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6話 私がヒロインと?
しおりを挟む「あの……ティセ様……助けて頂き、ありがとうございます」
マリアは、私に深く頭を下げて、感謝の言葉を伝えた。その手はまだ震えていて、心から怖い思いをしていたと分かる。
私は、こんないたいけなヒロインを虐めつくす予定だったのね……。
自分が虐めていないのに湧く罪悪感。
「気にしないで下さい!マリアさんが無事で良かったです」
「……ティセ様……あの、本当に……サステナ王子との婚約破棄の件も……ごめんなさい……」
「え?」
「私、ティセ様に虐められていないこと、ちゃんとサステナ王子に伝えたんです。でもーーー信じてくれなくてーーー」
私がマリアさんと関わったのは、入学式を含んで、三回だけ。一回目は、入学早々、気に食わないからとマリアさんを突き飛ばし、その弾みで頭を打って記憶を戻した時。
二回目は、学園のダンスパーティで、マリアさんが、婚約者のいる方々に誘われ、ファーストダンスを踊っていたのを、注意した時。
三回目は、婚約者がいる男性と二人でデートをしていると耳にしたので、注意した時。
どれもこれも、ゲームのイベントなんですけどね!
一回目は記憶を思い出す前で、私が完全に悪いのですが、二回目以降は、もうマリアさんが見るに堪えないくらい可哀想で、好意で声をかけた。
「私……学園に少しも馴染めなくて……でも、サステナ王子や、他の方々も、凄く私に良くしてくれて……誘われたからと、つい、了承の返事をしてしまっていたんです……ダンスも、ファーストダンスは婚約者と踊る決まりがあるなんて知らなくて……」
マリアーーーヒロインは、生まれながらの貴族じゃない。
マリアは、魔力を秘めているのを現義父であるルドルフ男爵に見つけられ、養女として、ルドルフ男爵に迎え入れられた。だから、マリアが貴族の常識に疎くても、仕方が無かった。
サステナ王子だけなら私しか被害はいなし、別に構わなかったのですが、聖女を狙う不埒な男共があれよこれよとマリアに声をかけるから、優しいマリアは断り切れず、全部引き受けていたんですよね。
そしたら私以外にも婚約者に色目を使われたと、マリアを敵視する女子生徒が増えて増えてーーーあまりヒロインに関わりたくなかったのに、つい、注意をしてしまった。
そもそもが、婚約者がいるのにマリアに声をかける男が悪いんですけどーーー。
それを見たサステナ王子は、私がマリアを虐めたと勘違いをした。
「ティセ様は、私に貴族の常識を教えて下さっただけで、虐められていませんと何度もお伝えしたのにーーあんな事になってしまって……」
始業式の婚約破棄ですね。確かに、マリアさん心配になるくらい、顔色真っ青でしたもんね。
「本当に……申し訳ありませんでした」
「マリアさんが謝罪することじゃありませんよ。それに、婚約破棄は私も賛成だったので、結果オーライだったんです!」
「そ、そうなんですか?」
私の発言に、マリアさんは心底、安堵した表情を浮かべた。
きっとずっと気に病んでいたんでしょうね……何だか、申し訳ない事をしてしまった気分……。
「はい!だからマリアさんも、私の事は気にせず、ガンガン好きに生きて下さいね!」
どうぞどうぞサステナ王子でも他の攻略対象でも、好きに攻略しちゃって下さい!何なら、ハーレムエンドでも応援しちゃいます!
「好きに……」
「はい!聖女だなんて堅苦しい肩書を付けられて窮屈でしょうし、せめて学園生活は好きに過ごして下さい!」
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「変な事を言ってごめんなさい。ティセ様に助けて頂いて、嬉しかったです。今後、また虐められるかもしれませんが、ティセ様の手を煩わせないように、自分で対処出来るよう、頑張りますね」
「ーーーーいい!友達!なりましょう!」
「え?」
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