仲良くして下さいね、マリア!」

「…!はい……!はい!ありがとうございます…ティセ様…!」

 マリアは何故か目に涙を溜めて泣き出したから、私は慌ててハンカチを差し出した。
 やっぱり私と友達になるのが嫌なのかな?と焦っていたら、その逆で、私と友達になれたことが泣くほど嬉しかったと言われて、何だか照れてしまった。



 ***



 お昼休み、続ーーー私がマリアと一緒に仲良く手を繋いで教室に戻って来たのを見たウィルは、何とも言えない顔で、私を見た。

「ーーー光の聖女マリア様ですよね?どうされました?ティセお嬢様に何か弱みでも付け込まれましたか?」

「違います!マリアとはお友達になったんです!」

 勝手に決めてけないでよね!そりゃあ、道行く人達の視線からも、え?何でサステナ王子の元・婚約者と、その婚約破棄の原因が仲良く手を繋いでるの?なんて疑惑の目で見られましたけど、そんなんじゃ無いんです!

「あの……私からお願いして、ティセちゃん……に、友達になって貰ったんです」

 たどたどしいながらも、私を愛称で呼んでくれるマリア。
 そんな名前を愛称にするくらいで顔を真っ赤にするなんて、可愛い過ぎる!そりゃあ、サステナ王子もマリアにメロメロになりますよね!

「……さようでございますか」

「昼食はマリアと食べることにしたの。中庭に用意してくれる?」

「かしこまりました」

 学園には食堂もあるけど、私はもっぱら、家の料理人が作ったお弁当を食べている。だってうちのシェフの料理、本当に美味しいんだもん!

「いつも大目に持たせてもらっているから、マリアの分もありますよ」
「あ……私は、自分のお弁当があるので大丈夫です」
「凄い!毎日自分でお弁当を作っているんですか?!」
「は、はい…」

 そう言えばイベントで、ヒロインが攻略対象キャラにお弁当を作って持ってくるってあったなぁ。攻略対象の好きなお弁当を作ると、好感度が上がるんだよねー。

 天気も良い晴天。午前中はずっと座学で教室にいたから日に当たっていなし、こんな日は中庭でお弁当を食べるに限る。

「マリアのそれ、とっても美味しそう」

 私はマリアのお弁当の中に入っていた、タコさんのウィンナーに目を輝かせた。
 懐かしい…!こっちの世界にも、タコさんウィンナーあるんだ!うちのシェフはこういったものは作らないから……。

「あ…良かったら、お一つどうぞ」

「いいんですか?ありがとうございます!」

 マリアの手から直接、タコさんウィンナーを頬張る。

「美味しー!」
「ティセちゃんのお口にあって良かった…」

 なんて平和な世界……あのゲームのヒロインと一緒に仲良く食事が出来るなんて……まるで夢のよう。幸せ。

「ねぇティセちゃん、午後からの魔法の授業で、良かったらペアになってくれませんか?」

「魔法の授業ってーーー」

 《光の聖女の祝福》のゲームでは、他の座学の授業は早送りでカットされるが、魔法の授業は、攻略対象キャラとの愛を深めるためのものでもある。
 一緒に魔法の授業を受けることで好感度が上がっていくんだよね。
 今まではマリアも、色々な攻略対象キャラと一緒に授業を受けてたのに、何故、私?

「私でいいの?私、魔法得意じゃないし……今までみたいに、サステナ王子とか、王太子候補の皆様とした方がいいと思うけど……」

 魔法の授業は基本ペアを組まされるのだが、友達のいない私は、いつも先生とペアを組んでいる。なんて悲しい……。

「私……ティセちゃんがいいんです…」

 ズッキューンと、胸に恋の矢が突き刺さったような衝撃。ヒロインのおねだり、強烈だわ!

 いつも攻略対象キャラとばかりで、疲れちゃったのかな?攻略対象キャラは皆ハイスペックだし、たまには底辺の私と組んだ方が、気分的にも楽なのかも。

「うん、いいよ。ペアになりましょう!」

「…ありがとうティセちゃん…嬉しいです…!」

 まぁどうせ、一、二回組んだら、私じゃ相手にならなくて攻略対象の所に戻るだろうし、それまでならいいか。私も、初めて先生以外の人と組めるの嬉しいし!

 こうやって、お友達とお昼休みを過ごすのも、初めてーーー嬉しい!青春って感じがしますね!しかも、そのお相手があのヒロイン!夢だわー!

 私は喜びを噛み締めながら、マリアとお昼休みを過ごしたーーー。





 ***


 食事を終え、用があると一足先に教室に戻ったマリアを見送り、優雅にウィルのいれてくれた紅茶を飲む。
 午後からは特別な催しが無い限り、魔法授業のみでお終いなので、学園のお昼休みは比較的ゆっくり時間をもらえるのが嬉しいところ。

 美味しい…染み渡る…!悪役令嬢に転生して良かったことの一つは、この美味しいお茶が飲めることです!どの紅茶も美味しいけど、やっぱり私は、ウィルのいれてくれた紅茶が一番好き。
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