そちらが私を婚約破棄して国外追放したのですから、もう放っておいて下さいませ

光子

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11話 では今この瞬間から

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「ふふ、失礼致しました。ダイヤル公爵様はドレスファン国語とルンドリアン帝国語しか分かりませんでしたね。失念しておりました」
「馬鹿にしているのか!? 言葉が多く話せるくらいで調子に乗るなよ!」
「馬鹿にだなんてとんでもございません。言葉が多く話せるだけの私など、偉大なドレスファン国には必要ないものと思われます。ご安心下さい、何の役にも立たない恥知らずな私は二度とドレスファン国に戻りません。ですからどうぞ、回れ右して国にお帰り下さいませ」
「国外追放を取り消してやると言っているんだぞ!?」
「ですから、いらないと言っているんです」
「ふざけるな! お前に拒否権など無い! 子爵令嬢ごときが公爵に逆らうなど――」
「私はもうドレスファン国とは無関係ですので、その国の貴族制度を持ち出されても困ります」

 私が今まで大人しく従っていたのは、ドレスファン国の貴族として、ヤロン様の婚約者として振舞っていたからに過ぎません。それら全てを失った今、従う理由がどこにありますでしょうか?

「このっカナリアの分際でっ! いいか、お前を無理矢理連れ戻すことも出来るんだぞ!?」
「……そうですか」

 追い出したのはそちらにも関わらず、今更、偉そうに上から目線で戻れと命令され、断れば無理矢理連れ戻そうとされる。本当に最低な方々ですね。
 しかし、私も反省するべきところがあることは認めましょう。言い訳ですが、ドレスファン国で無能扱いされ過ぎた弊害でしょうか、自分の力を楽観的に考え過ぎておりました。ここでドレスファン国をあしらえたとしても、もっと大きな国が私の力を欲すれば抵抗出来ないかもしれません。そうなれば、私の大切な家族にも被害が及びます。それは私が最も望まないことでございます。

「レックナード様、私のことはまだ必要でしょうか?」
「勿論、いつでも歓迎するよ」

 隣にいるレックナード様に確認を取ると、すぐに頷いて下さいました。
 レックナード様の手の平で転がされたようで悔しいですが、これが、今の私に出来る最善の選択と考えます。

「では今この瞬間から、私はクレイシス公爵令息であられるレックナード様の言語能力者でございます。私を連れ戻そうとされるのでしたら、どうぞ、レックナード様に許可をお取り下さい」

 レックナード様が私を言語能力者として利用しようとされるのならば、私も家族の身の安全と平穏のためにレックナード様を利用致しましょう。どうぞ、私をお守り下さいませ。

「は? クレイシス公爵令息!? その男が――いえ、そのお方が!?」
「いかにも。ご挨拶が遅れて失礼しました。入った瞬間に待ったなしで畳みかけるように話されるので、タイミングを逃してしまいました」
「い、いえ、こちらこそ失礼致しました!」

 あらあら、私の時とは打って変わって低姿勢ですこと。権力で威張る奴は権力に弱いと言いますが、ダイヤル公爵様はまさにその典型的な例ですねぇ。
 同じ公爵位であっても、ドレスファン国とルンドリアン帝国では国の大きさが違います。どうあっても、圧倒的大国であるルンドリアン帝国にドレスファン国が勝てるはずがありません。

「それで? 俺のカナリアに何か御用でしょうか?」
「い、いえ、その」
「カナリアはドレスファン国の王太子によって国外追放されたと聞いています。そんな彼女を無理矢理連れ戻す権利が貴方におありだと? 何様のつもりで?」
「無理矢理だなんて、そんなつもりは……」

 さっきまでの威勢の良さはどこへやら、完全に弱者に転落されましたね。それもそのはず、レックナード様はクレイシス公爵家の次期当主でございます。レックナード様を喧嘩を売れば、クレイシス公爵家を敵に回すということでございます。それ以前に、レックナード様は中々に良い性格をされておられるお方です。自分の命が狙われていることを利用して、暗殺者を捕らえるようなお方なのです。敵に回すのは得策では無いと思いますが、さて、ダイヤル公爵様はどうされるのでしょう? さっさと諦めて尻尾を巻いてお帰りになって頂ければ幸いなのですけど。

「レ、レックナード様のような素晴らしいお方に、カナリアは相応しくありません!」

 まぁ、まだ諦められませんか? よっぽど必死なのですね。

「俺に相応しくないとは?」

「カナリアは我が国にいた時もどうしようもない奴で、それを、王家の役に立つことで価値を与えてやっていたのです! そんな下賤な輩をレックナード様に押し付けるわけには参りません! 我が国が責任を持ってカナリアを教育しますので、どうか、お返し下さい!」

 国のために寝る間も惜しんで働いていた私に、そんなことを仰るんですね。
 どうしようもない無価値な存在ならば、私を取り戻そうとするのはお止め下さい。貴方達に教育されることなど、一ミクロンだって存在しないのですから。


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