そちらが私を婚約破棄して国外追放したのですから、もう放っておいて下さいませ

光子

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4話 内緒話

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 ◇◇◇

 さてさて、ドレスファン国を出て早二週間が経過しました。思ってたより大和が居心地が良くて長居してしまいましたねぇ。

「もうちょっとゆっくりしていけばいいのによぉ」
「そう言って頂けて光栄です、おじ様」
「そのおじ様ってのは慣れねぇけど……まぁまた大和に来ることがあったら寄ってくれや」
「必ず立ち寄らせて頂きます、お約束致しますわ」

 大和でお世話になったおじ様に別れを告げ、次の国に向けて出発する。
 あれから何度も家族会議を行いましたが、あっちも行ってみたい、こっちも行ってみたい、あそこも、向こうもと、次から次へと出る候補地に、どこに向かうかの結論は出ませんでした。とは言え、このままこの地に留まるのもドレスファン国が近すぎて落ち着かないとの意見でまとまりましたので、あてもなく出発することに致しました。
 とは言え、いずれはどこかの国に落ち着きたい気持ちはございます。多くの国を巡った先で、良い国に出会えることが出来れば、幸いでございます。

 そんな風に考え事をしていると、大和の馬車駅に到着致しました。国と国を繋ぐ乗り合い馬車の運行は、旅をする者にとっては大変ありがたいものですねぇ。

「これはどこ行きの馬車でしょうか?」
「《ルンドリアン帝国》行きだよ! 嬢ちゃん達、乗ってくかい?」
「ルンドリアン帝国ですか……」

 ルンドリアン帝国はこの辺りで一番大きな国であり、魔法が発達した国でございます。その特性を生かした魔道具などの輸出も盛んでして、ドレスファン国でも何度か取引をさせて頂きました。最も、今後の取引については、国外追放された私の知るところではございません。ですが、ルンドリアン帝国の言葉はこの辺りでは主流の言語でございます。王族、貴族であるならば公用語とも言われるほど、使えて当然の言語なのです。
 私がいなくなっても、自分が優秀だと豪語されるヤロン様なら問題無く外交を続けられることでしょう。

「姉様、ルンドリアン帝国って国境通るのに許可とかいらないんだっけ?」
「軽い検査などはされるかもしれませんが、入るだけならば問題は無かったと思いますよぉ。商売に訪れる方も沢山いらっしゃるでしょうしねぇ。その土地に住むとなれば、皇室の許可が必要だと思いますけど」
「そんなことも知らないなんて、勉強不足ねぇウェイド」
「まぁまぁ、これから学んでいけばいいさ!」

 お母様に怒られてしょんぼりするウェイドも可愛いですねぇ。お父様の言う通り、気にする必要はありません。これから学んでいけばいいのです。これからは、私が直接教えることが出来るのですから。

「行く場所も決まっておりませんし、一度ルンドリアン帝国に向かってもよろしいでしょうか?」

「うん、いいよ! 僕行ってみたい!」
「いいわねぇ、大きな国だし、美味しいご飯がいっぱいあるわよね」
「広大で歴史ある国だし、行くのが楽しみだな!」

 皆様、反対意見はないようですね。では、次なる目的地はルンドリアン帝国と致しましょう。
 ドレスファン国のような小さな国ではなく、圧倒的大国でございます。外交で何度か書簡でやり取りを行ったことはありますが、足を踏み入れるのは初めてでございます。さて、どのような国でしょうか、行くのが楽しみですね。

 ガタンゴトン、車輪の音が響く中、馬車は進む。
 ミンティア子爵――貴族であった頃は馬車を保有しておりましたが、子爵位を失った今、馬車は手放しました。このような公共の馬車は人が多く乗ることを想定されているからか、家の馬車よりも広く、私達以外にも数人の乗車客がおりました
 ルンドリアン帝国へ向かう馬車ですので、国へお帰りの最中でしょうか、ルンドリアン帝国の言葉で『早く帰りたい』とお話しする方がいたり、観光で赴くのか、『最初はどこに行く?』なんて楽しそうに大和の言葉でお話をする方もいらっしゃいました。中には、そのどちらでもない言葉を話されている方もいて、様々な国の方が向かう大きな国なのだと再認識致しました。
 中には、異国で自分達の言葉は分からないだろうと内緒話をする方もいるのですが、私には全て言葉が分かってしまいますので、大変申し訳なく思っております。

 そんな時はいつも聞こえないフリをするのですが、今日ばかりは、聞こえないフリが出来ませんでした。

「……お父様、お母様、ウェイドを連れて次の駅で降りて下さい」
「次? 次はまだルンドリアン帝国じゃないけど」
「お願いします」
「何かあったのかい? お父さんも残ろうか?」
「いいえ、私一人で大丈夫です」

 心配そうに私を見つめるお父様にお母様。
 隠し事をして申し訳ありませんが、素直に答えることは出来ませんでした。私は、家族を愛しているのです。家族を危険だと思う場所に連れて行くことは、私には出来ないのです。
 ああ、どうしてこんな誰が聞いているかも分からない場所で、あんな内緒話をするのでしょうか。

『――《ルンドリアン帝国に着いたら、《レックナード》を殺す》』

 暗殺者の隠語か何か知りませんが、言葉である以上、私には意味が分かってしまうのです。そして聞いてしまった以上、知らんぷりをすることは私には出来ないのですよ。


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