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2話 両親に婚約破棄のご報告
しおりを挟む「ティセお嬢様、読んだ本はちゃんと本棚に戻して下さい」
「あ、ごめんなさい」
「……学園に入学されてから、ティセお嬢様は本当に人が変わったみたいですね」
「そ、そうですか?あはは」
学園の入学式から、前世の記憶を思い出しましたからね!
記憶を思い出す前の私は、悪役令嬢にピッタリの傍若無人、我儘、独裁者、傲慢ーーー使用人なんて道具扱いで、失敗一つ許さず、気に入らないことがあればすぐにクビーー本当にごめんなさい!!!
それは勿論、執事であるウィルに対しても同様で、それはそれは、とてもじゃないけど、好きとは信じてもらえないような扱いをーーー
信じてもらえなくても仕方ない!!過去の私の馬鹿ーー!!
記憶が戻ってからの一年も、体裁を考えて、正式に婚約破棄されるまでは、好きと伝えれなかったし……!これから、いっぱいウィルに愛を伝えて、私の気持ちが本物だってことを分かってもらいます!
「ティセお嬢様、サステナ王子とは一緒に帰らなかったんですか?学園がお休みの間、お会い出来ずにいたんですから、今日は久々の逢瀬じゃないですか」
「?さっきサステナ王子に婚約破棄されたと伝えたじゃないですか。婚約破棄した相手と一緒に帰ったりしませんよ」
「……だから、冗談でしょう?」
「いえ。マジのマジです。ついさっき、全校生徒の前で婚約破棄されました」
ゲーム通りの展開です。違いがあるとすれば、私があっさりと引き下がったことくらいでしょうか。
本当は、『嫌よ!そんな女なんかにサステナ王子を渡さない!』とか言って、マリアを傷付けようとするんですよね。そこを攻略対象達がヒロインを守るって筋書きなのですが、あまりにも嬉し過ぎて、筋書き無視して帰宅してしまいました。
「は?!嘘でしょう?!ティセお嬢様にーーサステナ王子は、キュリアス公爵家のお嬢様に対して、そんな晒し者みたいに、婚約破棄したんですか?!」
「へ?え、はい」
晒し者ーー言われてみれば、注目の的でしたね。
ゲーム通りだと分かっていたので、特に何も気にせずにいましたけど……私、明日から皆さんにどんな目で見られるんだろう。
「主人が聞いたら何と仰られるか……」
「お父様?」
あー折角、私のためにサステナ王子との婚約を取り付けてくれたのに、申し訳ないことしちゃったかな……でも、婚約破棄を切り出したのはあっちですし、これで公爵家が責められる謂れはないはず!
絶対、お父様にも、婚約破棄を認めてもらいます!
***
「ーーーティセ、今、なんと言ったかな?」
キュリアス公爵邸ダイニングルームーーー。
広いテーブルには、私、お父様、お母様の三人。
キュリアス公爵家自慢の料理人が腕を振舞った夕食を食べている最中、私は今日の出来事を、普通の日常会話の一環として話した。
「サステナ王子に婚約破棄を告げられました」
美味しい、このお肉。こんなに毎日美味しいご飯を食べられるなんて、悪役令嬢に転生して良かったー!
「ああああああの馬鹿王子がーーー!ワシの可愛い娘になんてことしてくれてんじゃーー!!」
「お、お父様?落ち着いて下さい!」
目の前のお父様の怒りっぷりに、思わず持っていたフォークを床に落としてしまった。
「どうぞ、ティセお嬢様」
「あ、ありがとうウィル」
瞬時に、執事であるウィルが新しいフォークを渡してくれる。
出来る男ーーー恰好良いーーー!好き!
「待っていなさいティセ、すぐにでも王家に連絡して、娘に対して行った非道な行いを厳重に抗議し、あの舐め腐った王子の王位継承権を剥奪してやるーー!」
「待って下さいお父様!私、全然大丈夫なんです!」
「大丈夫なわけないだろう!ティセはずっと、サステナ王子が好きだったじゃないか!」
それは過去の私なんです!今はもう全く!眼中にないくらいどうでもいいんです!とは、流石に言えないーー!
「今は、好きじゃなくなったんです。それに、サステナ王子は聖女であるマリアさんと良い関係を築いているようですしーーー聖女に選ばれたら、サステナ王子は王太子になれるじゃありませんか。邪魔はしたくありません」
この国では、王位を受け継ぐのが王子とは限らない。例外があり、聖女が現れた時だけ、聖女に選ばれた者が、王位を継ぐ王太子となる。
勿論、ある程度の身分は必要で、攻略対象キャラは皆、文句なしのハイスペックな王太子候補ばかり。
「あんな腐った男が王太子などーーー!国王陛下が認めようが国が認めようが聖女が選ぼうか、知ったことか!」
娘、激ラブ過ぎる……。
ティセが過去、あんなに傍若無人で我儘でいたのは、この両親の甘やかしも要因の一つ。どれだけティセが我儘を言おうが、何でも叶えてあげて、使用人を勝手にクビにしようが、許して来た。
もとはと言えば、サステナ王子だって、私の我儘で望まぬ婚約を結ばれたんだから、被害者なんだよね……。
「お父様!お願いです…!私は本当に、サステナ王子のことを、今は好きじゃないんです。だから、このまま婚約破棄でも大丈夫なんです」
「いや、しかし、娘にこんな扱いをしてーーー!」
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