4 / 20
4話 内緒話
しおりを挟む◇◇◇
さてさて、ドレスファン国を出て早二週間が経過しました。思ってたより大和が居心地が良くて長居してしまいましたねぇ。
「もうちょっとゆっくりしていけばいいのによぉ」
「そう言って頂けて光栄です、おじ様」
「そのおじ様ってのは慣れねぇけど……まぁまた大和に来ることがあったら寄ってくれや」
「必ず立ち寄らせて頂きます、お約束致しますわ」
大和でお世話になったおじ様に別れを告げ、次の国に向けて出発する。
あれから何度も家族会議を行いましたが、あっちも行ってみたい、こっちも行ってみたい、あそこも、向こうもと、次から次へと出る候補地に、どこに向かうかの結論は出ませんでした。とは言え、このままこの地に留まるのもドレスファン国が近すぎて落ち着かないとの意見でまとまりましたので、あてもなく出発することに致しました。
とは言え、いずれはどこかの国に落ち着きたい気持ちはございます。多くの国を巡った先で、良い国に出会えることが出来れば、幸いでございます。
そんな風に考え事をしていると、大和の馬車駅に到着致しました。国と国を繋ぐ乗り合い馬車の運行は、旅をする者にとっては大変ありがたいものですねぇ。
「これはどこ行きの馬車でしょうか?」
「《ルンドリアン帝国》行きだよ! 嬢ちゃん達、乗ってくかい?」
「ルンドリアン帝国ですか……」
ルンドリアン帝国はこの辺りで一番大きな国であり、魔法が発達した国でございます。その特性を生かした魔道具などの輸出も盛んでして、ドレスファン国でも何度か取引をさせて頂きました。最も、今後の取引については、国外追放された私の知るところではございません。ですが、ルンドリアン帝国の言葉はこの辺りでは主流の言語でございます。王族、貴族であるならば公用語とも言われるほど、使えて当然の言語なのです。
私がいなくなっても、自分が優秀だと豪語されるヤロン様なら問題無く外交を続けられることでしょう。
「姉様、ルンドリアン帝国って国境通るのに許可とかいらないんだっけ?」
「軽い検査などはされるかもしれませんが、入るだけならば問題は無かったと思いますよぉ。商売に訪れる方も沢山いらっしゃるでしょうしねぇ。その土地に住むとなれば、皇室の許可が必要だと思いますけど」
「そんなことも知らないなんて、勉強不足ねぇウェイド」
「まぁまぁ、これから学んでいけばいいさ!」
お母様に怒られてしょんぼりするウェイドも可愛いですねぇ。お父様の言う通り、気にする必要はありません。これから学んでいけばいいのです。これからは、私が直接教えることが出来るのですから。
「行く場所も決まっておりませんし、一度ルンドリアン帝国に向かってもよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ! 僕行ってみたい!」
「いいわねぇ、大きな国だし、美味しいご飯がいっぱいあるわよね」
「広大で歴史ある国だし、行くのが楽しみだな!」
皆様、反対意見はないようですね。では、次なる目的地はルンドリアン帝国と致しましょう。
ドレスファン国のような小さな国ではなく、圧倒的大国でございます。外交で何度か書簡でやり取りを行ったことはありますが、足を踏み入れるのは初めてでございます。さて、どのような国でしょうか、行くのが楽しみですね。
ガタンゴトン、車輪の音が響く中、馬車は進む。
ミンティア子爵――貴族であった頃は馬車を保有しておりましたが、子爵位を失った今、馬車は手放しました。このような公共の馬車は人が多く乗ることを想定されているからか、家の馬車よりも広く、私達以外にも数人の乗車客がおりました
ルンドリアン帝国へ向かう馬車ですので、国へお帰りの最中でしょうか、ルンドリアン帝国の言葉で『早く帰りたい』とお話しする方がいたり、観光で赴くのか、『最初はどこに行く?』なんて楽しそうに大和の言葉でお話をする方もいらっしゃいました。中には、そのどちらでもない言葉を話されている方もいて、様々な国の方が向かう大きな国なのだと再認識致しました。
中には、異国で自分達の言葉は分からないだろうと内緒話をする方もいるのですが、私には全て言葉が分かってしまいますので、大変申し訳なく思っております。
そんな時はいつも聞こえないフリをするのですが、今日ばかりは、聞こえないフリが出来ませんでした。
「……お父様、お母様、ウェイドを連れて次の駅で降りて下さい」
「次? 次はまだルンドリアン帝国じゃないけど」
「お願いします」
「何かあったのかい? お父さんも残ろうか?」
「いいえ、私一人で大丈夫です」
心配そうに私を見つめるお父様にお母様。
隠し事をして申し訳ありませんが、素直に答えることは出来ませんでした。私は、家族を愛しているのです。家族を危険だと思う場所に連れて行くことは、私には出来ないのです。
ああ、どうしてこんな誰が聞いているかも分からない場所で、あんな内緒話をするのでしょうか。
『――《ルンドリアン帝国に着いたら、《レックナード》を殺す》』
暗殺者の隠語か何か知りませんが、言葉である以上、私には意味が分かってしまうのです。そして聞いてしまった以上、知らんぷりをすることは私には出来ないのですよ。
512
あなたにおすすめの小説
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!
つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。
他サイトにも公開中。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。
佐藤 美奈
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。
そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。
しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。
不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。
「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」
リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。
幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。
平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる