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23話 ソウカの魔法
しおりを挟む救助が終わり、犠牲者が奇跡的に出なかったとはいえ、コルンの被害は重大。フォルク様は復興作業を部下に命じ、私達はガランカサランに戻る馬車に乗り込んだ。本当は、私も残って復興作業を手伝いたかったけど、もし、またジェイド様が来たら、逆に迷惑をかけてしまうので、大人しく戻ることにした。
「ソウカのおかげで助かったよ。本当にありがとう」
「いえ、私は何もしていません。私はただ、セントラル侯爵家の薬を用途に合わせて使っていただけです。最後だけ……ヒナギクさんの時は調合しましたけど――」
無我夢中だった。
ヒナギクさんを助けたくて、必死に調合した。
「それなんだが、ソウカ、君は魔力を持っていると言ったよな?」
「はい、ですが、私に魔法は使えません」
メリエルラシア帝国の中の、魔力を持っていて魔法を使えない一割。いわゆる、魔力病を発症する恐れのある一割に該当する。
「……タポンは、薬草として、効力の弱い薬草だ」
「? 知っています」
薬師であるなら、誰もが知っている基本知識だ。
「最初から、ソウカに初めて会った時から、何かがおかしいとは思っていたんだ。ソウカが作った香草茶は、普通に作った香草茶よりも、効力が強かった」
そう言えば、そんなことを言ってらした気がする。
「でも、私は何も変わったことはしていませんよ?」
本当にただ普通に、いつも通りに香草茶を作ったに過ぎない。
「そうだ、だから、今日のことで確信した。ソウカ、君の魔力は、調合時に力を発する魔法だ」
――え?
「魔……法? 私が?」
「ヒナギクさんは、あれだけの重症を負っていながら、何事も無かったように完治した。タポンでは本来、それは不可能だ」
フォルクは、セントラル侯爵家に追加で作らせていた新しい薬が届くまでの間、何とかヒナギクに耐えてもらおうと考えていた。だが、ソウカの薬を飲んだヒナギクは、信じられないことに、完治した。
「薬師として調合を初めたのはいつ?」
「え……っと、お父様が亡くなる、少し前に」
その時にやっと薬師の資格を取って、薬を作り出したけど、お父様は間に合わなかった。
「でも、私はお義母様を救えませんでした。そんな立派な魔法を私が使えるとは思いませんが……」
「詳しくは私も分からないが、未知の病気は治せないんだろう。その病にあった薬の配合が必要になる」
「……」
私は、最後までお義母様を、魔力病を治す薬は作れなかった。
「ソウカが作った薬は、君の魔力が合わさって、威力が倍増した。ソウカ、君は作るものに加護を与える魔法――――加護持ちの薬師だ」
「加護……?」
加護の魔法は、伝説級の噂話として、聞いたことがある。
その力を持つ者が作る薬は、他の薬師が作る薬よりも格段と効力が上がり、時には、奇跡すら起こすという、薬師にとって夢のような魔法。
そんな加護持ちの薬師が……私?
ジェイド様は、お義母様にお金をかけることを嫌がり、薬を買うお金も、調合するための材料を揃えるお金も、渡してはくれなかった。
私がお義母様に作れる薬は、どれも、効力の弱い、安価の薬草で作ったものばかり。家政婦としてこき使われ、良い薬草を採りに行く時間もなく、良い薬草を買うお金も無かった。
私はそれでも、お義母様の苦痛を、病気を、治したくて、手に入る材料だけで、薬を作った。
それでも、私の作る薬は、お義母様に一定の効果があったと、思う。もしかしてそれは、私の力だったの?
私の加護の力が、薬の効果を上げた――
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